米国にはブラックフライデーという曜日がある。11月第4週の木曜日の翌日を指し、クリスマス商戦がスタートする日だ。もともとは買い物客で店がごった返し、小売業が儲かって「黒字」になることから、そう呼ばれるようになったと言われている。
クリスマスホリデーは冬物衣料やプレゼント、パーティ用品など、一年でいちばん消費が増大するから、この時期に売り上げも利益も一気に伸ばそうと、小売店はあの手この手で集客しようとするのである。
米国は宗教国家である。全国的にはプロテスタントが約6割で一番多く、次いでカトリックが25%、ユダヤ教は2%にも満たない。ところが、筆者が仕事をしていたニューヨークには場所柄、ユダヤ教が8%以上もいる。
だから、クリスマスはキリスト降誕を祝う祭日というよりも、クリスマスホリデーという商戦月間の要素の方が強い。ブラックフライデー以降、小売業は客寄せに注力し、まさに街はコマーシャリズム一色に染まるのだ。
日本の小売業もイベントを販促に結びつけたがる。バレンタインやホワイトデーはもちろん、最近ではハロウィーンで仮装の衣装やグッズが飛ぶように売れている。11月の末からはクリスマス商戦に入るが、ピークは民間のボーナスが出る12月10日くらいだ。
ただ、アベノミクスは個人消費を喚起するまでとは行かず、庶民の財布の中は依然として乏しい。もうバブル景気のような消費は望めそうもない。
だったら、いっそのこと、発想を変えて小売業側がお客に還元してはどうだろうか。1年のご愛顧に感謝してと、セール向けの美辞麗句を並べるのではなく、いろんな「ギフト」を用意して、集客やプロモーションにつなげるのである。
ニューヨークの場合、クリスマスホリデーのショップは単なるデコレーションやPOPで飾るだけではない。レジ周りにはクリスマス専用の洒落たビジネスやグリーティング向けのカードが置かれている。まさにテイクフリーで誰でもタダで持って帰れる。
商品もクリスマス専用にラッピングやパッケージ化される。また、クリスマス向けの商品が企画され、パッケージやラッピングもオリジナル。店によってはスタッフによる手作りのパッケージなどアイデアに富んでいるいるところもある。これもギフト用だ。
極めつけは、顧客や来店客に渡す店からの「クリスマスギフト」。これは先述したようにカード1枚から、ノベルティ的なもの、オリジナル商品と様々ある。1年のご愛顧に感謝して贈られるものである。その感動たるやいなや。
筆者が経験したのは、とあるライフスタイルショップで、クリスマスホリデー期間中に「鍋」を買った。その時、もらったのが透明のペッパーミルだ。今でこそ、日本でも見るようになったが、当時はニューヨークでも珍しく小洒落て、えらく感動した。
また、仕事で世話になった友人へのプレゼントとして、ブランドのジェルソープを購入した。イブに間に合うように郵送するため、12月早々に買ったのだが、ギフトとして「スパイス」のセットがついてきた。オレガノやバジルをパッケージングしたものだ。
思わず、友人のクリスマスプレゼントには、こちらの方が良いかもと思ったほどだ。とにかく、金銭的な次元というより、ショップのセンスが光る仕掛けということである。
ニューヨークのショップがここまでやるのは、とにかくクリスマスホリデーを盛り上げ、集客や販促につなげていくこと。そして、毎日をブラックフライデー、つまり「ブラックエブリデー」にしたいからである。
こうした企画を日本でも導入しようというと、やれコストがどうの、手間がどうのと言われる。しかし、消費を喚起しなければ、売上げは上がらない。イベントもセールもデコレーションも共同懸賞も、今やそのほとんどがマンネリ化は否めない。
とすれば、小売業側からのギフト戦略は、ありかもしれない。各店が個性を競い、アイデアとセンスを凝らし、集客と販促に一丸になって取り組む。
商店街やファッションビル、ショッピングセンターはそれをインストアキャンペーンとして、表彰の対象にしてもいいのではないか。
アイデアがない、人手がないなら、地元の学生や若者の手を借りるなど、アウトソーシングするなど手はいくらでもある。とにかく、できるだけコストをかけずに知恵を使って、クリスマスホリデーを盛り上げることが必要なのだ。
筆者がマンションアパレルにいる頃、一度、クリスマスギフトを取引先の女性スタッフ向けに企画したことがある。当時、バイヤーのほとんどは男性だった。それゆえ、小洒落たプレゼントなどに感動するとは、思えなかったからである。
だから、日頃から当社の商品を売ってくれている女性スタッフに感謝を込めて、何か贈ろうと企画会議にかけたのだ。全国に数十社の取引先があったので、それほどコストはかけられない。
そこで、オリジナルデザインの封筒を作り、メッセージに添えてシートソープ(紙石鹸)を同封した。香りが良いフレグランスが効いた代物だったから、開封すると女性受けするのは間違いなかった。この企画は、わかる人には実に評判が良かった。
12月になると、セールがぼちぼち始まる。在庫を抱えているショップは、資金繰りがあるため、売らんかなに走らざるを得ない。いい加減、発想を変えて、店側から年に一度の感謝の証しを示すことが必要ではないだろうか。
店が売る、お客に買ってもらう。ではなくて、まず店が買って、お客に贈る。その部分の消費を刺激し、集客や販促につなげていくのだ。もっとも、そこでは大々的に告知するというより、さりげなさをもってお客の感動を倍増させるような裏技も必要だろう。
クリスマスホリデーは、商品を売るだけでなく、感動を売ることも必要なのである。
クリスマスホリデーは冬物衣料やプレゼント、パーティ用品など、一年でいちばん消費が増大するから、この時期に売り上げも利益も一気に伸ばそうと、小売店はあの手この手で集客しようとするのである。
米国は宗教国家である。全国的にはプロテスタントが約6割で一番多く、次いでカトリックが25%、ユダヤ教は2%にも満たない。ところが、筆者が仕事をしていたニューヨークには場所柄、ユダヤ教が8%以上もいる。
だから、クリスマスはキリスト降誕を祝う祭日というよりも、クリスマスホリデーという商戦月間の要素の方が強い。ブラックフライデー以降、小売業は客寄せに注力し、まさに街はコマーシャリズム一色に染まるのだ。
日本の小売業もイベントを販促に結びつけたがる。バレンタインやホワイトデーはもちろん、最近ではハロウィーンで仮装の衣装やグッズが飛ぶように売れている。11月の末からはクリスマス商戦に入るが、ピークは民間のボーナスが出る12月10日くらいだ。
ただ、アベノミクスは個人消費を喚起するまでとは行かず、庶民の財布の中は依然として乏しい。もうバブル景気のような消費は望めそうもない。
だったら、いっそのこと、発想を変えて小売業側がお客に還元してはどうだろうか。1年のご愛顧に感謝してと、セール向けの美辞麗句を並べるのではなく、いろんな「ギフト」を用意して、集客やプロモーションにつなげるのである。
ニューヨークの場合、クリスマスホリデーのショップは単なるデコレーションやPOPで飾るだけではない。レジ周りにはクリスマス専用の洒落たビジネスやグリーティング向けのカードが置かれている。まさにテイクフリーで誰でもタダで持って帰れる。
商品もクリスマス専用にラッピングやパッケージ化される。また、クリスマス向けの商品が企画され、パッケージやラッピングもオリジナル。店によってはスタッフによる手作りのパッケージなどアイデアに富んでいるいるところもある。これもギフト用だ。
極めつけは、顧客や来店客に渡す店からの「クリスマスギフト」。これは先述したようにカード1枚から、ノベルティ的なもの、オリジナル商品と様々ある。1年のご愛顧に感謝して贈られるものである。その感動たるやいなや。
筆者が経験したのは、とあるライフスタイルショップで、クリスマスホリデー期間中に「鍋」を買った。その時、もらったのが透明のペッパーミルだ。今でこそ、日本でも見るようになったが、当時はニューヨークでも珍しく小洒落て、えらく感動した。
また、仕事で世話になった友人へのプレゼントとして、ブランドのジェルソープを購入した。イブに間に合うように郵送するため、12月早々に買ったのだが、ギフトとして「スパイス」のセットがついてきた。オレガノやバジルをパッケージングしたものだ。
思わず、友人のクリスマスプレゼントには、こちらの方が良いかもと思ったほどだ。とにかく、金銭的な次元というより、ショップのセンスが光る仕掛けということである。
ニューヨークのショップがここまでやるのは、とにかくクリスマスホリデーを盛り上げ、集客や販促につなげていくこと。そして、毎日をブラックフライデー、つまり「ブラックエブリデー」にしたいからである。
こうした企画を日本でも導入しようというと、やれコストがどうの、手間がどうのと言われる。しかし、消費を喚起しなければ、売上げは上がらない。イベントもセールもデコレーションも共同懸賞も、今やそのほとんどがマンネリ化は否めない。
とすれば、小売業側からのギフト戦略は、ありかもしれない。各店が個性を競い、アイデアとセンスを凝らし、集客と販促に一丸になって取り組む。
商店街やファッションビル、ショッピングセンターはそれをインストアキャンペーンとして、表彰の対象にしてもいいのではないか。
アイデアがない、人手がないなら、地元の学生や若者の手を借りるなど、アウトソーシングするなど手はいくらでもある。とにかく、できるだけコストをかけずに知恵を使って、クリスマスホリデーを盛り上げることが必要なのだ。
筆者がマンションアパレルにいる頃、一度、クリスマスギフトを取引先の女性スタッフ向けに企画したことがある。当時、バイヤーのほとんどは男性だった。それゆえ、小洒落たプレゼントなどに感動するとは、思えなかったからである。
だから、日頃から当社の商品を売ってくれている女性スタッフに感謝を込めて、何か贈ろうと企画会議にかけたのだ。全国に数十社の取引先があったので、それほどコストはかけられない。
そこで、オリジナルデザインの封筒を作り、メッセージに添えてシートソープ(紙石鹸)を同封した。香りが良いフレグランスが効いた代物だったから、開封すると女性受けするのは間違いなかった。この企画は、わかる人には実に評判が良かった。
12月になると、セールがぼちぼち始まる。在庫を抱えているショップは、資金繰りがあるため、売らんかなに走らざるを得ない。いい加減、発想を変えて、店側から年に一度の感謝の証しを示すことが必要ではないだろうか。
店が売る、お客に買ってもらう。ではなくて、まず店が買って、お客に贈る。その部分の消費を刺激し、集客や販促につなげていくのだ。もっとも、そこでは大々的に告知するというより、さりげなさをもってお客の感動を倍増させるような裏技も必要だろう。
クリスマスホリデーは、商品を売るだけでなく、感動を売ることも必要なのである。