SCのパルコがこの6月から、「チーム力で競う接客ロールプレイングコンテスト」を開催する。池袋店を皮切りに全国10店舗で来年の2月まで継続されるようだ。
特徴はコンテスト開催に至らないショップのスタッフや、ファッション専門学校の学生が観覧できること。出場の条件は店長以下のスタッフに限定。店長は指導役となってスタッフの接客トレーニングを行うことで、マネジメント能力も磨く目的もあるという。
パルコ側が外部の専門学校にまで観覧を許したのは、「ファッションビジネス界で働くことを目指す学生を対象に、販売志望には接客の楽しさとパルコへの興味関心を、デザイナー志望には、将来自分が手がけた商品を販売してくれるスタッフの努力を感じてもらいたい」ためと言っているが、果たして効果はどうなのだろうか。
少なくとも、テナントの販売スタッフにとっては、観覧回数が増えるほど学習効果が働いて、自分のスキルアップに繋がるかもしれない。ただ、それは店舗間が近い東京近郊なら可能だが、広島店や福岡店のスタッフが簡単に上京できるとも思えないから、限定的だ。
専門学校との関係では、「学生に接客とは何ぞや。販売テクニックやセールストークが学べる実践勉強の場にする」という大義はあると思われる。
一方、専門学校側には無知な学生に現実をわからせたい、何とか就職するきっかけと作らせたいという思惑も垣間見える。
まあ裏読みすれば、パルコやテナントがここまで踏み切った背景には、販売力の低下があるだろう。また、販売を取り巻く環境の変化や人材不足が頭をもたげていることもあると思われる。
つまり、ファッション業界における構造問題が大きなネックになっているのだ。逆に考えると、単なるロープレという話題づくり、コンテストというインセンティブ・キャンペーン、専門学校の課外授業などの次元では、問題は解決しないということである。
ロープレコンテストは、(社)日本ショッピングセンター協会が主催するものが有名だ。今年も1月18日、パシフィコ横浜にて「第18回SC接客ロールプレイングコンテスト全国大会」が開催された。しかし、パルコからは物販部門、飲食サービス部門とも出場していない。
昨年の大会には、静岡店から靴のダイアナのスタッフが出場したが、1995年の第1回大会以降、パルコは1度も大賞者を出していない。ルミネやイオン、三井不動産からは出ているところを見ると、やはりテナント教育の課題が指摘されて当然である。
接客・販売力の強化=パルコはそぐわない。
言い換えれば、都市部の一等地に店舗を構え、若者向けの人気ブランドをリーシングし、集客イベントと絡めれば売上げがあがる。パルコはそんなビジネスモデルの域を脱しきれていないということだ。
しかし、今はブランドを買うなら、ネット通販があるし、イベントは集客目的でないほうが面白い。デベロッパーとしてお客を来館させるには、サイレントマジョリティの声を拾い、それをテナントにフィードバックして、店頭の品揃えや接客に生かさなければならない。
そうした基本というべきものが、できていないのかもしれない。
テナント側を見ると、さらに深刻だ。一部の有名ブランドを除けば、「販売スタッフ」は募集してもほとんど集まらなくなっている。10時から20時、土日が休みでないというレイバーシフトを考えれば、派遣社員で手当てでいるわけでもない。
もはや、今の若者が旬のブランドを着て、売場に立ち接客することと、月別店予算達成や個人ノルマをクリアすることを両天秤にかけると、「販売の仕事をしたい」なんて考えるのは、ごく少数ではないのか。それが応募の少なさに表れている。
そして、専門学校の立場である。かつてのようにデザイナーやパタンナーの育成だけでは経営が発ち行かなくなっている。しかし、「スタイリスト学科」なる名前で学生を集めたはいいが、正式な就職先になると「販売スタッフ」くらいしかない。
まして、デザイナー志望の学生が自分がデザインした服のセールスまで考えるかと言えば、疑問だ。DC全盛時代ならともかく、今のパルコにデザイナーが作るような服を扱うショップがそれほどあるとは思えないからである。
販売の仕事をしたいなんて若者が少なくなっている現状で、販売の現場を見せたくらいで販売職を目指そうという学生が増えるとも思えない。むしろ本当に販売が好きなら、高校を卒業してそのまま入るだろうからである。
ロールプレイングは教育の一環であり、コンテストはインセンティブが目的だ。ただ、パルコには、どうしてもI&S時代からのクリエリティブ戦略に頼るDNAを感じてしまう。I&Sが外資系広告代理店の傘下に収まった今でも、そこがいろいろと仕切っているのは事実である。
であるがゆえに、今回のロープレコンテストも「話題性」や「イベント」先行で、教育・インセンティブの視点がきわめて見えにくいのである。
何より身内で行い、切磋琢磨できるかわからないコンテストで、どれほどテナント教育が進み、スタッフの接客・販売の力がブラッシュアップされるか。全く未知数と言わざるを得ない。
特徴はコンテスト開催に至らないショップのスタッフや、ファッション専門学校の学生が観覧できること。出場の条件は店長以下のスタッフに限定。店長は指導役となってスタッフの接客トレーニングを行うことで、マネジメント能力も磨く目的もあるという。
パルコ側が外部の専門学校にまで観覧を許したのは、「ファッションビジネス界で働くことを目指す学生を対象に、販売志望には接客の楽しさとパルコへの興味関心を、デザイナー志望には、将来自分が手がけた商品を販売してくれるスタッフの努力を感じてもらいたい」ためと言っているが、果たして効果はどうなのだろうか。
少なくとも、テナントの販売スタッフにとっては、観覧回数が増えるほど学習効果が働いて、自分のスキルアップに繋がるかもしれない。ただ、それは店舗間が近い東京近郊なら可能だが、広島店や福岡店のスタッフが簡単に上京できるとも思えないから、限定的だ。
専門学校との関係では、「学生に接客とは何ぞや。販売テクニックやセールストークが学べる実践勉強の場にする」という大義はあると思われる。
一方、専門学校側には無知な学生に現実をわからせたい、何とか就職するきっかけと作らせたいという思惑も垣間見える。
まあ裏読みすれば、パルコやテナントがここまで踏み切った背景には、販売力の低下があるだろう。また、販売を取り巻く環境の変化や人材不足が頭をもたげていることもあると思われる。
つまり、ファッション業界における構造問題が大きなネックになっているのだ。逆に考えると、単なるロープレという話題づくり、コンテストというインセンティブ・キャンペーン、専門学校の課外授業などの次元では、問題は解決しないということである。
ロープレコンテストは、(社)日本ショッピングセンター協会が主催するものが有名だ。今年も1月18日、パシフィコ横浜にて「第18回SC接客ロールプレイングコンテスト全国大会」が開催された。しかし、パルコからは物販部門、飲食サービス部門とも出場していない。
昨年の大会には、静岡店から靴のダイアナのスタッフが出場したが、1995年の第1回大会以降、パルコは1度も大賞者を出していない。ルミネやイオン、三井不動産からは出ているところを見ると、やはりテナント教育の課題が指摘されて当然である。
接客・販売力の強化=パルコはそぐわない。
言い換えれば、都市部の一等地に店舗を構え、若者向けの人気ブランドをリーシングし、集客イベントと絡めれば売上げがあがる。パルコはそんなビジネスモデルの域を脱しきれていないということだ。
しかし、今はブランドを買うなら、ネット通販があるし、イベントは集客目的でないほうが面白い。デベロッパーとしてお客を来館させるには、サイレントマジョリティの声を拾い、それをテナントにフィードバックして、店頭の品揃えや接客に生かさなければならない。
そうした基本というべきものが、できていないのかもしれない。
テナント側を見ると、さらに深刻だ。一部の有名ブランドを除けば、「販売スタッフ」は募集してもほとんど集まらなくなっている。10時から20時、土日が休みでないというレイバーシフトを考えれば、派遣社員で手当てでいるわけでもない。
もはや、今の若者が旬のブランドを着て、売場に立ち接客することと、月別店予算達成や個人ノルマをクリアすることを両天秤にかけると、「販売の仕事をしたい」なんて考えるのは、ごく少数ではないのか。それが応募の少なさに表れている。
そして、専門学校の立場である。かつてのようにデザイナーやパタンナーの育成だけでは経営が発ち行かなくなっている。しかし、「スタイリスト学科」なる名前で学生を集めたはいいが、正式な就職先になると「販売スタッフ」くらいしかない。
まして、デザイナー志望の学生が自分がデザインした服のセールスまで考えるかと言えば、疑問だ。DC全盛時代ならともかく、今のパルコにデザイナーが作るような服を扱うショップがそれほどあるとは思えないからである。
販売の仕事をしたいなんて若者が少なくなっている現状で、販売の現場を見せたくらいで販売職を目指そうという学生が増えるとも思えない。むしろ本当に販売が好きなら、高校を卒業してそのまま入るだろうからである。
ロールプレイングは教育の一環であり、コンテストはインセンティブが目的だ。ただ、パルコには、どうしてもI&S時代からのクリエリティブ戦略に頼るDNAを感じてしまう。I&Sが外資系広告代理店の傘下に収まった今でも、そこがいろいろと仕切っているのは事実である。
であるがゆえに、今回のロープレコンテストも「話題性」や「イベント」先行で、教育・インセンティブの視点がきわめて見えにくいのである。
何より身内で行い、切磋琢磨できるかわからないコンテストで、どれほどテナント教育が進み、スタッフの接客・販売の力がブラッシュアップされるか。全く未知数と言わざるを得ない。