HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

業態改造よりも商品の質的向上が先では。

2012-06-09 09:12:09 | Weblog
 ポイントが2015年完結の中期計画で、既存業態を全面改造することを打ち出した。そこでは2010年秋から進める企画生産機能の強化と、SCMの一貫性をもたせるための専門スタッフの増強を大きな柱にするという。
 同社は専門店チェーンからSPAへシフトしていく中で、 ODM業者(企画開発能力を持つアパレル生産業者)を活用し始めた。外部の生産業者がデザイナーやパタンナー、生産管理者を抱え、トレンドファッションを企画提案してくれるから、ポイント側のバイヤーが売れ筋を外さなければ、クイックで商品調達が可能になるというメリットがある。
 この手法では商品の開発期間が短く企画の頻度も高くなるから、市場対応のスピードは早い。しかし、出来合いの素材やパターンが利用されるため、他社と大して変わらないクリエーションとなって、完成度が低くなるデメリットをもつ。
 特にリーマンショック以降、SPAは売上げ不振に伴って収益確保を最優先し、ODMにおける原価率の切り下げが止まらなくなっている。店頭の商品を見ると、明らかに縫製はともかくとして、素材の品質低下が否めないのだ。

 この手法はSPAに限らず、ある程度のスケールメリットをもつチェーン店もとってきたため、同質化による競争の激化は避けられなくなった。ポイントもその波に飲み込まれ、今回の「既存業態の全面改造」「専門スタッフの増強」に舵を切らせたようである。
 さらにそうさせる最大の理由には、「この数年抜け落ちていたブランディングを、海外でも通用するレベルに引き上げる」という課題克服があるという。ただ、はたしてそれでブランディングが可能なのだろうか。
 昨今、クロスカンパニーのように品質と原価率を切り下げ、浮いたコストを有名女優を起用する宣伝費に回し、ブランディングするのが勝ち組のビジネスモデルになっている。しかし、ポイントがブランドを確立するには、それらとは一線を画する「品質向上」や「キャラクターの創出」も必要と思われる。
 「商品が良くなった」「カッコ良くなった」と明らかに変わってこそ、業態も改造できるわけだし、専門スタッフも店づくりやVMDで力を発揮できるからだ。

 同社はグルーバルワークからローリーズファーム、ジーナシス、ヘザーと次々に業態を軌道に乗せてきたが、多店舗化とODM調達によって商品づくりはステレオタイプに、品質は低下してきたのも事実だ。さらにコレクトポイントを出店したくらいから、業態や商品の開発に手詰まり感が見えて仕方ない。
 まず、商品の品質を向上するにはコストアップは否めないから、価格政策の見直しが必要になる。現状のアッパーポピュラーからアッパーモデレートまでを1ランク程度引き上げることが必要だ。まずは同社のトップブランド「トゥルーノジーナ」を利用して、実験してみるのも良い手かもしれない。
 また、上質化を左右するのは、緩やかなインフレシフトもある。幸い、ファストファッションのブームも一段落し、11年以降、専門店チェーンでは客単価が対前年比でプラスに転じている。まだまだ中国生産が主流の中で、コスト上昇は円高の比ではないのだから、インフレ基調を追い風にした「国産回帰」は考えられなくもない。

 デニムは唯一、世界に冠たる三備地区があるし、各産地にも優秀な技術者を抱える工場は存在する。そんな匠が創り出すメイドインジャパンを見直す機運が盛り上がっているのも事実だ。「国内工場は疲弊している」なんて言い訳をする前に、積極的に生産復活に寄与するくらいでないと、アパレル企業としてのポジションも確立できないのではないか。むしろ、それがブランディングの条件に他ならないと思う。
 また、国内生産なら企画スタッフを社内に抱える意味も出てくる。従来のように外部に丸投げするのではなく、時間がかかってもじっくり自社で行なうものはあっても良い。企画担当者やデザイナーが工場まで出かけて行って、仕様を細かく詰めるのだ。国内ならそれができないことはない。

 ODMをとるにしても、自社のデザイナーが外部デザイナーを黒子と位置づけるくらいの体制で、「1言えば、3理解する」くらいの優秀さとコミュニケーション力が不可欠になる。自社デザイナーがデザインとブランドのコンセプトを、説得力をもって外部デザイナーの腑に落とすことができれば、 少なくともキャラクター性の創出は不可能ではない。当然、その先にブランディングが見えてくるのだ。
 すべてのブランドでSCMを目指す効率性追求ばかりでなく、1~2のブランドではビジネスの原点に立ち返った手法をとることも重要ではないか。それが業態改造、専門スタッフの強化に繋がると思うのだが。 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする