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黴の説(第二)

2006年04月29日 | きのこ

植物学雑誌Vol.1(1887),N04 72-75
黴の説(第二) 「vol.1-4_黴の説2.pdf」をダウンロード
田中 延次郎

「西暦1111年即ち我文政二年英国に於いてドクトル、ウィゼリング氏の著書に同国に於いてすでに発見せる菌茸は総計564種あるを記せり其中300種はAgaricus(アガリカス)属(菌茸を分類するに當り松蕈香蕈の如き蓋の裏面に襽を有する菌茸は悉く此属中に納む)にして餘の264種の中稍形の小なるもの80種あれども眞の顕微鏡的菌茸(黴類を云う)と稱べきものの如きは僅かに数種に過ぎづ然るに其後凡40年を過て同国出版の英国菌茸目録に於ては総計2470種の多きに至れり之をウィゼリング氏の著書に比すれば1906種を増加したり尚其後に於いても菌茸の種数次第に増加し今日に至るまで同国出版の隠花植物雑誌類に於いて新種発見の報告絶ゆる事なし之は英国のみあらづ獨、佛、米の諸国に於いても亦然り此の如くにして発見せる多種なる菌茸の中に於いても通常の菌茸(松蕈、香蕈、天狗蕈、虚無僧蕈、萬年蕈の類を云う)に比すれば顕微鏡的菌茸(黴類を云う)極めて多し之は全く顕微鏡の用法広く世に行はれたるに因るものにして決して他に原因あるにあらず我国に於いても菌茸の探究を為せるもの古へより多しと雖も黴類の如き微細なる菌茸の探究を為さざりしは全く顕微鏡の用法広く世に行はれざるに因るものにして決して他に原因あるにあらずされば黴類の如き微細なる植物と雖も顕微鏡を用いて容易に之を探究し得るの今日に當りては先に菌茸の探究を為せるものの闕を補ひ啻だに菌茸学をして完全ならしむるのみならず我国植物学をして上乗の域に進め遂に泰西諸国と相對立するを務むべきのみ…」