深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

大阪発治療院値引き戦争勃発?

2006-12-03 15:11:38 | 業界のウラ事情
私が取っている無料メルマガに、先日、こんな記事があった。

先日ある方から聞いたお話ですと、「今大阪では患者さん欲しさに、保険なのに割引なんて当たり前。一回来た患者さんを引き止めるために必死ですよ」という。別にその院長を責めるつもりもありません。必死なだけなのですから。ただね、その必死な形相を患者さんは見ていますよ。(後略)

「保険なのに…」という下りから、言われているのは柔道整復師がやっている接骨院、整骨院か、あるいは保険でやっている鍼灸マッサージの治療院だと思われる。さっそくネットで調べてみたが、さすがに治療院のHPで堂々と料金割引きをうたっていることをはなく(HPに割引チケットが付いていて、それを持って行くと初診料タダ、みたいなのはあるが、それは大阪に限った話じゃない)、実態は不明だが、本当だとすれば凄い話だ。自由診療の治療院ならともかく、保険診療で割引とは…。

保険診療だと、患者一人診て治療院に入ってくるのは、確か1500円くらいだったと思う。そんな額では、十分に時間をかけた治療などしていると院としては全然ペイしないため、いかに治療をシステム化して回転率を上げ、患者の頭数をこなすかが重要な経営戦略となる。例えば、ローラーベッド→低周波治療器→揉み/マッサージ(注)→矯正やテーピングなどの本当に必要な治療、という流れを作り、本当の意味での治療はごく少なくても、「あぁ、やってもらった」という患者の心理的満足感を高める、という手法である。

(注)マッサージは本来、医師、医師の指示を受けた看護師、そして国家資格であるマッサージ師しかできないことになっている。だから、柔道整復師の資格しか持たない先生がやっている接骨院、整骨院で「マッサージ」を行うことは違法である。とは言え、患者がいちいち治療家の資格を確認することなどあり得ないし、マッサージ師ではない人が、クイックマッサージやフットマッサージを堂々と行っているご時世なので、実際には有名無実化している。

だが、本来、接骨院や整骨院で保険診療が認められているのは、捻挫、脱臼、骨折(ただし、複雑骨折でないもの)などと決められている。つまり、無制限に何でもかんでも保険で、ということではないのだ。そのため、腰痛を腰椎捻挫、首の痛みを頚椎捻挫、などと言い換えて保険請求することが半ば慣例になっていて、それが通ってきた。今までは。しかし、保険財政の逼迫から、そういった馴れ合い的な慣例が認められなくなりつつある。そこで、接骨院や整骨院ではクイックマッサージやリフレクソロジー、耳ツボ痩身といった自由診療の商品に力点を移してきているが、それはそれで強力な競争相手がいる。

その上、柔道整復師や鍼灸師の養成校が、ここ4年ほどの間に全国に次々に誕生し、例えば、鍼灸学校全体の学生数は私が在籍していた時と比べて、およそ2~3倍になっている。国家試験も年々少しずつ難しくしているのか、昔は80%を超えていた合格率が、今は75%を割り込んでいるのはないだろうか。柔道整復師の場合は鍼灸師より、それが先行して起こっている。養成校が増えているのは資格を取得したいという需要があるためだが、資格を取得しても、活躍できる市場そのものが拡大しているわけではないから、いきおい、待っているのは過当競争ということになる。

だから、記事は大阪の話として出ていたが、場合によっては、全国どこで同じことが起こっても不思議はない状況ができつつある。例えば、大阪の接骨院が「ウチは料金割引作戦で経営を立て直した」なんて事例をどこかで発表したら、同じ手を使おうとするところが多分出てくるだろう。それに呼応してまわりが対抗値引きを行うようなことになると、地域全体を巻き込んでの値引き戦争に突入…などということも、全くないではない。

え、ウチ? ウチは仮にまわりの治療院が値引き戦争をやっていても、それに参入する気は全くありません。実は、ウチも開院して間もない頃、とにかく患者を集めようと焦ってめちゃくちゃな安値で治療して失敗したことがあるのだ。

(多分、そういう値引き販売に走るところは、どこでも同じことを考えると思うのだが)一度ウチの治療を受けた(商品を買ってくれた)患者さん(お客さん)は、通常料金(価格)になってもそのままずっと来続けてくれる、と思い込んでいた。が、そういう時に来た人のほとんどは通常料金に戻した途端に、潮が引くようにいなくなった。要するに、ウチの治療(商品)が気に入って来てくれていたのではなく、ただ料金が安いから来ていただけだった、ということ。だから、料金が安くなくなれば、もう来る動機はなくなる。当時の私は、そんなこともわかっていなかった。

その失敗から、私は「もう料金は下げない。『この料金でいいから、あなたの治療が受けたい』という人だけを相手に、やっていく。その代わり、そういう人に対しては、今できる最高の治療を提供すると決めた。だから、仮にまわりが値引きに走っても、それで他に移る患者は、そもそもウチには来ないか、ウチの治療が合わなかった人なので、特に気にならない。むしろ、まわりが値引き合戦してくれ方が(短期的にはともかく)中・長期的にはウチにはありがたい、と思っている。なぜなら、値引き合戦は消耗戦であり、やればやるほど治療院が疲弊するか、治療のレベルが落ちるかの状態へと陥っていくから、それに加わらずに、ある期間やり過ごすことが出来れば、それだけでもアドバンテージになるからである。

さて、治療院値引き戦争は果たして起こるのでありましょうか?

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