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「天晴れ!」とはとても言えなかった『天晴爛漫!』

2020-09-26 09:52:13 | 趣味人的レビュー

アニメ『天晴爛漫!』が最終回を迎えた。これはP.A.WORKSが制作したオリジナル・アニメで、元々2020年春アニメとして4月から放送が開始されたが、新型コロナの影響を受けて3回で中断。新たに夏アニメとして、既に放送された3回分を含めて7月から放送されていたものだ。

物語についてアニメの公式サイトには、

19世紀が終わり20世紀の幕が上がろうとしている時代…天才だが社交性0のエンジニア『天乃天晴』と、凄腕だが臆病な侍『一色小雨』はある事故でアメリカに漂流してしまう。無一文の二人が日本に帰るために選んだ方法は「アメリカ横断自動車レース」に参加すること。スタートは西海岸ロサンゼルス、ゴールはニューヨーク。自作の蒸気自動車で荒野を駆け抜け、クレイジーなライバルと競い合い、アウトローや大自然から身を守り…果たして二人は過酷なレースに勝利し、賞金を手に故郷に帰ることができるのか!?

と書かれている。PVでも、これは自動車黎明期を舞台にしたレーシング・アニメのように見える(その上、私のような古い人間は、マシンの造形から『チキチキマシン猛レース』を思い出してしまう)。

史実でも19世紀末から20世紀初頭は自動車の黎明期で、さまざまな設計思想に基づく多種多様な自動車が作られていた。1908年に初の量産型自動車となるT型フォードが出て以降は事実上、自動車はガソリンエンジン車にほぼ絞られてしまうが、その前までは、例えばエジソンは本気で電気自動車の開発を行っていた(エジソンの電気自動車がT型フォードに先んじていたら、ガソリンエンジン車の時代はなかったかもしれない)。そんな自動車開発史の中で一番面白い時代を舞台にした自動車レース(しかもアメリカ大陸横断レース)の話。面白くないはずがない! 例えばレースの実況と合わせて、出場する選手一人ひとりとそのマシンのバック・グラウンドを語れば、それだけで十分な密度を持った物語が作れてしまうだろう。

けれど、その期待は見事に裏切られる。この『天晴爛漫!』は「誰が最後に勝利するか?」がテーマのレーシング・アニメではない(確かにレース・シーンはあるのだが、物語が進むととともに、誰が第何位かなど、どーでもいいものになっていく)。でも、だから悪いというわけではない。最初に思ってたのと違う展開になるアニメはたくさんあるし、それが見る側の予想を超えていくようなものは大歓迎だ。だが、このアニメに関しては、そうはならなかった。

『天晴爛漫!』を一言で表すなら、いろいろな素材をぶち込みすぎて、もはや何をしたいたのか分からなくなってしまったアニメ、である。自動車レースは出てくるが、抜きつ抜かれつのレースのヒリヒリ感が描かれるでもなく、主人公は天才的なメカニックだが、メカ(特に黎明期の自動車の)についての蘊蓄が語られるわけでもなく、アウトローたちが物語のキー・パーソンとして登場するが、19世紀末のアメリカの風俗(特にアンダー・グラウンドな)がテーマというわけでもなく、最後に天乃天晴が人間性に目覚めるが、それは物語を無難に終わらせるための予定調和的なものでしかない。結局のところ、いろいろな要素はあるが核となるものが何もない、そんな作品なのだ。

もちろんアニメを何本も見ていれば、そういう「何がしたのか分からない」のは結構あって、大抵は1,2話で切ってしまう。それを曲がりなりにも最終話まで見続けられたのはアニメーションとしてのクオリティの高さゆえで、さすがはP.A.WORKSと言うほかない。それだけに、この絵面のよさに寄りかかった、よく分からないグダグダさが残念でならない(実は絵に関しても、例えば主人公である天乃天晴の人物設定とビジュアルの矛盾など言いたいことは山ほどあるが、面倒くさいのでこれで止める)。

あまり否定的なレビューというのは私自身読んでいてイヤだし、書きたくないのだが、この作品に関しては何だか書かずにいられなかった。


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