
コリン・モーガンの2007年舞台「Vernon God Little」の原作小説日本語訳を読みました。
ミリ知ら状態で読み始めてもアメリカの田舎の高校で生徒が銃を乱射、ということで「コロンバイン高校銃乱射事件」(1999)を題材にしたことはわかりました。
コリンの役ヴァーノンは犯人の親友だったという理由で共犯者として容疑者にでっち上げられ実の母親にさえ無罪と信じてもらえない15歳の少年です。
実はこういう「ニュースで語られる事件の真実は・・・」という内容そのものは私は大好きで、メディアで語られない当事者たちの関係やしがらみに興味があります。それで最初はおもしろそ!と思ったんですが・・・

ヴァーノンの母や隣人、いつも家に来る母の友達、保安官たちが何人もいてそのひとたちを覚えられず「大食漢デブのパム」とお向かいの「自慢屋」以外顔のない登場人物として最後まで(名前が何度も出てくるにもかかわらず)エキストラとして通り過ぎてしまいました。
登場人物も起こる出来事もアメリカの本音と建前と資本主義の悪いところオンパレードです。ヴァーノンが口が悪いのもこんなものに囲まれて生きてたらそりゃあ世界中を呪いたくもなると途中からうんと納得します。
「アメリカ人はストレートにものをいう」ってどこの日本人が言い出したのか、見栄や上辺だけの優しい言葉とか偽善は日本どころじゃないし、またディヴェート文化があるもんだから理屈が偽善に偽善を上塗りしていくのは救いようがないです。
でも私にとってそれと同じくらい辛かったのは、コメディのはずなのに笑いどころが95%わからなくて笑えなかったことです。1冊で笑えたのは3回くらいでしょうか。ココは笑いどころか?と薄々感じてもツボに来ないと言いますか。
そしてストーリー自体はどんどん裏目裏目へと出ておもしろいです。予測不可能。
高校生の独り言みたいにぐちゃぐちゃしてるように見えてちゃんと神(作家)の見えない糸がシュッと張りめぐされていました。
ヤング・ヴィックでの舞台がもし見れたら、コリンがセリフを喋れば、笑いどころがやっとわかるんではないかと思うと見れないのが残念でなりません。
主役以外のキャラクターを知ってる俳優さんで想像して自分を盛り上げました。大人たちも背景も気が滅入る要素満載なので、綺麗どころのヴァーノンの憧れの上級生テイラーはクロエ・グレース・モレッツ、イカれた不思議ちゃんのエラにゾウイ・ドゥイッチ。

