1984年の映画「アマデウス」は好きでしたが、だからと言ってその元になった舞台を見たいとは思っていませんでした。
しかしアタリの多いNTライブに来るとは、これはやはり映画の元として確認しておかねばなるまい!と思いました。
と言うのは、ベネディクト・カンバーバッチの演劇学校RAMDA卒業作でのサリエリが、それまで俳優を目指すには反対だったお父さんに「息子よ、お前は私を超えた」と言わしめた・・・という話がずっと印象に残っていて、
舞台のアマデウスは、サリエリは、どういうものなんだろう・・・と引っかかっていたからです。
結果、
映画を見たのはまだ若くてものごとがよくわかってなかった私、ということを差し引いても、この舞台の方がテーマがとってもとってもとってもわかりやすい、ダイレクトに来る良品でした。
知ってる俳優さんじゃないのに、いやだからいいのか、サリエリもモーツアルトも大迫力キャラで、最初から最後まで目が釘付けでした。はっきり言って、サリエリは醜悪なスノッブだし、モーツアルトはお下品なマカボイ君みたいだし、だけどふたりとも自己主張と上昇志向が強く、それでいてふたりとも憎めないのです。
リアリティを追求した映画に比べて、舞台はオーケストラの音楽家をステージにあげて黒子のように見せ、あたかも音楽が生き物のように見えましたし、
衣装もサリエリは正統派の古典コスチュームなのだけど、モーツアルトはパステルカラーやビビットカラーのゴブラン織のジャケットにピンクや柄物(この柄がなんだったのかどうしても見えなくて悔しい!)のドクター・マーチンのブーツなんですよ!あれが当時のパンクな精神のうま〜〜〜い演出でした!
映画を見たときはあまり意識しなかったけれど、サリエリはイタリア人なんですね。でモーツアルトはオーストリア人で、舞台となる宮廷もオーストリア。当時はオペラといえばイタリアの文化でモーツアルトがドイツ語のオペラを作ったことは斬新だった。逆にサリエリはルネッサンスの国、ローマの国文明国イタリア出身ってことで、芸術的センスゼロの皇帝から大事にされていたのでしょう。この舞台での皇帝がおバカさんでとても良かった!
そのイタリア人サリエリをアフリカ系の俳優が演じ、イタリアン・アクセントの英語に、イタリア語やフランス語や(多分)ドイツ語も混じってたんですね、これ、ナショナルシアターの観客はどうやって理解してたのかな。字幕らしきものは見えませんでした。
サリエリってインテリだと思ってたのは映画の影響で、舞台のこの俳優さんだと、自分の先入観を申し訳なく思いながらも、オセロのように他国で一旗揚げたい生まれの卑しい(または全くの平民)人のように見えてしまいました。だけどそれがまた魅力でもありました。
でね、若きベネディクト・カンバーバッチ版サリエリを想像しました。これが、ハマるんですよ!インテリってところと、芸術的才能が欲しくてたまらないのに、ものすごく俗人でもがくサマ・・・
さあ皆さん、脳内で「Starter for 10」のワッツ先輩と「Cabin Pressure」のマーティンを足してロココ調の衣装を着せてみましょう!!
ああ、見てみたい!