Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化(国際結婚の家族の話)、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

「情愛と友情」感想

2014-05-20 21:56:00 | ベン・ウィショー


私の嗜好をかなり把握してきている英国アマゾンにお勧めされてしまった「BRIDESHEAD REVISITED(2008)/情愛と友情」、本領発揮したベン・ウィショー君に目がくらんで日本版ソフトを探したけれど現在は高額なリセール品しか入手できないようなので、英語版で妥協してしまいました。結局は英アマゾン再訪となったオチです。

原作はイーブリン・ウォーの同名小説、テーマは映画にも何度も出て来たFaith=信仰ですので、本来は登場人物の信仰に関する台詞を理解しなくてはいけません。私は英語字幕を読むとその作業で集中力がつきてしまい物語の展開を見失うので、聴き取れない台詞はそのままで見た限りの理解ですが、それでもとっても良かったんです!

物語は、無神論者の中産階級の主人公チャールズ(マシュー・グード)がオックスフォード大学で出会った貴族の次男坊セバスチャンと彼の家族マーチメイン家とのかかわりです。カトリック信仰が運命を操る鍵となって現れます。

確かにテーマである信仰がなければこのドラマは起こらないのですけど、私はそれをじっくりと考えるよりも、チャールズとセバスチャンと彼の妹ジュリアの関係に感動しました。

登場人物はティーンエイジャーですが、3人共年齢よりも良くも悪くもピュアで子供時代のまま生きてる感じ。兄妹のちょっと近親相姦っぽい愛と競争心の繋がりや、ゲイのセバスチャンからの愛に尻尾を振って懐くストレートのチャールズ。物心のついた大人にはタブーでも子供の世界では「ただ好き」という感情でしかなく、セックスとか結婚とか資産とかの前にまず感情だけがあるじゃないですか。そういう関係に心が震えます。そこには立場とか性別とか社会的なことは存在しなくて、魂と肉体のみなんですよね。セバスチャンが足を怪我した時パジャマのまま部屋に3人で籠ってダラダラと過ごす図はジャン・コクトーの「恐るべき子供達」か80年代のフランス映画「エリザとエリック」の貴族版。

原作小説ではセバスチャンと妹のジュリアは容姿がソックリらしいです。そこも映像に取り入れて欲しかったです。なぜなら、チャールズがジュリアに惹かれたのはセバスチャンにそっくりだったからからってわかるじゃないですか。

ところで父親を訪ねて3人がヴェニスに行くのですが、ビーチのシーンが「べニスに死す」そっくりなんです。同じロケ地でわざわざあの年代のセットを作って撮影したのは私の妄想じゃないはずですよね?!「ベニスに死す」は1910年代でタジオ母の衣装はまだ装飾過多でそれがまた似合っていたんだけれど、「情愛と友情」はジュリアの断髪とフラッパーっぽいドレスから見ると20~30年代で少し時代は違うはずなんですが、何と言ってもシマシマ毛糸の水着が同じ!!



上の写真はセバスチャンとチャールズが戯れているのですけど、最初はセバスチャンとジュリアがキラキラ輝く海で遊んでいるのを、砂浜からチャールズは見ているのです。「ベニスに死す」ではアッシェンバッハがタジオを見ながら死んで行く美しい至福のクライマックスでしたが、チャールズは年寄りの教授と違い、愛するふたりと海で遊べるのです。でも3人で楽しく遊んだ海がこの3角関係がうまく行ってた最後のクライマックスだったのは「ベニスに死す」と同じなんですよ~  この後、3人の関係が変わって至福の子供時代も終わってしまう・・・・


学校の歴史や地理では「イギリスの現在の宗教はヘンリー8世が再婚したいがために創始したイギリス国教会」と習いましたし、「イングランドはプロテスタントvsアイルランドとスコットランドはカトリックなので同性婚の是非にも差があるしアイルランド問題が起こる」と理解していた私にとって、このイングランド内のカトリック教徒という概念は、「パレーズ・エンド」しかり私にとってピンと来ない事情です。

カトリック教徒の貴族の娘ジュリアが、無神論者チャールズとは結婚できないのに、外国人(アメリカ人と思ったらカナダ人とのこと)とは結婚できるってことにも驚きました。でもそこは宗教よりもやはり斜陽貴族には外国資本ってことですか?同じイギリス人だと階級の差でチャールズとの距離が遠いのに、背に腹は代えられないから外国人の無礼も我慢するのは辛いだろうな。

家を、信仰を守るための母の策が、息子であるセバスチャンに招いた結果。

「パレーズ・エンド」とこの「情愛と友情」でしか知らないけれど、イングランドでカトリックは人を幸せにはしてないような。

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