https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200516-00178717/ 略
新型コロナと降圧薬に関する「患者不在」の議論
もともと、中国の新型コロナ患者約45000人のデータでは高血圧のある患者は致死率が6%と高いことが知られていました。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は肺や腎臓などの上皮細胞に発現しているアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を介して標的細胞に結合し侵入することが分かっています。
血圧を上げたり下げたりするのは、レニン-アンギオテンシン系と呼ばれる体内のシステムです。
このレニン-アンギオテンシン系を調整し血圧を下げる作用を持つのが、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)、アンジオテンシン受容体拮抗薬 (ARB)と呼ばれる薬剤です。
これらの薬剤を内服している人ではACE2の発現が体内で増加することから重症化しやすいのではないかという議論が行われていました。
一方で、新型コロナ患者にロサルタンなどのARBを慢性的に内服している患者では、むしろ急性肺障害から保護する可能性があるとする論説も出ており。
これらは全く逆のことを言っていますが、共通していたのはお互いに仮説を述べているだけであり、実際の患者データに基づいたものではなかった、ということです。
そこについに実際の患者データによる検証が行われました。
こちらのNEJMという英文誌からの報告では、新型コロナで亡くなった方と生存した方を比較検討していますが、ACEI、ARBともに重症化リスクにはなりませんでした。
また別のLancetという英文誌では、新型コロナの患者と新型コロナではない患者とを比較したところ、ACEIまたはARBの内服は入院のリスクを増やさないことも分かりました。
というわけで、ACEI(レニベース、カプトリル、タナトリル、コバシルなど)またはARB(ニューロタン、ブロプレス、ディオバン、ミカルディスなど)を内服されている方は、そのまま内服を続けていただいて問題なさそうです。
イブプロフェンと新型コロナは?
<figure class="image imgC" style="color: #333333; display: block; font-family: " メイリオ","hiragino kaku gothic pro",meiryo,"ヒラギノ角ゴ pro w3","ms pgothic","ms ui gothic",helvetica,arial,sans-serif; font-size: 16px; font-style: normal; font-variant: normal; font-weight: 400; letter-spacing: normal; orphans: 2; text-align: center; text-decoration: none; text-indent: 0px; text-transform: none; -webkit-text-stroke-width: 0px; white-space: normal; width: 100%; word-spacing: 0px; padding: 0px; margin: 10px 0px 10px 0px;">
![新型コロナが重症化しやすい要因(DOI: 10.1056/NEJMoa2007621より) --●--が右にあるほど重症化リスク](https://rpr.c.yimg.jp/im_siggbCdtL_xa1k8dz6Xzmq.v3A---x800-n1/amd/20200516-00178717-roupeiro-005-18-view.jpg)
<figcaption style="color: #999999; display: block; font-size: 75%; line-height: 1.2; text-align: center; padding: 0px; margin: 0px auto 0px auto;">新型コロナが重症化しやすい要因(DOI: 10.1056/NEJMoa2007621より) --●--が右にあるほど重症化リスク</figcaption>
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イブプロフェンなどの非ステロイド系消炎鎮痛薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs;NSAIDs)も新型コロナの際に飲むと悪化するのではないかという話がありました。
これは、フランスのヴェラン保健大臣がツイッターで「新型コロナウイルス感染症に罹ったらイブプロフェンなどの薬を飲まないように」という趣旨の発言をしたのが発端です。
Lancet誌で「イブプロフェンが体内のACE2を増やし、これによって新型コロナウイルスの感染が増強されるのではないか」という仮説が掲載されました。
しかし、これに関してはまだ患者データも揃っておらず、結論が出ていません。
欧州医薬品庁(EMA)、WHO、米国国立衛生研究所(NIH)のCOVID-19治療ガイドラインは、現時点ではNSAIDsは必要時には使用を避けるべきではないというスタンスです。