https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170630-00052113-gendaibiz-bus_allから抜粋
1. タバコを吸うとリラックスできる
2. タバコはやめようと思ったらいつでもやめられる
3. 軽いタバコや電子タバコは害が少ない
4. ベランダ喫煙や空気清浄機は受動喫煙を防止してくれる
5. 分煙は受動喫煙対策になる
6. タバコとがん発症には関係がない
7. 禁煙とはタバコを我慢することで達成するものである
ニコチンは中枢神経刺激剤であって、むしろリラックス効果とは逆の作用を持つ。
喫煙後には血中のコルチゾールというホルモンの濃度が上昇するが、コルチゾールは別名ストレスホルモンとも呼ばれ、身体がストレスを感じているときに分泌される。
つまり、生理学的に体はストレス状態にあるにもかかわらず、本人は主観的に「リラックスできている」というパラドックスが生じている。これはなぜだろう。
答えは簡単である。喫煙は単に、ニコチンの離脱症状(禁断症状)を緩和しているにすぎないからだ。
仕事中など、しばらくタバコを吸っていないと、ニコチン離脱症状が出現する。それがイライラや集中困難などの不快症状である。そして、喫煙所に行って一服すると、そうした離脱症状が緩和され、主観的には「リラックス」できたと感じるだけなのである。
実際は、マイナスがゼロに戻っただけにすぎず、何もリラックスはできていない。
それどころか、血管は収縮し、心拍は高まり、消化は抑制されるなど、身体的にはニコチンによる生理学的ストレス状態に置かれている。喫煙とは、金を払ってストレスを吸い込む行為にほかならない。
例外か偶然 ⇒ どこかのヘビースモーカーが自力でやめることができた
事 実 ⇒ 自力で1年間禁煙できる確率は、多く見積もって5%
例外か偶然 ⇒ ヘビースモーカーが80歳まで長生きできた
事 実 ⇒ 喫煙者の平均寿命は約10年短い
禁煙においてまず念頭に置くべきは、それはつらくて厳しい我慢によって達成するものではないということである。ニコチン依存になっているのは、大脳辺縁系と呼ばれる脳の比較的奥の部分で、本能にも近いようなところである。
一方、我慢や理性を司るのは前頭前野と呼ばれる人間特有の部分である。この2つが喧嘩をしても、たいていの場合は大脳辺縁系が勝ってしまう。依存症の克服が難しいのはこのためである。
したがって、ここは前頭前野にがむしゃらに頑張ってもらうのではなく、ちょっとしたスキルを使って大脳辺縁系に「喫煙スイッチ」を入れないように工夫する。禁煙外来で禁煙補助薬を処方してもらうのもよい方法である。この薬は、脳内のニコチン受容体を「占拠」して、タバコを吸っても満足感が得られないようにするような役割を果たす。
それに加えて、身の回りから「喫煙スイッチ」を押してしまうものを遠ざけ、吸いたいという気持ちを未然に防ぐのも効果的な方法である。
例えば、喫煙道具を捨て、しばらくは酒席を断り、その時間を使ってジムに通ったり、運動したりする。あるいは、あらかじめ手首に輪ゴムをつけておいて、吸いたい気持ちになったらすぐに、「輪ゴムパッチン」をして、気持ちをほかに向けるなどの方法もある。
このような、「禁煙スキル」をまとめて構造化して実施するのが認知行動療法と呼ばれる治療法であるが、その治療成績を見ると、1年後の禁煙率が約30%であるとされており、禁煙補助薬とほぼ同等の効果である。
30%というと大して大きな数字ではないと思われるだろうが、現時点ではこれ以上の治療法はない。禁煙がいかに難しいかということだ。
しかし、1度の失敗であきらめず、2度3度と繰り返しトライし続けることが重要で、それにつれて治療成績は確実に上がっていく。一般に、禁煙に成功するまでには数回の失敗(再喫煙)があると言われている。
認知行動療法の具体的なノウハウは、拙著『認知行動療法・禁煙ワークブック』にまとめてあるので、参照していただきたい。