https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170730-00010199-jprime-life
私が所長を務めている、東北大学加齢医学研究所では、平成25年に初めてスマホに関する子どもたちへの影響について、本格的な調査を行いました。
スマホの長時間使用で「2時間以上の勉強効果が消える」ということが判明しました。
もう少し詳しく説明すると「スマホをほとんど使わない、まったく勉強していない子」よりも「スマホを1日4時間以上使用していて、自宅で2時間勉強している子」たちのほうが、成績が悪いという結果が出たのです。
これはいったいどういうことなのか、私たちはその後も2年間、追跡調査を行い、スマホと子どもたちの成績との相関関係を調べていきました。
すると、
・スマホを1日1時間以上、使い続けた子どもはどんどん成績が下がった
・もともと成績が良かった子も、スマホを使い始めると成績が大きく下がった
・スマホをもともと1時間以上使用していて成績が悪かった子が、スマホ使用をやめる、もしくは1時間未満に抑えたら成績が向上した
このようなことがわかったのです。
どんなメカニズムなのかはさておき、子どもがスマホを使うと成績が下がる、「学校で勉強したことが頭から消える」ということがはっきりしたのです。
スマホに限らず、タブレットなどによるインターネット使用時間と学力の関係を見ると、使用時間を1時間未満にすると、成績への影響が少ないこともわかっています。使用時間を制限できる子どもは、生活をコントロールする意思が強く、スマホの誘惑に負けない能力があるから成績がさほど下がらないのでは、と考えられます。
ところが、調査を進めるうちに、時間制限も意味をなさない例外が見つかったのです。
それが、LINEです。平成26年に、LINE等の使用時間と学力の関係を調べたところ「使ったら使った分だけ成績が下がる」ことがわかりました。勉強時間や睡眠時間など、他の要因との関連をかんがみても、同じ結果でした
どれだけ勉強しているか、どれだけ寝ているかに関係なく「LINEを使うと直接的に成績を下げる」ということが分かったのです。
さらにLINEは「使用時間が1時間未満であっても成績を下げる」ことも調査で判明しました。
すると、辞書を使う場合には、思考するときに活発になる大脳の「前頭前野」の血流が増えることがわかりました。一方、スマホを使った場合には、逆に前頭前野の血流は減少し、抑制がかかって働かない状態になったのです。
つまり、私たちがスマホを使っているとき、その間、脳は血も通わず働かず「ゆるみきっている」ということです。
ゆるんでいるということは、リラックスしているということだからいいのでは? と不思議に思う人もいるかもしれません。しかし、発達期にある子どもの脳にとっては、これは悪影響でしかありません。
脳をしっかり使って鍛えることが重要な時期にあるため、脳が休息状態になる時間が長くなると、当然、脳の発達、働きは低下してしまいます。
大学生に、背後に自分のスマホを置いて、継続的な作業を行ってもらったところ、LINEの通知音が鳴るたびに、情報処理や動作速度が遅くなり、注意力が低下したのです。
この結果から「誰かからメッセージが来た」という認識が、学習効果を削ぐことにつながっているということが明らかになりました。
ちなみに、通常の時間を知らせるアラームが鳴ったときには、影響はありませんでした。
私たちの調査では、子どもたちは勉強中にLINEや動画、音楽やゲームなど、スマホで複数のアプリを利用している「ながら勉強」をしていることもわかりました。
「動画を見ながら勉強ができるの!?」とびっくりされる方も多いと思いますが、現代の子どもたちの「マルチタスク」(複数の処理を同時に行うこと)の巧みさには驚かされるばかりです。
しかし、当然ながら複数アプリを使いながらの勉強は、成績を大きく落としてしまうことにつながっています。
私たちが、勉強中に使用したアプリの数によって、4教科の平均点がどうなるかを分析したところ、アプリの数が多いほど成績は下がる、ということが明らかになったのです。
子どもたちは勉強どころか、アプリさえひとつのことに集中できていないのです。「何にも集中できていない」というのは、脳の発達において最も悪影がである、とも言えます。