AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)の巨額報酬が問題になっている。
AIGと言えば、今回の金融危機のもとになった金融バブルを煽った張本人であり、昨年9月にリーマン・ブラザーズが破綻に追い込まれる一方で、米政府による救済を受け、公的資金が四回にわけて投入され、その総計が1700億ドル(約17兆円)にも達している保険大手である。
今回、そのバブルを煽った金融商品部門の幹部に総額約160億円(一人当たりの最高額は約6億2700万円)ものボーナスが支払われたというのである。一方で政府の公的資金の支援を受けながら、他方で、破綻をもたらした“犯罪人”たちに巨額の報酬が支払われていたのである。これは事実上、税金を山分けしていたに等しい。
AIGに対する公聴会で抗議する人たち
しかも高額報酬を受け取っていたのは、AIGの幹部だけではない。米銀最大手のバンク・オブ・アメリカに吸収合併された証券大手のメリルリンチの幹部も、昨年、巨額の報酬を受けとっていたことが明らかになっている。同社を統合したバンカメには総額450億ドル(約4兆5000億円)の公的資金が注入されているのである。
ボーナスのトップ10の社員への支払い総額は約209億円(平均約20億円!)。しかも巨額報酬を受け取っていたのは、バブルを煽った専門家達である。例えば、投資銀行部門の責任者33億8000万円、トレーディングの責任者13億円、金融商品の責任者18億7000万円、商品取引の責任者16億5000万円、中東・アフリカの責任者15億円、グローバル戦略の責任者29億4000万円、グローバルセールスとトレーディングの責任者39億4000万円と凄まじい数字が並んでいる。
彼らは自らの責任で破綻を招きながら、税金で穴埋めされることをよいことに、暴利を貪っていたのである。何と腐敗した連中であろうか。
しかしこれは信用が極端まで膨張した腐敗した資本主義の避けることのできない一つの現象なのである。マルクスは資本主義的生産における信用の役割を論じるなかで、次のように指摘している。
《それは、新しい金融貴族を再生産し、企画屋や発起人や名目だけの役員の姿をとった新しい種類の寄生虫を再生産し、会社の創立や株式発行や株式取引についての思惑と詐欺との全制度を再生産する。》(全集版25巻a559頁)
《そして、信用はこれらの少数者にますます純粋な山師の性格を与える。》(同560頁)
《信用制度が過剰生産や商業での過度な投機の主要な槓杆として現われるとすれば、それは、ただ、その性質上弾力的な再生産過程がここでは極限まで強行されるからである。……それゆえ、信用制度は生産力の物質的発展と世界市場の形成とを促進するのであるが、これらのものを新たな生産形態の物質的基礎としてある程度の高さに達するまでつくり上げるということは、資本主義的生産様式の歴史的任務なのである。それと同時に、信用は、この矛盾の暴力的爆発、恐慌を促進し、したがってまた古い生産様式の解体の諸要素を促進するのである。》(同562-3頁)
バブルの破綻と世界恐慌の勃発が古い生産様式の解体を促進するものであるなら、こうしたバブルの中で暴利を貪った“寄生虫の大量発生”も、資本主義的生産様式が新しい生産様式によって置き換えられなければならないことを教えるものの一つでもあるのであろう。
貴方も世界恐慌をより深く理解するためにも、ともに『資本論』を読んでみませんか。
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第12回「『資本論』を読む会」・案内
■日 時 4月19日(日) 午後2時~
■会 場 堺市立南図書館
(泉北高速・泉ヶ丘駅南西300m 駐車場はありません。)
■テキスト 『資本論』第一巻第一分冊 (どの版でも結構です)
■主 催 『資本論』を読む会
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