詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

山本育夫『ことばの薄日』

2023-09-11 21:56:15 | 詩集

 

山本育夫『ことばの薄日』(思潮社、2023年08月20日発行)

 『ことばの薄日』には、「博物誌」に発表されたときに感想を書いたものもある。書いたかどうか忘れたものもある。
 「しの居場所」の「し」は「詩」か。

しがありそうなところにはしはない
みんながしだとおもっているところにはしはいない
しじんがしだとおもっているところにはしはいない
しは薄い薄い皮膜のようなところにひっそりと棲息している
しはかぎりなくふつうのことばのふりをしている

 「ない」「いない」が「棲息している」「ふりをしている」にかわる。
 なぜ、私たちは「否定形」のまま語り続けることができないのか。どうして「いる」のような「肯定形」をつかわないと何かを語れないのか。
 しかし、この肯定形は積極的(?)な肯定形ではない。「ひっそり」とか「ふり」とか微妙なものを含んでいる。「薄い」もそのひとつだろう。その微妙なものを「否定形」の一種と呼ぶこともできるかもしれない。だから、やまもとは、この詩を「否定形」だけで書いたと言うこともできる。

 しかし、私がこの詩を読んで思うことは、もうひとつある。
 「詩の存在しない場所」を山本は書くことができるか。

 詩は存在するとか、存在しないとか、どこに存在するか、どこに存在しないか、というのは、その問い自体がレトリックにすぎない。
 存在させる意思が詩人に(あるいは読者に)あるかどうかだろう、と書いてしまえば、それもレトリックになってしまうかもしれないが。

 寺山修司や谷川俊太郎を思い起こさせるレトリックがここにある、と感じるのは私だけか。


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