眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

降りしきる雨

2024-06-01 | 
雨が降りしきる
 薄暗い街の風景を
  青い街灯が浮かび上げる
   コートの襟を高くして歩き回った
    何処かの街
     何処かの人々

     微熱で放射される体温の行方
      ホテルの部屋に転がり込んで
       ベットの中でウィスキーを舐めていた
        カーテンを開けると
         雨の街並みが灯る頃合
          僕は君の幻影を想い
           途方に暮れるのだ
            地上35階の部屋から
             僕は叶わぬ夢と現実の香りに包まる
              果たして明日はやって来るのだろうか
               
              開いたトランプのカード
             女王と兵士が語り始める
            兵士は云う
           貴女の為に戦争はしたくない、と
          オルゴールが鳴り響いた
         たぶんホテルのロビーからだ
        こんなに巨大なホテルなのに
       僕は僕以外の人々を見ることが無かった
      処理された記憶
     破棄された道化の面影
    僕等は歌い続けていたんだ
   あの雨の降りしきる街灯の下で
  永遠を見ていたのだ

 ねえ
星が見えるよ
 君がギターを置いて煙草を一服しながら呟いた
  それにしても
   寒いよね
    マフラーを首にしっかり巻いて
     ふたりで煙草を回し飲みした
      歌は誰にも届かなかった
       それでも僕等は
        街角で歌い続け
         安物の録音機材に記憶を封印した
          僕等は世界を封印しようとしたのだ
           いつまでも永遠が続くように
            毎日がこのままでありますように
             願い続けていた

            水が割れる

           朝日が昇るのを嫌った
          僕等は星空が好きだったし
         街角の空間の寒さを愛した
        
        愛している
       そう口に出来なくなったのは
      果たして何時頃からだろう
     僕は溜息の数だけ大切な物を失った

    君は暮らしの中で
   ひきつった微笑みの数だけ大切な何かを失う
  まるで僕と同じように
 壊れ物の世界
安いハンバーガーを
 まるで粘土を飲み込むように詰め込んだ
  世界が割れる
   ごらんよ
    そこらかしこにしあわせやふしあわせが散らばっている
     白紙には僕らのサインだけが記入されている
      ホテルの部屋で
       記憶を舐めながらギターを弾いた
        君が歌った筈の歌
         もう忘れてしまった夢の名残
          永遠を忘れてしまったのだ

           ね

          お願い

         繋がっていて

        お願いだ

       繋がっていて

      雨の降りしきる街角で

     
       泣いた誰かの肖像





        お願い

















コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2024-05-30 | 
逃避した錯誤
 予感を孕ませ
  云えずじまいの言葉を
   飲み込んでしまう

 おそらくは
  世界の困惑を余儀なくされた瞬間
   神経が磨耗されるのだろう
    歯車にも似た
   耐えず混乱を予期させた
  不都合な解釈
 原因を探るのは無意味な事
座禅を組んだ
 背中と腰に鈍痛が走り
  わずか十分かそこいらの修業
   畳に寝そべって
    自堕落な我に塗れた

  僕は
   折れて使い物に為らなくなった
    羽の毛先を撫で
     飛べない空を見上げる
    惜しむらくは
   まだ飛んでいた記憶が生々しい傷跡
  賛美した祝祭は
 祭壇の前で生贄として捧げることになる
実際は
 多分 そんな物だろう
  夢見 破れ ひれ伏す
   安易な理想郷が設定された
    情報の困惑の中
     マネキンみたいな実存の無い
      磨耗した存在
     幾ばくかの
    幸せの形をしたニュースを
   必死に探し
  美食と旅の話ばかりを繰り返す
 辟易して
仏壇の前で線香を焚き
 思わず溜息を促す
  沈黙のありか 
   精神性は
    網戸の隙間から入ってきた蚊の音に悩まされる

   明日はまた平穏を装うのだろうか?

  折れた羽というのは
 けっこうかさばるよ
  かといって
   むしり取って捨てるには
    そんな勇気は僕にはないね

     だから
  
    僕等は希望を観測する

   風が強い日

  もう一度試さなくっちゃ

   飛べるかもね

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

青のシグナル

2024-05-22 | 
優しい哀しみが嘘でないなら
 じっと黙って海を見ている
  重く垂れ込めた雲の下
   深い青を見つめている
    僕は煙草に火をつけ
     少女は水筒に入った珈琲を飲んでいる
      青は青のままで
       だから僕たちは永遠の青の住人だった
        全てが哀しみの憂いを帯びた青の世界だった

         絶望と希望の成分が一緒なんだ

          君は厳かにそう告げ
           祭壇に捧げる様にグラスの葡萄酒の赤をかざした

            古びた教会のステンドグラスの窓から
             微力な光が差し込んでいる
              今にも霧散する大気の中
               僕らの魂もまた無力だった

               君の故郷の海は綺麗なんだろうね

                僕は黙りこくって葡萄酒を飲み干した

                 忘れたよ、そんな昔のこと

                  君は僕の返事に満足して微笑んだ

                   きっと綺麗な青のはずだよ

                    そう云って
                     手のひらに十字架を握った

                    ね

                   祈ろう

                  何をさ?

                 世界が永遠に青である様に。

                だがしかし
               僕の手のひらには何も存在しなかった
              哀しいけれど僕は何ひとつも持てなかった
             古ぼけたラジオから流れる音楽だけが
            僕に魂のありかを教えてくれた
           君は僕に魂の無限を伝えようとし
          僕は君にルーリードの詩を伝えようとした
         教会の静けさの中
        僕らはただ葡萄酒が無くなるまで
       永遠について考察した

      永遠

     優しい哀しさのことをそう呼ぶんだよ

    君はそう云って存在を現象から乖離させようとした
   そして僕は君の魔法を信じていたのだ
  緩やかな螺旋
 魂の邂逅
その儀式の為
 僕らは葡萄酒を飲み続けた
  ラジオからヴェルヴェト・アンダーグラウンドの曲が流れた
   
   哀しみ

    君のいない世界を羅列する夜

     僕には捧げるものが何も無かった
      
      だから深夜三時にバーボン三杯分祈るのだ

       少女がギターで「哀しみの礼拝堂」を弾いた

        哀しみ

         優しく密やかな熟れた果実のたくらみ

          試行錯誤する夜が

           夜が青であるといい

            青い世界が永遠に続く様

             祈るのだ

              ウイスキー三杯分の祈り

               決して届かぬ想い達

                

                青の緩衝




                優しく哀しい青
















    

        
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハイビスカス

2024-05-12 | 
ハイビスカスをお風呂に浮かべて
 賛美の歌を口ずさむ
  君の呼吸音は一定で
   静かにただ呼吸していた
    真昼の三時頃
     湯船にお湯をはって
      ぼんやりと景色を想った
       子供たちの捧げる歌

       空は気だるげに飛翔した
        カモメ達の世界
         僕らは空を愛す
          壊れかけの複葉機で
           世界の果てまで飛行する
            地上がゆっくりと回り
             世界は球体だった
              たどり着いた亜熱帯の地は
               不快指数が高く
                水浴びにちょうど良かった
                 
                 君の昔を
                  想っていた
       
                 ハイビスカスの咲く頃
                僕らは宙空を舞う魂だった
               ね
              忘れないでいてね
   
             そう云った君の視界から僕が消え失せ
            惰眠が僕から
           君の存在を曖昧にする
          ページをめくった
         あたらしい知覚の扉が開くのだ
        気だるい深夜
       バーボンを舐め自堕落に世界を紡ぐ
      子供達がはしゃいでいる

     月光
    青い月明かりの世界で
   帰りを待っている
  カモメの世界
 日常を凌駕した恣意のもと
僕らは明確な存在足りえるのだ
 必要な栄養素を蓄え
  呼吸を備蓄する
   酸素マスクの向こう側
    皆がオレンジ色の蛍光灯の舌で
     お茶会を開くのだ
      いっそ
       小さなお茶会
        誰かが去り
         残された我々がマスターに任命された
          暖かな紅茶を淹れなければ
           ね
            忘れないでいてね

            忘却の仮面を被った嘘
             君は忘れたはずの記憶を所持していた
              君の昔を

              ハイビスカスの花を知っているの?

             少女が緻密なデッサンを描きながら尋ねる

            うん
           僕の島の花だからね

          どんな色をしているの?

         忘れたよ
        遠い記憶と共に

       匂いは?

      それもとっくに忘れたよ

     あなたの島は何処にあるの?

    地球儀を回し

   僕は答えるのだ

  忘れたよ

 忘れてしまったんだ

やがて海だった領域は

 埋め立てられ

  コンクリートの壁になる

   それは誰にも止められないのだ

    カモメたちは飛ぶ空を忘れ

     僕らは僕らの島を忘れてゆくのだ

      静かに

       静かに

        記憶のハイビスカスを想い

         君の憂いに僕は泣く

          琥珀のウィスキーを舐めながら

           僕は

            記憶の中のハイビスカスを想う

             消えてしまったよ

              くすくす

               子供達の無邪気は砕け散る

                くすくす

                 誰かが笑っている

                  ごらん

                   嘲笑された世界

                    僕らの忘れ去られた花の物語

                     僕らは


                      僕らは










コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

17歳

2024-05-06 | 
やがて風に舞うだろう
 桜が満開した石畳の坂道で
  花びらに邪魔されながら写真を撮った
   マリア像は不思議な微笑を湛え 
    思春期の僕らはただ夢を追いかけた
     17歳の春
      戻れない過去
       今でも呼吸する記憶たち

        長い石畳の坂道に慣れるには
         余りにも脆弱な精神だったはずだ
          僕らは寮の屋根に上って
           煙草を吹かし
            永遠に喋り続けた
             まるで熱病のように
   
             砕け散る破片
            それを記憶と名付けるのなら 
           指向性のハンドルマイクの如く
          注意して録音に望まなければならない
         かつて少年と呼ばれた
        君の饒舌なアナウンス
       昼休みにマイク・オールドフィールドを流した君は
      赤い舌を出した
     消えないで
    どうかお願いだ

   画面がちらつく視野
  薄れ行く記憶
 魚たちの世界
井戸の中の化石

 封印された刻印
  散髪屋で同じ髪型にされた
   春が来る
    同じように17歳の時間が
     国会で民主的に可決された
      「異議なし」
        深夜ラジオを毎晩聴いた
         電気信号が遊覧される
          気紛れな君の所作
           造作も無い事
            僕は空き部屋で
             ただひたすらに油絵を描いた
              どうして17歳だったのだろう?

               僕らは音楽だけを信じた

              ジャニス・ジョプリン
             シド・バレット
            キング・クリムゾン
           レッド・ツェッペリン

          そうして
         あなたの名前
        ジョン・レノン
       僕らは世界を手中に収めた
      「グレープフルーツ」と「スイミー」を読んだ
      君はだらしなく制服をはおり
     僕はヒトラーの「我が闘争」を暇つぶしにした
    ルドルフ・シュタイナーに傾倒した10代は
   入学と同時に保護者との対面を余儀なくされる
  
  どうして
 17歳だったのだろう?
 永遠を信じた

やがて

 やがて桜の花びらが舞うだろう

  祝福された

   懺悔のように

    木魂する

     一片の詩

      「呼吸しなさい」

       僕らは

        17歳だった




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

100万回

2024-05-04 | 
空が高かった頃のお話
 白色の浮雲が青い空間を遊泳し
  浮き輪に掴まりながら空気の波に流される午後
   僕らの肥大した想像力は
    残暑の熱気で気球を草原から飛び立たせる
     やがて気球は地上から離陸し
      混沌とした思考から乖離する
       猫があくびをし
        人々がグラスを掲げて乾杯した

        蝉の声が鳴り止まない
         神社の階段に座り込み
          はっか煙草に灯を点けて
           ビールを飲む
            麦藁帽子を被り
             さんだるをぱたぱたとさせた
              気球が遊覧する
               Tシャツのジム・モリスンが微笑む
                ストレンジ・デイズ
                 知覚の扉

         図書室で貸し出された本達
        「100万回生きた猫」を眺めていた
       100万回生きれたら
      僕等は100万回泣くのだろうか?
     生まれ変わりが本当なら
    また地上に於いて
   混乱し路に迷うのだろうか?
  100万本の煙草を消費するのだろうか?
 
 残暑の午後
白い壁と白いシーツの病室で
 点滴がぽたりぽたりと時を刻む
  まだ三才の男の子はじっと歯を食いしばっている
   僕はベットの端に座り
    絵本を読んだ
     物語が終わると
      少年は不安そうにこっちを向いた

       ねえ、もう一回読んで。

       僕は絵本を最初から音読する
        繰り返し繰り返し音読する
         100万回読み聞かせる
          面会時間が終わるまで

          お外は暑いの?

          空が青いよ。
           僕が君くらいの頃には空はもっと高かったけどね。

          アイスクリーム食べたい。

          だめだよ。かわりにキャンディーをあげるからさ。

         僕等はレモンキャンデーを舐めながらくすくす笑った

        どうして洋服の叔父さん怒っているの?

       ジム・モリスンの顔に興味深々だ

      たぶん世界の不条理に怒っているんだよ。

     ふ~ん。笑えばいいのにね。

    僕は苦笑いした

   そうだね。

  ねえ、もう一回読んで。

 いいよ。

僕は物語のねじを巻き最初から世界を再構築する


  呆気ない出来事
   空の話
    病室の窓の風景
     調整された室内温度
      蝉の鳴き声

       少年は眠ってしまった

        僕は物語を読み続ける

         君が起きたら

         君が起きたら 

       いっしょにアイスクリームを食べようね


      

              

    

  
                   
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

旅路

2024-05-01 | 
酔っぱらってグラスを割る夢を見た
 赤いワインが大量出血した血液の様に赤い溜まりを作った
  僕はそんな光景を何の感情もなく眺めている
   そんな夢だ

    君と旅に出た汽車の中で
     僕等は緑の瓶のハートランドビールを飲んだ
      駅の売店で購入したシュウマイをつまみにして
       他愛の無い戯言で笑った
        全席禁煙なのを知ってたかい?
         10年前に禁煙した君が皮肉に微笑んだ
   
          そのくらいの情報は知っているよ。
           
           なら禁煙すれば?

            紙煙草が駄目なら葉巻を燻らせることにするよ。

             僕の返事に呆れて君はビールを飲み干した
              汽車は何度か停車し沢山の人々が乗り降りした
               ぼんやりとそんな後継を眺めていた

                何時かは何時かにしか訪れない
                 過去は美化されやがて痛みが増えたり消えたりする
                  ただこの瞬間だけが世界だった
                   容赦の無い世界だった

                   宙空の中に満開の桜を見た
                    ごらん、世界はこんなにも美しいんだよ。

                    一瞬、黒猫の言葉が聴こえた様な気がした
                     僕は昔の様にグラスを路上に叩きつけるのだろうか?
                      酔っ払った足取りで舞台に向かい
                       おぼつかない手つきでギターを弾くのだろうか?

                       あの頃
                        近くの山から見える街の夜景が好きだった
                         あの沢山の灯りのひとつひとつに
                          それぞれの暮らしがあり人生がある
                           そんな風に想うと頑張れそうな気がした

                            いなくなった友人たちを想った
                             草原の中で
                              何度も彼等彼女等の名前を呼んでいた
                               けれども返事は無かった
                                やがて僕は彼等彼女等の名前を忘れた
                                 ただ呼び続けることだけが残った
                                  それが人生の大半になった

                                  ビールを飲み干してシュウマイを食べ終わると
                                   終点で僕等は汽車を降りた
                                    喫煙室を見つけて急いで煙草に灯を点けた

                                    僕等は駅からそう遠くない宿に辿り着いた
                                   温泉に入り
                                  それからビールを飲み続けた
                                 君が酔っぱらって
                                ジャニス・ジョップリンの歌を口笛で吹いた

                               あの頃の僕等はただ楽しくて
                              終わりが来るなんて誰も信じない

                            いつかまた
                           グラスを路上に叩きつけて粉々に割るのだろうか?

                          もう会えない君との旅の夢を見たんだ

                         元気そうで良かったよ

                        昼頃目覚めると

                       不思議と泣いていた

                      不思議と嗚咽が止まらなかった






















                
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ばらっど

2024-04-25 | 
ジャック・ダニエルの蓋を開けた
 たまにはゆっくりと飲もうよ
  僕は使い慣れたタンブラーグラスに独白する
   光景は薄汚れた存在を霞める
    残り物のキャンドルライト
     灯が暗闇に揺れ
      アンモナイトの呼吸のリズムで煙草を吸った
   
       3日飲まなかったアルコールは意識を弛緩させ
         軽く酩酊した態で戯言を云う
         グラスは冷静であたまが良いので
          僕の言葉に振り返らない
           唯 時間が移ろうだけ
            湿度の高いこの島で
             扇風機が優しく微笑む

             古いテレヴィジョンで昔の唄が流れた
            作り物だけれど決して安易ではない唄たち
           はじめて「ばらっど」なんて作った僕は
          気恥ずかしさの影に
         変わらぬ世界の在り様を模索した
        もう誰の唄も批判せぬよう誓った
       それが何がしかの魂を有する故に
      誰かを記憶した所作を侮蔑する真似だけはするまいと
     自己弁護だろうか?
    そんな気になったりもする
   忘れてしまったけれど
  君を想い創った旋律は決して嘘ではなかったんだよ
 だから
誰かが誰かのことを想い創った「ばらっど」を嘲笑することは出来ないのさ
 
 例えばさ
  あの君に於いて大切だった宝物を
   彼等は笑った
    必死で暮らす君の日常を白夜が皮肉に嘲笑する
     君は違うんだ、と唄い続けるだろう
      ラジオから流れた君の心は
       今夜も垂れ流された情報として錯綜するだろう
        一片の跡形も残さず
         君の心は酔いどれの嘔吐と成り果てる
          
         クラスの隅っこで歌った唄は
        時代錯誤だと相手にもされない
       それでも僕らは歌い続けるべきだった

      勝つ必要もない
     けれど
    負ける必要もない

           
                 3時間かけてボトルの半分を飲み干した


           心を込めて演奏すれば
          きっと想いは伝わる
         心を込めて言葉にすれば
        きっと優しさに触れる

       ばらっどの呼吸

      深夜三時に送ろう

     歌い続けていて

    語り続けていてね

   僕は笑わないから

  キットダヨ









コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

草原の出来事

2024-04-19 | 
永遠は何処にあるの?
 少女が呟く
  凛とした彼女の横顔を眺め煙草を吹かした
   緑の草原には風が吹いていた
    柔らかな日差しが僕等を憩う
     緑色の瓶ビールを飲みながらあの青の時代を想った
    
      僕等は寄る辺ない流浪の旅人で
       此の世界が旅の途中なのだと知っていた
        それでもビールを浴び
         楽器をかき鳴らした
          永遠に続く緩衝の此の地に於いて
    
           ね
            ビールを頼んで
             君がカウンターで告げた
              12本目の瓶が厳かに運ばれた
               マスターは苦笑し僕にもビールは必要かと尋ねた
                意識を失いかけた僕は急いでハイネケンの残りを飲み干した
                 珈琲が飲みたかった
                  彼女は平然とした面持ちで12本目のハイネケンに口をつけた
                   ビールを飲み干す彼女の口元を眺めた
                    まったく酔い潰れない彼女に僕は呆れて質問した

                     そんなに美味しそうに飲まれたらビールも本望だろうね

                      そうね。
                       美味しいわ。
                        
                        どうして君は酔い潰れないんだい?

                         僕の言葉に彼女は意外そうな表情をした

                          酔わないのよ。
                           いくら飲んでも。

                            そうしてフリップモーリスを咥えた
                             僕は煙草の先に灯を点けた
                              彼女は満足げに白い煙を吐いた
                               午前三時
                                店には僕と彼女とマスターだけが残された
                                 赤い花
                                  君はその頃皆にそう呼ばれていた
                                   そうして
                                    ギターを弾きながら寂しそうに歌う
                                     君の切ない声が僕はとてもとても好きだった

                                      君は現実界隈の行方に酔い潰れ
                                       誰もいない路地で三本足の野良猫の頭を
                                        撫でていた
                                         雨が降りしきる深夜に
                                          傘も差さずに
                                           僕は尋ねた

                                            ねえ
                                             音楽は好きかい?

                                         赤い花は不思議そうに僕の瞳を見つめた

                                        音楽が無ければおかしくなるわ。

                                       僕は彼女を行きつけの店に誘った
                                      難しそうな顔でビールを飲みながら
                                     彼女は僕の煙草を取り上げ
                                    美味しそうに煙を吹かせた
                                   酔いどれた僕がギターを取った時だけ
                                  気怠そうに云った

                                 ね
                                音楽好き?

                               僕は黙ってギターを弾いた
                              しばらく聴いていた彼女は
                             そっと歌ってくれた
                            ピンクフロイドの「あなたがここにいてほしい」
                           そして僕と赤い花は友達になった

                          皆がいつも不思議そうに尋ねた
                         どうして赤い花がお前とだけ歌うんだい?
                        と
                       赤い花はいつも一人きりでギターを抱えて歌っていた
                      舞台に人の気配がするとそっといなくなった
                     だから
                    彼女が僕の伴奏で歌う光景はたぶんめずらしかったのだ
                   ビールを飲み煙草を吹かし
                  君は僕が酔いどれて滅茶苦茶なコード進行で即興演奏すると
                 悪戯な詩を紡いで歌った
                飽きることなく何時間も僕等は演奏を続けた
               終わらない歌
              永遠を想った

             最後に君に会った時
            赤い花はこう呟いた

           あなたはもう行かなくちゃ。

         何処へ?

        此処以外の何処かよ

       どうしてさ?

      どうしてもよ。

     なら君も行こう。一緒に。

   赤い花は優しく哀し気に告げた

  此処に私は残るの。
 あなたはもう行かなくちゃ。

  僕は途方に暮れた
   
   どうして?
    僕は君といるんだ、ずっと。

     永遠は来ないのよ。あなたはあなたの世界に行き
      私は私の時間に生きるの。
       それはもう決まったことなの。

        時季外れの店の風鈴が鳴った

         あなたが寂しい時には想い出して

          私が歌っていることを
    
           僕は永遠に憧れるけれど永遠を信じない

            長い時間が流れ

             いつか僕は涙さえ忘れた

              君の声を忘れた

               ただ

                季節外れの風鈴の音だけが記憶に残った


                 永遠は何処にあるの?
                  ハムとレタスのサンドウィッチをほおばりながら少女が尋ねた

                   たぶん

                    たぶんあの深い井戸の底だよ
  
                     其処に鳥の化石が眠っているんだ

                      飛べなかった鳥の

                       記憶の化石

                        風がたなびく

                         緑の草原で

                          いつまでたっても止め切れない

                           煙草に僕は灯を点けた

                            友よ

                             いつだって

                              いつまでも




















       
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

天体観測

2024-04-11 | 
消えない世界を想い
 緩衝地帯に打電する信号の様に
  それは赤でも無く黒でも無かった
   深夜零時に降る雨は
    優しく魂を包み込む
     綺麗なワインの赤を零し
      カーペットに赤い溜りが出来るのを
       ただ黙って眺めているのだ
        繊細さを気取った悪癖に於いて   
         消えない世界の
          消えないパレード
           野良猫達が空き地に集い
            すっとんきょうな声で歌った

            パレードはあの空の向こう
             そこでまた始まる
              さあパレードだまた始まる
               始まりはいつも夜の向こう
                いつもの広場

                広い公園の
               水の無い噴水
              赤い林檎を齧る
             薄っすらとした霧の夜
            断罪する君の赤い舌
           黒いこうもり傘が
          強い風であっけなく壊れた
         信号は届かなかったのだろうか?
        丸い眼鏡を外し
       ぼやけた空間を見渡した
      綺麗な嘘
     曖昧な現実
    不本意な果実
   熟れた真夏の午後
  憧れた静かな微笑
 僕の知らないお話
ただ安らかに

 土曜日の夕方は幸せだった
  ランドセルを処分し
   誰かの影が伸びるある種の時間
    それを想った
     其れを想った
      絵画の風景に依存し
       現実をあざ笑った午後
        現実らしい実態を伴った事象に
         やはり叩きのめされるのだ
          いつだって
           パレードを待ちわびた
            
           展望台から眺める天体に
            少しだけ慰められた想い出
             もう忘れてしまいそうな神話の儀式
              ね
               もう少しだけ飲もう
                ソーダー水にウイスキーを垂らして舐めた
                 歌われた事の無い歌を歌おう
                  望む
                   空から堕ちた具象の様に
                    仮装した羅列が落ち続ける事を

                    「ヨコハマの波止場から
                      船にのって
                       異人さんに連れられて
                        いっちゃった」




                    ちりん


                   風鈴の音がした


                  まるで何かを想い出したかの様に


                ちりん




              いつかの天体観測




           









コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする