眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

赤い花

2024-06-22 | 
凝縮させた記憶の場所に
 赤い花が咲いた
  如雨露で水をかけ
   しばらくぼんやりと煙草をふかした
    庭園は世界の果て
     懺悔した我々の密やかなる夢 
      君が残し
       僕が受け継いだ意思の下
        誰にも聴こえない歌を歌った今日と昨日と明日
         古臭いギターケースから楽器を出して
          哀しいけれど少し歌った
           ラムネの甘ったるい記憶
            風鈴がちりんと鳴った

            赤い花
         
           君はあの時代そう呼ばれ
          ふてくされた表情ではっか煙草を咥え
         つまらなさそうにギターを弾いた
        僕はグラスのウイスキーを舐めながら
       こんな時間が永遠に続くといいと想った
      このままが
     このままが
    真夏の昼下がり
   風鈴の歌

  ねえ
 僕らは十年後にどうしているだろうね?

ぼんやりと酔いのまわった頭で僕は彼女に尋ねてみた
  
 赤い花は珍しく優しい声で答えた
 
  あたしは赤い花のままだわ。

   いつまでもね。

    僕は?

     あなたはたぶん名前を忘れるわ。

      そしてあたしの顔も髪型も影の形も忘れるの。

       どうして?
        君のこと忘れるはずが無いよ。
         それに僕は君のそばにずっといるんだよ。

         赤い花は可哀想に僕を見つめた

          あたしはこの場所に残るわ。
           あなたは此処から旅立っていくの。

            僕だって何処にも行きはしない。
             この場所に残るよ。

             決まりなの。
              あなたの十年後はこの場所ではないのよ。

               風鈴が哀しくささやいた

                ちりん

               哀しい時には歌って。

              それで哀しみを分かち合えるわ。

             僕は残ったウイスキーを飲み続けた

            永遠はいつまでたっても訪れなかった

           時代が変わり世界が通りすぎ僕は縁側でビールを飲んでいる

          スピーカーから戸川純の歌が流れた
   
         「蘇洲夜曲」

         泣きたくなる青い空の下

        赤い花が綺麗に咲いた













 

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2 コメント

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Unknown (まかろん)
2022-05-12 04:52:40
今日は。
今回も素敵な詩ですね。
 
>如雨露で水をかけ
>しばらくぼんやりと煙草をふかした

冒頭2行を読んでそれからこの2行で
心をつかまれました。

なんでしょう、当たり前のことを
当たり前に書いただけのはずですが、
匂い立つような気だるさと登場人物の情感を感じます。

もちろんこの2行だけじゃなくて…

こんなに説明できなくて
拍手を送りたい詩書きさんは初めてです。

ぜひまた作品を読ませてくださいね。
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Unknown (sherbet24)
2022-05-12 19:21:56
まかろんさんいつも丁寧に詩を詠んで下さって本当にありがとうございます。少しでも僕の世界が気に入って下さるととてもとても嬉しく想います。まかろんさんも物語を紡がれる方だからこんなに丁寧に詠んで下さるのでしょうね。応援ありがとうございます。またお暇な時にふらりと立ち寄って下さると嬉しいです。
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