眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

パスタとワイン

2024-07-12 | 
僕は僕で或る事に嫌悪するんだ
 僕には僕自身が分からないし
  僕で或る存在価値を少しも見出せないんだ

  窓際ではっか煙草に灯を点けて
   君は呟き存在の虚無と孤独について
    ぽつりぽつりと語った
     雨が降り出した午後
      窓辺から街の風景を眺めながら
       僕等は煙草を吸った
        景色の重く垂れ込めた雲の下の街角は
         誰も知らない街角だった
          いつか君が歌った街角の様に
           絶望と虚無が訪れたのは
            何もかもが上手くいくと錯誤した夜の後に訪れた
             哀しみの淵で
              僕等はグラスのスコッチを胃袋に流し込んだ
               君の長すぎる前髪を黙って見ていた

               もし僕が君の存在を必要としても
                君の存在価値は見出せないのかい?

                僕の言葉に苦笑しながら君は答えた

               僕もあんたも似たもの同士なんだ
              二人とも壊れ物なんだよ
             世界は壊れ物に酷く冷淡なんだ

            壊れ物

           暑い夏の訪れと共に
          僕は庭に椅子を用意し
         とっておきの葉巻を咥えジントニックを飲んだ
        青い空の下
       太陽のじりじりとした暑さで
      脳と思考と精神を消毒したかった

     少女が大量のパスタとワインの瓶をテーブルに運んだ

    大抵の自己嫌悪はね
   おなかいっぱいパスタを食べてワインを飲めば消えていくのよ

  本当に?

 そう。経験則にもとずいてね。
星座占いによく似ているの。

 大量のぺペロンチーノを食べながら僕は不思議に想った

  ねえ、
   どうして僕が自己嫌悪に陥ってると想ったの?

    分かるわよ。
     もうあなたは三日間眠っていないし食事も取ろうとしなかった。
      私がどれほどあなたの事心配したか分からないでしょう?

       ごめん。

        やっとそれだけ口にして僕はチリ産のワインを飲んだ

         ね、
          哀しいことでもあったの?

          少女が心配そうに聞いてきた

           たぶんね。

            僕は僕自身の存在意義を見出せないんだ。

            少女がくすりと微笑んだ

           食事が美味しくてお酒がたっぷりあって
          この空はとても青いのにあなたはどうしてそう想うの?

         あなた、私の事大切に想う?

        少女の茶色い瞳が僕を覗き込む

       もちろん。

      じゃあそれだけで十分だわ。
     あなたの存在意義は証明されたわ。

    僕は急に泣き出したくなった
   あの時君に僕が少女の言葉を云っていたならば
  君を永遠に失わなくてすんだのだろうか?

 私もあなたを大切に想うわ。

そう云って少女は僕の頭を撫でた

 大丈夫。
  大丈夫。

   少女はそう呟いて僕の長すぎる前髪を撫でた
    彼女にそう云ってもらえると
     人生の全てが大丈夫な気がした

      美味しいものをいっぱい食べて 
       美味しいワインをがあればきっと世界は幸せなのかも知れない

        世界はそう悪くないわ。
 
         僕は僕自身が分からないんだ

          君が耳元で呟いた

           大丈夫。

           少女が呟いた

            大丈夫。

























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