乗った後の景色

電車・気動車・バスに乗ることが好きな乗りマニアによる旅行雑ネタブログです。

野柳と第二原発(前編)

2011-07-15 | 台湾
 前回台湾第一原発を見物した話のつづきで、今回は第一原発からバスに乗って東へ向かいます。第一原発前から海岸沿いの省道2号線を13kmほど進むと第二原発(第二核能発電廠・新北市万里区)があり、原発から直線距離で3kmのところには「野柳風景区」という観光地もあるのでちょっと寄ってみようという気になったわけです。

 第二原発の最寄バス停「臨海橋」は淡水~三芝~石門~金山~野柳~基隆とバスが続くうちの金山と野柳の間にあります。バス停を降りると山側の目の前に第二原発の敷地がひろがっていて、その入口近くには「北部展示館」という原発のPR館があり無料で見物できるというのでこれに入ってみることにしました。北部展示館の公式サイトを見ると日本の博報堂がプロデュース・乃村工藝社がディスプレイ設計・守谷商会が展示設備を施工とあったのでそんなところも興味がわくところです。


 中に入ると正面にまずロボットみたいなやつが目に入りました。「原子機器人」だそうです。こういう「原子力→輝く未来→ロボット」みたいな高度成長期だか万博っぽいヤツって見ているとやがて悲しき、みたいなわびしさがありますね。


 のっけからしんみりしつつ進むとエスカレータが左右対称に配置され、奥の真ん中には堂々たる原子炉の2分の1模型が目に入ります。なんだかご本尊みたいで手を合わせたくなる感じです。


 配電の展示を見ると台鉄の画像が自強号じゃなくて電機牽引の復興号でした。渋いチョイスですね。


 台湾に3ヶ所ある原発はみごとに北と南に寄っています。


 世界の原子炉の数です。日本の運転中の原子炉の数は56とあり実際より2つ多いのは浜岡の1・2号機(2009年運転終了)のデータが反映されてないからでしょうか。勘定のうち福島第一が「運転中」ということになるのは仕方ないにしても悪い冗談のようです。


 「わが国の原発は西側国家が設計した軽水炉を採用しているから安全です」という説明書きは日本でもおなじみの(?)「チェルノブイリと違う」という主張でしょうか。スリーマイルや福島の例もあり違うなら違う事故が起きる可能性があるだけじゃんと思ってしまいますが。「原爆のように爆発しないのはアルコール度の低いビールが高粱酒のように燃えないのと同じリクツだから」というのは台湾らしい例えで面白いところです。


 お次は原発PR館につきものの(?)「石油がなくなるぞ」展示です。発電だったら石炭や天然ガスをまず出さないとと思うのですが。

 こうやって見ていたら以前見物に行ったことがある静岡の浜岡原発内にある「浜岡原子力館」を思い出してしまいました。富士山を例えに出す辺りが静岡県らしさあるいはニッポンらしさでしょうか。


 放射線なんて原発がなくても浴びてるんだよ、という展示です。自然界の放射線はどうにもならないしレントゲンやCTスキャンは医療のために仕方なく浴びるわけだけど、だからってなんで電力会社が人に放射線浴びせていいわけ図々しい、と余計な疑問を思い起こさせちゃう気がしますが。

 
 ジャガイモの芽が出ないようにしたり植物の品種改良に利用したりと放射線は生活に役に立ってるんだよ、みたいな展示です。原発って放射線を利用するために放射線出す装置だったっけ、とかこういう関係ない話を持ち出されても「だから何」という気がします。論点逸らしにはなるのでしょうか。

 ちなみにこれの「浜岡版」はこんな感じです。


 ここのはウラン235に中性子をぶっつけて核分裂を起こさせるというなかなかシュールなゲームがありました。


 館内にはミニシアターがあり、展示を見終わると立体アニメを見せてくれます。こういう客寄せのエンターテイメントに凝るところなんかも浜岡や(今はなき)渋谷の電力館と似ているなあと思いました。


 日本の原発と同じようなロジックの繰り返しはさすが日本各社によるものというべきでしょうか。その中で浜岡と違っていて「おっ」と思わせられたのがこれです。

 ごく小さな展示ではありましたが、最悪の事態、つまり事故で放射性物質が外界に出てしまったときの計画について書いてありました。たしか浜岡は「事故があっても外に影響があるようなことはない」という前提だけで、出ちゃったときどうするかにまで踏み込んでなかったような気がします。(もし見落としていたらごめんなさい。)破局的な事故が何度も起きてしまっている以上何よりも事故の時どう逃げるか逃がす予定かをこれでもかとデカく詳しく展示・説明してこその原発PR館ではと思いました。

 長くなったのでここまでを前編とし、続きは後編とします。

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