乗った後の景色

電車・気動車・バスに乗ることが好きな乗りマニアによる旅行雑ネタブログです。

台北の反原発デモ(後編)

2014-04-29 | 台湾
(前編の続きです。)
 屋台の誘惑に負けソーセージなど買い食いしているうちにデモ行進が出発します。広い通りが埋め尽くされているだけにかなりの迫力ですが、流れに入ってみると特に行列などを作るわけではなくわらわらと進んで行くだけの気楽なもので、道路が広く各自マイペースに歩ける余裕があり割とのんびりしたムードです。そのうちに「終結核四!」(核四は建設中の第四原発のこと。)「還権於民!」の掛け声が上がり始めデモらしくなります。


 子供連れ、あるいは犬を連れた参加者も少なからず混じっていました。

 よく見かけたのが福島第一原発事故をうけて作られた「ノーモア・フクシマ」の旗というか垂れ幕というかで、これはこのデモ以前にも高雄の商店街埔里のバスターミナルという街角の意外なところで掲げられているのを見かけたことがあります。ということはかなりの数作られたのでしょう。カップルや友達同士、家族お揃いでマントのように羽織る人たちもそちらこちらにいました。


 のんびりしたムードとは言え要所には警察が並び睨みをきかせています。


 台大病院前を通るときはお静かに、と反原発ウサちゃんからのお願いがあり一旦掛け声が停止します。静かになった沿道ではイチゴが売られているのを見て買う参加者もいました。


 病院前を抜けると掛け声が復活し、群衆は一路台北駅を目指します。


 デモの終着予定地になっている台北駅が見えてきました。この辺りから「馬英九下台!」(馬英九総統やめろ)という掛け声が加わりややヒートアップします。


 台北駅前の忠孝西路は参加者で埋まっていました。東京だったら新宿のアルタ前や渋谷のハチ公前より広いところがデモに完全占拠されるようなものでしょうから驚かされます。


 デモ中はバスが迂回運行になるため停留所にはその旨の貼紙がありました。忠孝西路を直進する系統が公園路に迂回しています。


 迂回していくバスを見ているうちにどんどん人波が押し寄せ、立ち並ぶ警察は参加者の拍手の中撤退してしまいました。デモの人波は台北駅前を過ぎた先の中山北路との交差点まで占拠しバスの迂回先も中山北路に変わります。こうした動きにも臨機応変な対応をしているようで大きな混乱は見られません。


 交差点をくぐる地下道もクルマが通れなくなっているのでここぞと記念撮影を始める人たちもいます。


 地下道の上では「座ろう座ろう!」という声が飛び交い若い世代を中心とした座り込みの場になっていました。参加者全体は見たところ老若男女万遍なくですが、こと活発に動き回る役割に若い世代が目立っていたのが印象的です。


 この交差点に面した酸梅湯(甘酸っぱい飲み物)と餅(中華パイ)のお店は大盛況で飛ぶように売れ大忙しでした。デモの終着点となれば小腹が空くころですから絶妙な立地ということになります。時ならぬ「デモ景気」に沸く様子につられて餅を買ったところで私は時間切れとなりデモ見物を終えました。この占拠は人数は減りつつも翌朝まで続き最後は放水によるひどく暴力的な強制排除に至ったそうですが、馬総統側は第四原発の建設凍結を表明しとりあえず譲歩の姿勢を見せたというのでデモの成果はあったわけです。


 台北では先月から今月にかけて「反服資」運動で学生と市民が立法院すなわち国会を20日以上も占拠していた直後で、ひょっとしてデモに対し厳戒態勢ということもあるかもと思っていたため買い食いしながらのほほんとヤジウマできる余裕があるデモの雰囲気に拍子抜けしました。もっとも大人数が集まっているときに高圧的に規制して怒りを買いより大規模になっては困るわけであまり手荒にもできなかったのでしょうけれど。ともあれ真摯な人々の姿にひたすら感心させられるひとときでした。
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台北の反原発デモ(前編)

2014-04-28 | 台湾
 台湾のホテルで朝刊を見たら各紙とも一面トップが廃核遊行すなわち反原発デモの話題で埋まっていました。


 デモの場所と時間が地図付きで載っているのでなんだかレジャー系イベントの案内みたいな感じです。ということは朝刊を見てデモを知り行く気になるという人が結構いそうですね。私も幸い時間があったので見物に行ってみることにしました。


 デモの出発点最寄駅はMRT台大病院ですが、大イベントと考えれば混雑するのではないかと思い裏側にあたる西門から歩くことにします。とりあえず「鴨肉扁」という名前は鴨でもガチョウ料理の有名店でガチョウビーフンを頼み腹ごしらえです。


 西門から二二八公園に向かっていくと警察がバリケードで総統府方面に向かう道路を封鎖しものものしい空気になってきました。


 二二八公園の一角に人だかりが見えたので近づくと、台湾の野党第一党「民主進歩党(民進党)」の前主席蔡英文氏がいて報道陣が取り囲んでいます。(民進党は反原発の立場)


 デモ出発点に近づくと人出がすごくなり、さらには露店がいくつも出ているのでちょっとびっくりしました。確かにせっかく人出がわかっているなら商売しなければもったいないし参加者も路上にいれば何か飲み食いしたくなるわけで双方助かるうまい図式に感心です。(移動トイレが設置されているのでその方面も安心でした。)


 飲み物にアイスクリーム、ソーセージに焼きイカ、揚げパンなんかはすぐに見慣れてしまいますが、イモとか落花生、ニンニクを売っているのを見ると驚くというより心配になります。買ったらデモ行進するとき文字通り重荷になりそうですけれども。水はボランティアが無料で配っていました。暑い台湾だけにデモなどイベントの給水対策は重要と思われます。


 というわけでデモの出発点「ケタガラン通り(凱達格蘭大道)」に着きました。総統府(植民地時代は台湾総督府だった建物)前に延びるデモや集会御用達という感じの道路です。通常かなり広く見える路上はテントが張られ人で埋まり大きい広場だか公園のように見えます。(この日の参加人数は主催者発表5万人・警察発表2万人)


 反原発を支持する層には「台湾独立」を支持する層もいくらかかぶっているのでその旗も多く立っていました。確かに原発事故で国土を失ったらそもそも独立などという以前の話になってしまうわけでなるほどというところです。


 暗くなるとこのまま夜市になりそうな雰囲気というのか、何を見に来たんだかよくわからなくなってきたところでデモ出発の時間になります。


(後編に続きます。)
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