「基地が集中し、事件事故でいつ犠牲者が出るかもしれない不安、不平等な地位協定は変わらないままだ。」
「基地の整理縮小も「負担軽減」という言葉が空(むな)しく響く。「世界一危険」と言われる普天間飛行場も移設は約束されたが、県内移設が条件とされて撤去されないまま。」
「危険が変わらないどころか過酷さを増した。それゆえに基地を拒む県民の思いはより強固になっている。翁長雄志知事は国連人権理事会で「沖縄の人権、自己決定権がないがしろにされている」と訴えた。」
少女事件を機に基地の問題を正面から問う沖縄に、真摯(しんし)にこたえる努力を続けたい。この問題は、沖縄県民の問題であるとともに、日本の政治的矛盾を最も先鋭にあらわした政治軍事問題です。アメリカ政権、アメリカ軍に主権を渡し、その指示のもとでしか行動しない安倍、山口自公政権の屈辱的な政治姿勢を示しています。普天間基地をめぐる沖縄県民、県知事の主張にこそ正義があり、その抗議行動に背を向ける安倍、自公政権とアメリカ政権の対応に未来はありません。政治的な正当性を欠いた行為は必ず、その報いを受けるでしょう。
<東京新聞社説>少女暴行20年 沖縄の現実は変わらない
米兵による少女暴行事件に抗議した1995年の県民大会から沖縄は二十年の節目を迎えた。基地が集中し、事件事故でいつ犠牲者が出るかもしれない不安、不平等な地位協定は変わらないままだ。
米兵が少女を集団で暴行した事件が積もった怒りに火を付けた。1995年10月21日、「県民総決起大会」の会場になった宜野湾市の公園は八万五千人の大群衆で埋め尽くされた。五〇年代の「島ぐるみ闘争」をしのぐ、今日の反基地運動の原点といえる。
基地があるために犯罪が起きる。大会では、地位協定改定や在日米軍専用施設の七割超が集中する沖縄の基地の整理縮小が求められたが、事件事故は今も相次ぐ。
県警の調べでは、七二年の復帰後から二〇一三年までに、米軍人・軍属、家族の刑法犯は五千八百三十三件。殺人、強盗、放火、暴行の凶悪犯は五百七十件に上る。
性犯罪は、「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」が新聞や琉球政府文書、証言などから調べたところ、大戦末期の沖縄戦の米軍上陸時から一二年までの六十七年間で三百五十件。これは氷山の一角でしかない。地位協定によって「治外法権」が続く沖縄では泣き寝入りになるケースが多い。
少女の事件後、地位協定は身柄引き渡し条項の運用が改められたが、根本は見直されずに過ぎた。日本の捜査権は基地の中に及ばず、罪を犯した米兵が基地に逃げ込めば捕まえられない。
度々の事故で主導権を握るのは米軍側だ。〇四年の沖縄国際大学や、今年八月にうるま市沖で起きた米軍機墜落などでも、地元の警察や海保は捜査できなかった。
基地の整理縮小も「負担軽減」という言葉が空(むな)しく響く。「世界一危険」と言われる普天間飛行場も移設は約束されたが、県内移設が条件とされて撤去されないまま。
政府は名護市辺野古に新基地建設を強行するが、沖縄の人々にとっては半永久的に「基地の島」であり続けよということに等しい。米軍普天間飛行場に垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが強行配備され、沖縄で訓練を行う計画まで進められている。
危険が変わらないどころか過酷さを増した。それゆえに基地を拒む県民の思いはより強固になっている。翁長雄志知事は九月、国連人権理事会で「沖縄の人権、自己決定権がないがしろにされている」と訴えた。少女事件を機に基地の問題を正面から問う沖縄に、真摯(しんし)にこたえる努力を続けたい。