マスコミの使命を自覚し、感じることができる社説です。安倍のでたらめで仰々しい記者会見でしたが内容は全くない解散総選挙のいいわけにはうんざりです。また、消費税、率の引き上げが経済にこれだけの大きな影響を与えることを分からなかった???何を寝ぼけたことを言っているのか??自分が言っている意味が分かっているのかとーーー言いたくなるような言い訳には呆れるばかりです。その一方で2017年4月には消費税率10%にすると断定しました。バカにつける薬はありません。
このような政権、与党にレッドカードを突きつけることが必要です。
<東京新聞社説>衆議院21日解散へ「安倍政治」とう機会に
安倍晋三首相が衆院を解散することを表明した。消費税再増税の先送り決断の是非にとどまらず、二年間にわたる「安倍政治」を問う機会としたい。
二〇〇五年、郵政民営化を掲げて衆院を解散、圧勝した小泉純一郎元首相を意識したのだろうか。
安倍首相がきのう夜、首相官邸で記者会見し、一五年十月に予定されていた消費税率の10%への再増税を一七年四月に延期することを決め、衆院を二十一日に解散すると表明した。
総選挙は十二月二日公示、十四日投開票の日程で行われる。
◆増税先送りを大義に
税は民主主義の根幹だ。首相の「重い決断をする以上、速やかに国民に信を問うべきだ」との説明も理解できなくはない。
ただ今回は増税ではなく増税先送りの決断だ。消費税増税を決めた当事者である民主党も先送りに賛成で、あえて国民に是か非かを問うにしては切迫性は乏しい。政治空白をつくるべきでないとの主張にも一定の説得力はある。とすれば、首相がこの時期に解散する理由は、むしろ別にあると考えた方がいいのではないか。
九月の内閣改造で入閣した小渕優子前経済産業相と松島みどり前法相が有権者への利益供与疑惑で同じ日に引責辞任した。ほかにも閣僚の政治資金問題が取り沙汰され、内閣支持率は下落傾向だ。
来年以降、集団的自衛権の行使容認を受けた安全保障法制整備や原発再稼働など、国民の反発が必至の課題が続く。さらなる支持率低下は避けられまい。
その一方、野党側は選挙態勢を十分整えているとは言い難い。
自民党にとって年内解散の方が議席減を最小限にとどめられる。与党で過半数を維持すれば来年九月の自民党総裁選での再選、政権延命を確実にできる-首相側はそう考えたのだろう。
◆格差拡大は経済失政
増税先送りという「解散の大義」は政権側の言い分にすぎない。私たち有権者は大義に惑わされず、二年にわたる安倍政治を冷静に検証し、貴重な一票を投じたい。
まずは、経済政策である。
消費税再増税の先送りは当然としても、そもそも首相の経済政策「アベノミクス」の内側に誤りがあったのではないか。それを継続するか否かは大きな争点だ。
経営者寄りの政策は企業や富裕層を富ませたが、雇用者の平均年収や正規雇用者数は減り続け、経済格差は拡大している。経済弱者に冷たい雇用、社会保障政策も、消費活動を支える中間層を細らせた。個人消費に支えられる国内総生産(GDP)が落ち込むのは当然だ。消費税増税後の反動減対策である五・五兆円の経済対策の効果も十分でなかった。
経済だけではない。
安倍内閣の二年間を振り返ると特定秘密保護法の成立強行や原発再稼働の推進、歴代内閣が積み重ねてきた憲法解釈を、一内閣の判断で変えた集団的自衛権の行使容認などが、やはり思い浮かぶ。
いずれも国民の反対意見を顧みず、強権的手法で推し進めたものばかりだ。
その一方、国民と約束した「身を切る改革」は手付かずだ。
私たちは、国民代表である国会議員の安易な削減には反対だが、年間三百二十億円の政党交付金や議員一人当たり年間千二百万円が支給される文書通信交通滞在費など、削れる部分はあったはずだ。
国会に加えて、行政改革や歳出削減など政府の「身を切る改革」にも、首相は指導力を発揮したと胸を張って言えるだろうか。
今開かれている臨時国会はどうだろう。
地方創生と女性の活躍推進が最大の課題と言いながら、女性活躍推進法案は廃案となる見通しだ。
政権が重要法案と位置付けていたものを棚上げしてまで解散を急ぐのは、政権の成果よりも解散時期を優先させた証左でもある。
今回の衆院選では、自らの「延命」を優先する首相の政治姿勢も含めて、問われるべきだろう。
◆低すぎる勝敗ライン
今回の衆院選は過去二回のように、政権交代が現実味を帯びるような世論の盛り上がりは感じられない。その中で、首相は「勝敗ライン」を自民、公明両党での過半数獲得とした。政権維持優先のあまりにも低い設定である。
そんな政権側の思惑に動じることなく、安倍内閣の二年間をしっかり検証し、各党が掲げる公約と比較検討することが必要だ。
首相が信を問うとした経済政策はもちろん、私たちの命と暮らしにかかわる社会保障、安全保障や原発政策にも特に注目したい。
各党の公約を整理・吟味し、有権者の選択に資する判断材料を提供するのは新聞の役割だ。その責任を果たすことが、揺らぐ新聞の信頼を回復する道と信じる。