1-3からの続きです。
○ 朝温泉と散歩
○ 温泉がゆ
○ ヘアピンカーブルート
○ ①谷瀬の吊り橋(橋長297m、高さ54m)
○ 南帝陵
○ ②林橋(橋長186m、高さ12m)
○ ③小黒谷の吊り橋(橋長177m、高さ28mくらい)
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○ 朝温泉と散歩
朝起きて、また浴衣姿に下駄を引っかけて、旅館の朝風呂に入りに行きました。
水中撮影用ケースを持っていったので、ひとけのない露天風呂をパチリ。

湯の花が浮いていて、ほかほかあたたまり、外の冷たい空気に一瞬目が覚めたのに、またとろんと眠くなります。

人っ子一人通らない、早朝の帰りの道は、川から湯気がたっていてきれいでした。
撮影しようとして、iPodを更衣所に忘れたことに気がつき、慌てて戻ります。
今回の旅は、はじめてデジカメを持参しませんでした。
iPod touchだけで撮っています。一眼レフの出来栄えにはとても及ばないものの、高性能機種を使いこなせない私には、これで十分満足です。
○ 温泉がゆ

朝食には、温泉がゆが出ました。これまで、温泉宿に何度も泊まって来ましたが、温泉で炊いたお粥を食べるのはこれが初めて。
かすかに硫黄のにおいがただよい、するっと食べられます。
おなかに優しい朝食をいただきました。

○ ヘアピンカーブルート
今日は、お待ちかねの吊り橋デー。一日、十津川の吊り橋巡りをする予定です。
昨日のように長く移動するわけではありませんが、一つでも多くの橋を見たいため、早めに出発しました。
最初の運転は私。駐車場に停められた車は、どれも冷凍倉庫に入っているように凍っており、普段目にすることのない光景に「はぁ~」と驚きます。
もちろん、ピノもかわいそうに、すっかり凍っており、ドアを開けるのも両手の力が必要でした。
エンジンがかかってほっとしながら、日の当たる場所に移動して、しばらく温めます。
今度は大雨の中を走り抜けたように、車の表面は水だらけになりました。

十津川の吊り橋といったら、まずは谷瀬の吊り橋でしょう。
ここを渡らなければ、なにも始まりません。
湯の峰温泉を後にして、本宮や大斎原の横を通り抜け、R168をひたすら北上して一路谷瀬の吊り橋へと向かいます。

画像のように整備された楽なルートが続くのかと思いきや、村に近づくと山に沿ったカーブ道ばかりでもう大変。
対向車も軽自動車でないと、すれ違うのに難儀します。
運転の上手なpinoが隣にいるのでとても心強いですが、「ブレーキをかけるのが遅いよ!」「カーブミラーをよく見て!」と、教習所並みのスパルタで注意され続けます。
ひー、真剣なpinoちゃんこわいー。でもエンドレスヘアピンカーブの方がこわい―。私の運転が一番こわいー!(だめじゃん)

一つのカーブを越えるのも心臓バクバクですが、谷瀬までは結構距離があります。
やっぱり橋に目が行く私。橋がたくさんある村というだけで、十津川はお気に入り。
これはダム湖にかかる、印象的な赤い風屋大橋。

これは小学校の連絡橋。谷中散策中に、車道をまたぐ上野高校の渡り廊下を見上げたことを思い出します。
いいなあ、こういう学校に通いたかったなあ。

お次は、長さ217m、直径4.2mの野尻水路橋。銀色の太いパイプのような橋です。
風屋ダムから十津川第一発電所に向けて水を送るための施設。
橋にもいろいろあるものですね。

「あと30キロ」という看板を見てから、もうさんざん走っただろうと思った頃に「あと16キロ」という表示を見て、(まだ半分も行ってなかったのー)とめげそうになりました。
車しか通らず、外を歩いている人は全くみません。
珍しくも、交通整理をしている人たちがいるなと思ったら、そこが谷瀬でした。
○ ①谷瀬の吊り橋(橋長297m、高さ54m)
精根使い果たし、満身創痍で到着します。
村一番の見どころ。さすがにここには人がいっぱいいました。
こんなに(といっても10数名ですが)人を見るのは、この日初めてです。

駐車場にも橋にも、スタッフがたくさんいて驚きました。
やはり危険だからでしょうか。
それよりなにより、実際にこの目で見る谷瀬の吊り橋は、思ったよりも大きくて圧倒されます。

さて、では渡りましょうか、と、深く息を吸って、度胸をつけてから、歩きだしました。
でもこわいです。結構揺れます。
歩く板の両脇の鉄線からは、下がスケスケ!見えるところが恐怖を誘います。
東京タワーにある、地上が見えるガラス張りの場所。あれの屋外版!屋内の安全なところに私たちはいないー!


長さ297mの、日本一長い鉄線の吊り橋。20人までしか同時に渡れません。
そのため、たくさん人が乗りすぎないよう、橋の両岸から見ている人がいます。

観光用ではなく、生活用のもので、明治22年の水害後、谷瀬の住民たちがお金を出し合って作ったもの。
今でも大切な住民の足で、みんなが大切にしているんですね。
高さ54mは結構あります。河原はキャンプ場になっているようですが、はるか下界に思えます。
これは、高所恐怖症の人は無理でしょう。
私にも、かなりスリリングでした。

300m近くある橋はとても長く、なかなか対岸までたどり着きません。
ここを、地元の人や郵便局員は、バイクで通っちゃうんだそうですからね。慣れってすごい。
ようやく渡りきって、ほっとひと息です。
「じゃあすぐに戻ろう」という気持ちにはさすがになれず、しばらく反対側から橋を眺めながら、緊張しきった心を落ち着けます。
こちら側にも、ベンチコートで完全装備したスタッフが数名いました。みんな寒いのに、お疲れ様です。
ひと息ついてから、今度は橋を引き返しました。
途中で腰を抜かす人や、泣き出す人がいると聞いていましたが、この日は皆さんマイルドに、めいめいに橋を楽しんでいました。

それでも、渡りきって車に戻って「フー」と深い息を吐きます。
いい経験ができました。
○ 南帝陵
「すごかったね・・・」と、リアル十津川吊り橋を渡って、興奮冷めやらぬ私たち。
次の橋に行く前に、途中で表示を見た国王神社をお参りすることにしました。
頭の神様なんだそうです。これはきちんとご挨拶しておかないと。

駐車場に車を止めて、参拝口から下に降りて行きます。
すると、道が二股に分かれました。
下に行く道と、横に行く道。
横の道の先には、鳥居があり、そこになにかが祀られています。
そちらに向かってみると、そこは第98代長慶天皇を葬ったといわれる南帝陵でした。
南北朝時代、南朝の長慶天皇が十津川の上流で命をおとされ、その御首を葬った場所だそうです。
「そうかあ、首をお祀りしているから、頭の神様っていうことなんだあ」と二人で納得し、「頭がよくなりますように」「これ以上ボケませんように」とそれぞれ祈願して、「これで大丈夫ね!」と安心して車に戻りました。
○ ②林橋(橋長186m、高さ12m)
さて、ここからが、リカ・プリゼンツの吊り橋巡り。
次は、南へ約3kmほど戻ったところにある林橋へ向かいます。
地図の示す場所に行ったものの、すぐに見つけられません。
「あっ、あそこに!」と発見しても、今度はそこへのアクセス道がわからず、うろうろ。
上からのぞいて、見当をつけて、けもの道のような細道を降りて行ったら、運よくたどり着きました。

「うわあ・・・」橋を前に、声を失います。
今渡ってきた谷瀬の吊り橋もかなりスリリングでしたが、そのはるかに上を行くワイルドさ。
つまり作りが簡素なのです。「きゃしゃだね・・・」
そして、長ーいです。谷瀬も相当ですが、これは横広感があります。

もちろん、歩いてみました。
谷瀬ほどではありませんが、ここもなかなかの長さ。風が吹くと、ダイレクトに揺れます。
高さはそれほどありませんが、なにせ簡易仕立てなので、(だいじょうぶかな?)という不安をぬぐい去れません。

ただ、谷瀬もこの橋も、下に流れる川が細く、砂地の方が多いため、それほど恐怖は感じません。

ここには、私たちのほかには誰一人、いません。
周りにブルドーザーがあるので、工事用かもしれませんが、休日なので作業員の姿もありません。

つまりは橋、二人占め状態。
真ん中で、座りこんでみました。

視点の位置が変わると、身体が本能的に身構えるのがわかります。
足をワイヤーの外に伸ばしてみました。
やっぱりこわいー。

最後まで渡りきって振り返ると、吊り橋がゆがんでいます。
まっすぐじゃない吊り橋って、危険だわー!

○ ③小黒谷の吊り橋(橋長177m、高さ28mくらい)
次に向かったのは、貯水池から小黒谷地区にかかる吊り橋。
林道の行き止まりで車を止めます。場所的には、合っているはずなんだけれど、全く見つかりません。
というよりも、水辺が相当下になっている場所なので、上から首を伸ばし、目を凝らして、うっそうとした木立の向こうに橋がないか、探してみます。
すると、ありました!それらしい影が。
ただ、下に降りて行く道が全く見つかりません。
完全な山で、「どうしよう」と途方に暮れました。
しばらく上でウロウロします。いよいよマツミンさんにヘルプする時が来たのかも、と思いましたが、お互いのケータイはつながらず、公衆電話もないような場所です。
聞くにしてもどこか人里(?)へ戻ってからでないと叶いません。
道はなくても、吊り橋はあるので、人が使っているということではあります。
(もしや、土砂崩れなどで道がなくなってしまったのでは?)と考えると、恐ろしい気持ちになりますが、少し降りてみたらそれらしい道が見つかるのかもしれないと、道なき山肌を、滑り降りるように下がってみました。
5m下がるのでも、大変です。どうにも道はないとそこでわかったため、引き返しました。
(もうこれは無理かな)と諦めて、戻りかけたところで、pinoが「ここ、道に見えない?」と言いました。
指差した先は、これまでと変わらず落ち葉に埋もれていますが、注意してみると、たしかにその下に規則的な段があるように見えなくもありません。
「・・・行って・・・みる?」
ということで、別の場所から再度、降りてみることにしました。
そうはいっても、ここも本当に道無き道。枯葉がこんもりと山肌に積もり、一足一足、足場を探りながら進まないと、下の状態がどうなっているのか、目視ではわかりません。
もはや打ち棄てられた道と化してしまったようです。

完全にムリだと思いました。私ひとりならめげてギブアップするところでしたが、意外にもpinoがワイルドさを発揮して、足場を見つけては少しずつ降りて行きました。
そういえばこの人は廃道好きだった…。
あとについて、私も一足一足、降りて行きます。
途中、黄色と黒の細いロープを発見して、「やっぱりここは人が通っていたんだ」と確信を深めます。
命綱のようにつかまりながら。まさにリボビタンDの世界。
ゆっくりと時間をかけて、そろそろと降りて行き、やっとのことで辿りついた先に、目指す吊り橋はありました。

うわあ、やっとのことで、見つけられたわ~。
感動します。橋に名前はありません。
橋の下にはなみなみと青い水がたゆたっていて、その自然いっぱいの美しさは、この世のものではない感じ。
歩きだそうとしたpinoでしたが、「ここは無理。命の危険を感じるから」と、きっぱりリタイヤ宣言しました。
ここまでの相当ハードな道の先導役で、力つきてしまったようです。
では私が・・・と、不思議な力にひきよせられるように、単身歩き始めました。
私は特に怖くありません。麻痺しているのかもしれません。
日の加減でターコイズブルーやコバルトグリーンに見える美しい水面の色に、ペイト湖を思い出します。
そう、ここはカナディアンロッキーに似ているわ。

一人だと話しかける相手もおらず、吹きつける風の音しか聞こえないため、今度友人のライブで一緒に歌う歌を口ずさみます。
We'll stay forever this way~♪
でも緊張のためか、恐怖のためか、そもそも暗記しきっていないせいか、頭が真っ白になって、途中で歌詞がわからなくなりました。アレ?

一人きりで、周りは自然ばかり。もはや、違う世界へと足を踏み入れてしまった気がします。
ああ、彼岸への道を渡っているのかしら。
こんな機会はないからと、橋の真ん中で、動画を撮ってみました。
撮りながら歩きましたが、やっぱり視界が狭められると、こわさは膨れ上がるため、あまり長い時間は撮れませんでした。
ようやく渡り切ります。ほっとしましたが、逆に対岸からは一番離れてしまいました。
もはや、私の所在位置を知る唯一のpinoの姿でさえ、見えません。(昼寝してるのかしら?)
この先には何があるんだろう、と思いましたが、道はありません。
ただ、5名用のリフトがあり、線路は山の上まで続いていました。

どうやら林業関係者が使うもののようです。
打ちつけの板がせり出した場所があったため、そこから声をあげて、pinoを呼んだら、返事が返ってきました。
まだ見棄てられてはいないようです。

ここの場所も、ひとけがありません。
おそらく、春から秋までの間、ここで作業をして、冬の期間は使わないのでしょう。
それで、橋に至るアクセスも、誰も通らないために道ではなくなるのでしょう。
橋を戻って無事pinoと再会できた時には、ほっとして、改めてこわさがこみあげてきました。
それからまた、道なき道をロープを伝って上がっていって。山を再び登るのも一苦労です。
さきほどの場所に変わらずピノが停まっていて、それだけで安心します。
ただ、あまりにこの橋の印象が大きくて、さっき車から降りた時とは自分が何か変わってしまった気がします。
フォースターの『インドへの道』気分です。
とにかくすごすぎました。違う世界に行って帰って来ました。
夢のようでした。この時のことは、今後何度も夢に見そう。
2-2に続きます。
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