風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

トキに会いたい佐渡ヶ島1

2012-11-16 | 中部(甲信越)
○ prologue
○ MAXとき
○ 新潟駅とワールドカップ2002
○ 信濃川河口付近
○ 朱鷺メッセばかうけ展望台
○ 佐渡汽船ジェットフォイル
○ 佐渡島両津港に到着
○ トキの森公園
○ 野生に放したトキ
○ トキ交流会館にて
○ 佐渡グリーンホテルきらく


○ prologue

このたび、佐渡でトキの野生復帰推進状況を学べることになりました。
佐渡ヶ島に行くのは初めてで、ワクワクしますが、かつては島流しの地だった隠岐の島同様、とっても遠いイメージを持っています。
周囲で佐渡を訪れたことがある人は、両親のみでした。

今回の旅のテーマは、トキ。
日本のトキが絶滅してしまった時には、鳥好きとしてとても悲しい思いをしました。
その後、佐渡ではトキが復活しているのか、この目で見られるのが楽しみです。

○ MAXとき



当日朝、余裕を持って家を出たのに、新宿駅のホーム転落事故で山手線は全線停止。
ラッシュ時の事件だったため、車両もホームもパニックになりそうなほど大混雑しました。
佐渡は寒いと思って、着込んできたため、荷物を抱えて、暑くて大変でした。
復旧に思ったよりも長い時間がかかり、東京駅に着いた時には、乗車予定の便は出てしまっていました。



新幹線に乗り遅れたのは初めてのことで、かなりショックです。
その名も「MAXとき」。もたもたしていたら、つかまえきれずに飛んで行ってしまったのね。
次の便は1時間後。乗る予定だった東京-新潟ノンストップではなかったため、時間がかかりました。

初めての佐渡島に一人で渡り、見知らぬ参加者たちと現地集合するという今回の旅程。
初めてづくしで緊張しており、次の便に乗り込んでも、気が気ではありませんでした。
でも、越後湯沢に着いたら、車両内から「わあ~」と声が挙がったので、顔を上げてみると、手前は紅葉の山々、その後ろには雪をかぶった山々がそびえ、青空に映えてそれは美しかったです。



○ 新潟駅とワールドカップ2002

新潟に着き、タクシー乗り場に行こうと駅前を見まわして、(あっ、この辺り、見覚えがあるわ)と思い出しました。
2002年ワールドカップの時に、ビッグスワンまで観戦に来ていたのです。



あの時は、駅前周辺はとにかくありえないほどの人でごった返していました。
試合は「イングランド vs デンマーク」という華やかなカードだったため、東京発の上越新幹線内も、イングランド人のサポーターでいっぱい。
日本人もほぼ全員がイングランドファンで、みんなユニフォームを身につけ、駅前は赤と白でびっしりと埋め尽くされていました。

こっそりデンマークを応援していた私は、国旗のフェイスペインティングをフーリガンに見とがめられないかと、ドキドキしていたものです。
(ベッカムのウルフヘアがあの試合の雨で割れてから10年たったんだわ)と懐かしく街を見まわしました。



○ 信濃川河口付近

新潟は、スキーではよく来ていましたが、駅に降りたのはその時以来。
タクシーで港へ向かいましたが、船の出航までかなり時間があったため、万代橋を渡ってみました。
日本一長い信濃川。河口付近はかなりの大河になっています。
橋のたもとには、新潟日報の斬新なデザインのガラス張りビルがありました。



天気がよく、川にはクルーザーが等間隔で停泊しています。まるでデュフィの絵のよう。





気持ちよく川沿いを散策していたら、「海難救助隊」のグレーの船がありました。



(まあ、必要だものね)と思ってさらに歩いていくと、今度は「監視船」があり、(拉致防止の?)と一瞬身構えてしまいました。



○ 朱鷺メッセばかうけ展望台

河口そばにそびえ立つ朱鷺メッセ最上階のばかうけ展望台に登ってみました。



ばかうけってすごいネーミング!と思いますが、あのおせんべい、おいしいですからね。
展望台からは、とてもいい眺望が望めます。川の向こうには、10年前に訪れた巨大なビッグスワンが日光に輝いて見えました。



大きな橋がいくつもかかる信濃川の太く堂々と流れを見ていると、豊かさな気持ちになっていきます。



○ 佐渡汽船ジェットフォイル

モダンな朱鷺メッセから佐渡汽船乗り場へ移動すると、ぐっとレトロで一気に昭和に戻った感じ。
乗り場には、佐渡金山のパネル紹介がありました。
佐渡は平安期から金銀鉱山が発見され、ここの金に徳川の繁栄は支えられたとのこと。
年に金400g、銀37トンが掘り起こされ、世界の5%の金が取れたそうです。
平成元年に閉山するまで400年の歴史を誇った佐渡金山。
国内最大の金銀山ということで、土肥よりも金華山よりも高い産出量だったことを知りました。



初めてのジェットフォイル。乗り場は古いものの、改札はチケットのQRコードを当てて読みとらせるという、最新のシステムでした。
操縦士のアナウンスが入り、(飛行機みたい)と思います。
時速80キロなのでシートベルトをつける義務があるとのこと。
ジェットフォイルは、海面から浮上して進んでいくものなんですね。
仕組みがよく分からないけれど、ホバークラフトみたいな感じ?

両親が「船なのにぜんぜん揺れないのよ」と言っていたように、本当に揺れずに快適。
普段ならすぐに船酔いしてしまう私も、気持ちよく乗っていけました。
佐渡といったら思い出すのは「砂山」の歌。
「海は荒海 向こうは佐渡よ~♪」
私はこの歌から、日本海を渡るのはとても大変だというイメージを持っていたため、佐渡はかなりイメージ損をしてきたように思います。

○ 佐渡島両津港に到着





新幹線は1時間後の便だったものの、結局2時間半遅れて佐渡島の両津港に到着。
観光協会のホンマさんにお出迎えいただきました。
「大変だったねえ」と温かくねぎらっていただき、なんだかようやくほっとします。
この日は朝8時に家を出て、12時半に佐渡に着く予定が、到着したのは15時。
7時間の行程にぐったり。ロンドンに行けちゃうわ!



乗せてもらったのは、三菱の電気自動車。環境に気を使っているなあと思います。
車道横には巨大な能面モニュメントが立っており、あまりの迫力にうっと声が詰まりました。
この島は順徳天皇や日蓮聖人、世阿弥の配流地で、世阿弥による能文化が発展した場所。
それはわかりますが、ちょっと怖すぎます~。
佐渡の子供たちもみんな怖がっているとのこと。「ライトアップはもっとこわいよ~。」とホンマさん。
それは肝試しレベルの怖さかも。なぜ点灯するのー?

佐渡では若者がどんどん減っていっているけれど、それでもUターンする人は増えているそうです。

○ トキの森公園

ほかの人たちがいるトキの森公園へと連れて行ってもらいました。
公園内にあり、来年4月にグランドオープンする「トキ資料展示館」と「トキふれあい施設」を見学します。
みんなひとしきり見終わったと聞き、あわてて「トキに会いたいです!」と希望して、連れて行ってもらいました。
だってここまできて、トキを見ずじまいなんて、残念すぎますもの。

資料展示館には、最後の日本のトキ、キンの剥製がありました。
全長78cmと、思ったよりも小柄でした。
2003年にキンが死亡した時には、日本産トキが全滅したと大々的にニュースになったものです。
キンという名前は、金山から取ったんだろうと思ったら、餌づけをした金太郎さんの名前に由来しているそうです。
ほかのトキたちも、何羽か剥製となって、生きているかのようにふわふわの白い羽を見せてくれていました。
白い身体に赤い顔。ニッポニア・ニッポンという名だけあって、トキはまさに日の丸の色合いです。

観察回廊から、トキ保護センターの飼育ケージが見られます。
「トキふれあい施設」という名前なので、よく動物園にあるような、うさぎやヤギにさわれるコーナーを思い浮かべて「ふれあえるんですか?」とホンマさんに聞きましたが、「ふれあえないなあ。」との答え。
あれ?
トキは神経質な鳥なので、あまり近くに人は寄れないそうです。
距離が近くなると、固まって動けなくなるんだそうな。
日傘を広げていても怖がるので禁止だとのこと。

それでも「トキに2cmの距離でふれあえる」としているので、どういうことかと思ったら、マジックミラーを使っているからだとのこと。
なるほど、2cmとはガラスの厚み分なんですね。なかなかそんな近くまで来てくれることもなさそうですが。



トキの森には繁殖ケージがいくつもありました。
少し離れた場所にあるものや、比較的近くにあるものなど。
人に慣れたトキは近いケージに、慣れていないトキは離れに入っているのだそう。



思ったよりもたくさん飼われていました。個体数は増えているようです。
繁殖が着々と軌道に載っているのでしょう。
日本トキの絶滅後、中国トキの人工繁殖に成功して、ヒナが育ち始め、今ではセンターは100羽以上のトキを飼育しています。
中国では、トキはたくさんいるのかと思いきや、やはり乱獲によって7羽にまで減り、そこから保護政策と人工繁殖を行って、今では1000羽以上になっているそうです。

顔が赤ではなく、黒いトキがいました。
幼鳥かなとおもったら、「それは黒トキだよ」と教えてもらいます。
黒トキ?そんな鳥がいるんですか?
まったく知らなかったので、驚きました。

施設のオープンに向けて、この環境が問題ないか、黒トキでお試し中だとのこと。
黒トキは中国や東アジア原産で、ニッポニア・ニッポンではないため、珍種ではありませんが、初めて見る私にとっては十分希少種に思えました。

ほかに「ほんわかトキ」もいると聞いて、ほのぼのしましたが、よく聞くと「ほおあかトキ」の聞き間違いでした。
北アフリカ原産で、こちらも絶滅危惧種だそうです。
この際だから(?)、ほんわかトキにしちゃえばいいのに。ホンワカパッパ。

まだプレオープン中なので、敷地内にいる方々はみんな関係者ばかり。
ここでほかの方々と合流しました。他の参加者は、茨城のアンボさんと戸塚のサノさん。それに観光協会の方3名がついて、計6名のグループで動きます。

○ 野生に放したトキ

皆さんと一緒の車に乗り込みます。



山の木々は少し色づいていますが、佐渡ではもう紅葉は終わったとのこと。
「さっきまで、あそこを見学していたんだよ」と、山裾の巨大な黒いドームのような場所を教えてもらいました。
佐渡トキ保護センターの順化ケージでした。
佐渡トキ保護センターといったら、トキの話題になるとニュースで紹介される場所ですね。



そこはヒナの飛翔や採餌の訓練を行い、野性に適応できる状態になったら放鳥する野生復帰ステーションです。
一般公開されていない場所だけに、見学できなかったのが残念。
肩を落としていたら、「でも中にはトキはいなかったよ」と、ほかの参加者お二人が慰めてくれました。
たしかに、トキがいるところに人がどやどや入っていったら、トキはびっくりして固まってしまいますからね。



ドライブ中に偶然、トキたちが飛んでいるのを見ました。4、5羽がまとまって飛んでいます。
トキは群れる習性があるそうです。
ケージの中だけでなく、すでに野生に放しているとは知らなかったので、感動しました。
今までに日本で放鳥されたトキは78羽。うち佐渡島で確認されたのは、2010年段階で19羽。
富山と新潟にも1羽ずついます。
稲刈り後の秋が一番見つけやすく、観察に向いている季節だそうですが、見られたのは本当にラッキーなことです。



しっかり、羽先のほのかな紅色も見られました。
うわあ、一時は絶滅したけれど、再び佐渡はトキの舞う地になったんですね。
胸が熱くなりました。

○ トキ交流会館にて

トキ交流会館で、トキに携わる「NPOトキどき応援団」「(社)佐渡生きもの語り研究所」のトップの方々にお会いしました。
パワポで活動プレゼンをしていただきます。

放鳥を初めて5年になり、ひなは8羽巣立ったそう。

おなかが濡れる深さでは餌をとらないトキは、サギのように川にはおらず、もっぱら田んぼで餌を採るのだそう。
10cmのくちばしの先まで神経が入っているので、餌を探って採るのに適しているそうです。
トキのすみよい環境を作ることを目的に、里山や水田、生態系の環境整備に努めているという活動について教えていただきました。
耕作放棄地は里山崩壊につながっていきますが、田んぼを守っていくのも並大抵のことではありませんね。

人と環境に優しい農業の実践活動が紹介されました。  
トキを呼ぶためには、生態系を自然の形に戻すことが必要となります。
農薬を制限するなど、農家はさまざまに配慮を重ね、さらに田んぼの生き物調査をして、環境作りに努めています。
ラインセンサスは大がかりな試みなので、ボランティアの助けも必要となるとのこと。
環境重視で手間をかけ、丁寧に作られた佐渡のお米コシヒカリは、認証米とされています。

2015年ごろには、小佐渡(佐渡南部)東部に60羽のトキを定着させる目標を掲げて、努力を重ね、環境整備に努めているそうです。

話を聞きながら、おもむろにおなかがグルグル鳴り始めたので、周りに響きやしないかとあせりました。
この日のランチを食べ損ねましたが、遅れた心配のあまり食欲がわかずにいたのでした。
でも、ようやく合流できたので、安心しておなかがすいてきたようです。
佐渡のコシヒカリなんて、おいしそ~う。

○ 佐渡グリーンホテルきらく

5時にもなると、辺りはすっかり暗くなります。
宿は佐渡グリーンホテルきらく。
私は女性ということで、12畳部屋に一人となりました。
温泉旅館なのに一人泊なんて、初めてでさびしーい。



部屋には、トキじゃなくてタンチョウの絵が飾られていました。
それはどうかと思いましたが、ここは鶴女房(夕鶴)の物語の里なんだとか。
そちらももっとアピールしてもよさそうです。

ほかに、牛の置物を発見しました。
これは、天満宮にある道真の牛では? なぜここにいるの…?
不思議に思いながらも、念入りに撫でておきました。



食事前に、宿の通り向かいにあるはなれの露天風呂に入りました。
ここは椎崎(しいざき)温泉。
気持ちいいお湯につかりながら、絶景がのぞめるはずですが、すでに外は真っ暗で、目の前は湖なのに対岸の明かりしか見えません。
両津湾と砂州で分かれる加茂湖は、新潟県で最大の湖。
去年訪れた奥只見湖もかなりの面積でしたが、そこより大きいんですね。 



夕食時に、3人で合流しました。
豪勢な土地の食事がずらりと並びます。
新鮮なお刺身にカニ、蒸し牡蠣におけさ柿。ほとんどこの日初めての食事になるため、3食分を食べようとはりきったけれど、それでも食べきれませんでした。



カニ!カニ!カニみそ~!



「カキをむく時にはこのナイフを使って下さい」と言われたので、てっきり牡蠣の殻をはがすものかと思いきや、柿の方とわかって、3人で笑いました。
だって同じイントネーションだったんですもの。考えてみれば、牡蠣と柿が並ぶなんて、なかなかないことです。



サノさんとアンボさんは、佐渡のお酒「北雪」で乾杯しました。
二人のジェットフォイルには、玉三郎とTVカメラも乗っていたそう。
玉三郎は佐渡鬼太鼓の鼓童のプロデューサーをしているそうです。
玉様を見そびれたわ~。
ちなみに両親が以前訪れた時には、曽我ひとみさんと同じジェットフォイルだったと言っていました。

いろいろなお話をして、9時半に解散。
今度は内風呂に入りに行きました。
どちらのお風呂も一人きりで、(この日の女性客は私だけなのでは?)と思ったほどでした。

遅刻したために緊張した一日。でも野生のトキが悠々と佐渡の地を舞い飛ぶ様子を見られて、感動しました。
あのひとときのためだけでも、佐渡までやってきた甲斐がありました。

佐渡やトキの資料をごっそりずっしりもらったため、目を通してお勉強していたら、夜更けになってしまいました。
TVをつけたら、「アド街」が深夜1時半頃にやっていました。遅いわー。どうやら一週間遅れの放映のようです。

2日目に続きます。


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