風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

愛媛-大分、海の道 1-(2)

2015-11-16 | 四国
その1からの続きです。
○ お遍路さんのお寺

道後温泉から1キロほど離れた場所にある、石毛寺に向かいました。
四国八十八カ所のお寺を参拝するのは、ここが初めてです。
てくてく歩いて緑深い境内に入ると、うっそうと生い茂った木々の間から突然謎めいたパビリオンがぬっと姿を現したので、(わっ!なに!?)とびっくりして後ずさりしかけました。



スペインにある、ダリ美術館を思い出したほどです。
一見かなり怪しげですが、ここはトンデモ寺ではありません。
長い歴史を持つ古刹です。



鐘楼の鐘を打ってから、参拝します。
境内には、さすがにお遍路さんが大勢いました。
三重塔の軒下では、外国人が瞑想をしていました。



○ 裏の洞窟へ

本堂をお参りした後、裏手に洞窟への道を見つけました。
情報がないため、どんな感じか全くわかりませんが、行ってみることにします。



中に足を踏み入れると、真っ暗でひんやりとしており、とても静か。
一気に別世界に入ったようで、本能的な恐怖感ですくみ上ります。
ぼんやりとした明かりはあり、かろうじて方向はわかりますが、出口がどこなのか闇に紛れて見えず、どれほど長いのかわかりません。
なにか物音がしたら響きそうな場所なのに、とにかくしーんとしています。
先が全く見えない洞窟の中には、私のほか、誰一人いません。
本堂前の境内には、お遍路さんが大勢いたのに、みんなここには来ないんでしょうか。

あるいは、他の人には見えない、私だけに開かれた洞窟にうっかり入ってしまったとか?
永遠にここから出られず、さまようことになったりして?
いろいろと考えて、ゾーッとします。



いえいえ、ここは修行のための洞窟。怯えていてはいけません。
前に入った、大船の田谷の洞窟を思い出しました。
あそこも暗かったのですが、ここほどではないし、ろうそくの明かりを持って進むので、まだましです。
ここは全くなにもありません。光の射し込まない場所なので、暗闇に目が慣れることもありません。
戻ってくる人とぶつからないように、左通行になっています。
そのためか、道の真ん中にはお地蔵さんの像が等間隔に置かれています。
それが、薄明かりの中で見ると影を落としてこわいー。



真っ暗なところでは、お地蔵さんにしょっちゅうぶつかります。
それもこわいー。
お地蔵さんは一体一体、頭巾をかぶっていますが、それは接触時のダメージを和らげるものなんじゃないかと思えてきます。

途中、大きな影があり、ふりかえって仏像とわかりました。手を伸ばして触れてみると、石だとばかり思っていたその像はどこかふわっとした感触で、えっ、なに!?とおびえます。
おそらく布を巻き付けていたのでしょう。
地下水が染み出して、そこかしこが濡れている静かな洞窟。じめっとした中で通路の奥から冷たい風が吹いてきます。
これは、かなり怖い体験です。
一人で入るんじゃなかった~。まだまだ先が見えないほど長いなんて。
何度も後ろを振り返ってみますが、誰も来る気配はありません。



と、その時道の先からなにか気配が近づいてきました。
ひたひたと足音がするので、人のようです。でも、暗くて視界が悪いため、どんな人なのか全くわかりません。
暗い中で、顔も見えずにすれ違う人間。
緊張していると、向こうの方から「こんにちは」と声をかけてくれました。
女性の声でした。
ほっとして、「こんにちは」と返したら、自分でも驚くような情けない声でした。

人間にようやく会えたので、「この道、暗くて怖いですね」とか「あとどのくらいかかりますか」とか、話しかけたかったのですが、顔が見えない正体不明の相手には声をかけずらく、結局そのまま、何も言わずにすれ違いました。
もしかしたら、人間でなかったかもしれないしね…!ヒエ~~。

○ びっくりオレンジ奥ノ院

ようやく小さな明かりが見えてきたと思って進んで行ったら、急に道が終わって日光の下にいました。
外に出てみると、普通の車道沿いの道。
でもうまく見えないようになっており、外から見ても洞窟があるなんて分からない状態です。
洞窟の上には「地底マントラ」と書かれていました。どうやら正式名称のようです。



道路の向こう側には、奥の院への看板がありました。
上から見下ろしているのは閻魔様?Welcomeって書いてるの?
50mと書かれた表示を見て、すぐそこだからと思って、門をくぐって行ってみました。
草ぼうぼうの道を進むうちに、あれ、なんかすごいものが見えてきたけど…?
そこには見たこともない光景が広がっていました。



えー?なにこれー!?これが奥ノ院?本当に?
普通、奥ノ院といったらひっそりとたたずむ小さなものですが、ここは完全に異空間。
金色に輝く宇宙人の乗り物のようです。
愛媛だからオレンジ色なんでしょうか。(違う)
暗い洞窟を抜けた直後にキンキラキンのパビリオン。
ついていけずに、頭がくらくらしてきました。



仏足石があり、きれいな石が埋められているなとのぞき込んだら、それはビー玉でした。
アート作品のようです。まあ、仏教美術もアートですけれど。
横には修行中のガリガリにやせたブッダの像などが置かれてありました。



辺りに虫がブンブン飛んでいます。鬱蒼としているからでしょう。
先ほどの道に戻ると、3人の人がちょうど洞窟から外に出てきたところでした。
無性に人恋しくなっていたので、私から寄っていって「すぐ先に奥の院があるので、行ってみたらどうでしょう?」と勧めると、いまいち通じていないような顔つきで「OK」と答えたので、おやと思って英語で聞き直してみたら、日本人ではありませんでした。
台湾の人たちだったので、「あとちょっと進むと、けったいなものがあるけど、見ておいたらおもしろいかも」と英語で言い直して、再び洞窟に入ります。



反対側からの洞窟の入り口。
あれがあってこれがある。確かにその通り。

○ 行きもこわごわ、帰りもこわい

やって来た道を戻っているので、行きよりも余裕が出てもいいはずなのに、どういうわけかさっきよりもなんだか怖くなっていました。
緊張がゆるんでそろそろ歩きをやめたのか、行きよりもお地蔵さんによくぶつかってしまいます。
見えない状態での思わぬ接触って、気持ちのダメージが大きいですね。
痛いよー。腿が青タンになっていなければいいけど。



細道から、さらにうなぎの寝床のような細い道へと入っていきます。
行き止まりの格子の向こうには、仏像が安置されていました。
洞窟内が曼荼羅のように金剛界と胎蔵界に分かれているようです。
でも、暗闇の中で出会う仏像は、こわいです!なにがどうなるかわからないし。
(こちとら丸腰なんだから、一刻も早くに明るい世界に返して―!)と、涙目になってきます。

すると、またもや突然洞窟は終わり、一人ぽつんと外にいました。
あの世へ行きそうになって冥界への道をうろうろしていたけれど、とうとう現世に戻ってきたような気分。
ああ、日の光って、あたたかい。
辺りが見えるって、すばらしいことですね。安心しましたー。



この洞窟、ほぼ真っ暗だし、進んでいくには恐怖心と戦わなくてはなりません。
我ながら、よく一人で行って戻ってきたと思います。
彼岸に行って戻ってきたような気分・・・。
確かに修行の道でした。荒行の精神鍛錬をしたような気がします。
珍しい体験ができるので、お寺を参拝された人は、ぜひ本堂の裏も覗いてみて下さいね。

○ 早業書道

庫裏に行き、お遍路さんの順番を待って御朱印をお願いすると、ちょうど電話が鳴りました。
電話を保留モードにして、ご住職は先に私の御朱印を書いてくれます。
待たせちゃっていいのかなと思いましたが、さらさらっと10秒ほどであっという間に書き上げてくれました。
しかも達筆です。書き慣れておいでなんでしょうね。



境内に、金ぴかの空海像を見かけました。奉納されたもののようです。
シュッとしたイケメンだったので、空海ファンの友人が喜ぶかなと画像を送ったら、「顔が違うよー」と返事が来ました。
喜んでもらえなかった…。ファン心理をわかってなかったようです。

○ ゆかりの人バス

いろいろと味のあるお寺でした。
参拝を済ませて、駅の方へ戻る途中に、気になるバスを見つけました。
プリンスホテルのもので、車体横に道後温泉ゆかりの偉人が描かれていました。



坂野上の雲兄弟や夏目漱石はわかりますが、なんと聖徳太子もなんですか。
病気の療養のためにここを訪れて、すっかり気に行ったとか。本当に?
西暦596年に訪れたと、伊予国の風土記に記されているそうです。

K's cafeを初めて見ました。サークルKが四国を中心に展開しているカフェです。
黄門様のような格好の人が、まっすぐ向かっていきました。
ご隠居のティータイムかしら。



○ いさにわ神社

次に、温泉街にある伊佐爾波神社へ向かいました。
いさにわ神社という名前が気になります。参拝しようと道を曲がったとたんに、神社に続くものすごい石段が目の前にあって、見ただけでめげそうになりました。



でも、おじいさんとおばあさんが、孫に手を引かれてはげまされながら、一段一段、一生懸命上っていくので、私もがんばろうと進みます。
ゼーゼー。
ようやく登り終えて上から見下ろして、(よく登ってきたなあ、フ~)と長い息を吐きました。
ここで階段落ちはしたくないわ!



朱塗りのきれいな社殿。石清水八幡宮を模したものだと言われています。
現存する八幡造は、その2社と宇佐八幡宮の3社のみという貴重なもの。



ぐるりと回ってみると、奥に駐車場があり、(下からがんばって上ったのに~)とちょっとがっかりしました。
車で上まで来れないと、体力が落ちたり足が不自由になったら、お参りできないので、必要ですけれどね。
ただ、車で傍まで行くことに慣れたら、神社への参拝の仕方が変わってしまいそうですが。



○ 一遍さんの生まれたお寺

神社の裏道を通って、時宗の宗祖、一遍上人の誕生寺だという宝厳寺に行きました。
立派で古めかしい山門をくぐって参拝しようとしましたが、境内にある本堂も庫裏も、まるまる建て替え中で、そこかしこにブルーシートがかかっていました。



参拝はあきらめて、そのまま門から出ます。
温泉街からお寺にまっすぐ伸びる参道。
一遍さんは道後温泉生まれだったんですね。
楽しい場所から宗教の偉人が現れるなんて、なんだか意外。
こんなパラダイスのような温泉地にいながら、つらく厳しい修行の道を選ぶなんて、普通の人にはできなさそう。
やっぱり偉人ですね。

○ 湯泉の神様、お菓子の神様



湯神社も高台の上にあります。石段を上っていって参拝しました。
道後温泉にいいお湯を与えてくれている神様で、地震などで温泉の源が途絶えそうになると、この神様にお祈りするのだそうです。
まさに自然は神頼み。



その隣に、別の神社がありました。いろいろなお菓子の会社名が奉納者名として刻まれているのを見て、(もしや、お菓子の神では?)と思ったら、果たして、お菓子の神様を祀っている中島神社でした。
出石にある本社を前にお参りしたことがあります。
そこから四国に勧請してきたそうです。

そばに「天空の道」という表示があるを見て(ロマンチックだなあ)と行ってみました。
上から道後温泉本館を眺められるスポットでした。
見下ろすと、本館のところだけ、明治の面影が残っています。
近くにはロシア人のシニアカップルがいて、熱心に眺めていました。



ベンチに座って少し休憩したら、さっそく蚊に刺されてしまいました。
東京では蚊はもう姿は消しているので、もう存在を忘れていましたが、こちらではまだいるんですね。

○ カラフル道後温泉

それから坂を下りて、道後温泉本館へ。
レトロな建物~。浴衣の人が多くて、雰囲気たっぷり。



真正面から見ると、写真でよく見る建物とは雰囲気が違っています。
もっと華やかでファッショナブル。





ちょうど「道後アート2015」として、写真家の蜷川実花氏とコラボ中なんだそうです。
カラフルないい時に来れました。



道後温泉のお湯は熱いですね。あまり長居はできませんでしたが、気持ちよくさっぱりしました。
あっ、『我が輩は猫である』のクシャミ先生と猫を発見!
名前つけてあげて~。



○ 足湯とからくり時計

夕方になると、一気に気温が下がって肌寒くなってきます。
明かりがついて、こうこうと輝きだすイルミネーション。



温泉街の入り口にあるからくり時計も、ライトアップを始めています。



隣にある放生園の足湯につかりました。



全身だと熱くて長湯はできませんが、足だけだとぽかぽかして、ずっとつかっていられます。
夕暮れ時になり、風が冷たくなってきても平気。



そのうちに、背後がガヤガヤとにぎやかになってきました。
振り返ってみると、なんだかすごい人だかり。
大勢の人々が近くにたむろして、何かを待ちかまえています。
外国の言葉も結構混ざっているのが聞こえてきます。



先ほど見かけたプリンスホテルの偉人バスが到着し、お客を下ろしています。



ちょうど6時になると、からくり時計から人形が現れました。
みんな、これを待っていたんですね。
足湯につかっている私は、特等席気分で座りながらの見学。
夜だからか、影絵になったファンタジックなものが見られました。



夜になってきたので、そろそろ宿に戻ることにします。
その3に続きます。



最新の画像もっと見る

2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (アネッティワールド)
2015-11-17 18:31:29
見たことのある風景や
行ったことのない風景など
興味津々で拝見しました。
力作ですね。

いさにわ神社は行ったことないですが
石手寺はずいぶん昔行きました。
怖いくらい真っ暗なんですね。

一人じゃなおさら怖かったことでしょう。

松山は偉人さんが多く排出されてますね。
特に秋山兄弟とかね。
忘れられないお寺 (リカ)
2015-11-19 02:00:29
アネッティワールドさん、ちょっと今回は長過ぎましたね。一気に書いてしまいたくって。
石手寺に参拝されましたか。ここは本当に盛りだくさんのお寺でした。忘れられないでしょうね~。
松山出身の人は実は多いんですか。いい風土なんでしょうね~。

post a comment