その飛行機はゆっくり降下していた。
しかしその女性パイロットは客席の方を向いて座っている。
「前を見ていなくて大丈夫なのですか」と訊くと、
その中年女性は「この方が左右も見回せるから良いのです」と答えた。
その空港は水浸しになっていたが、滑走路は微かに見えていた。
パイロットは「この空港は干潮の時だけ滑走路が現れるのです」と云った。
それで、滑走路が水浸しになっているのかと思った。
飛行機がゆっくりと滑走路に近づくと、滑走路は90度に曲がっていた。
パイロットは首を少し捻っただけで飛行機を上手く90度回転させて着陸させた。
やはり後ろ向きに座っていた方が良いのだなと思った。
飛行機から降りて旅館に向かう途中、
同僚はこっそりと云った。
「今、旅館で着る浴衣はほぼ一社が独占しているのだ」
そうだったのか。
「だが、浴衣の生地はなかなか手に入らないから他の会社では作れない」
そういって彼は更に続けた。
「だから浴衣の直し屋になろうと思っているんだ」
それは良いかも知れない。
それから僕らは「佐藤食堂」という看板のある食堂に入った。
そこは会議室にある様な長テーブルに、ボロい椅子のある大衆食堂だった。
おいらはそこでラーメンをオーダーした。
しかし出てきたのは湯麺だった。
この食堂では湯麺をラーメンといって出しているのである。
店のすぐ近くをバーミリオンとクリームのツートンの電車が走っている。
是非写真を撮りたいと思ったが、
食堂の人がいろいろ話しかけてきてなかなか出る機会がない。
そしていろいろと話をしている内に、
ここが課長の親戚だという事が分かった。
店は大変混んでいて、座れない人も出ているほどだった。
そこでやっと思い出した。
「佐藤食堂」は表からはいると大衆食堂だが、
裏からは「佐藤照代拉麺店」になっているという、
大阪では非常に有名な店だったのだ。
電車は軒下ぎりぎりのところを走り、店は何時までも賑わっていた。
※これは林檎乃麗が見た初夢を文章化したもので、
実在の飛行機、空港、同僚、浴衣メーカー、佐藤食堂、鉄道会社とは一切関係ありません。
2004/01/01 13:55
初出:ASAHIネット電子フォーラム、serori・networkの中の会議室「短文文筆家集合所」
しかしその女性パイロットは客席の方を向いて座っている。
「前を見ていなくて大丈夫なのですか」と訊くと、
その中年女性は「この方が左右も見回せるから良いのです」と答えた。
その空港は水浸しになっていたが、滑走路は微かに見えていた。
パイロットは「この空港は干潮の時だけ滑走路が現れるのです」と云った。
それで、滑走路が水浸しになっているのかと思った。
飛行機がゆっくりと滑走路に近づくと、滑走路は90度に曲がっていた。
パイロットは首を少し捻っただけで飛行機を上手く90度回転させて着陸させた。
やはり後ろ向きに座っていた方が良いのだなと思った。
飛行機から降りて旅館に向かう途中、
同僚はこっそりと云った。
「今、旅館で着る浴衣はほぼ一社が独占しているのだ」
そうだったのか。
「だが、浴衣の生地はなかなか手に入らないから他の会社では作れない」
そういって彼は更に続けた。
「だから浴衣の直し屋になろうと思っているんだ」
それは良いかも知れない。
それから僕らは「佐藤食堂」という看板のある食堂に入った。
そこは会議室にある様な長テーブルに、ボロい椅子のある大衆食堂だった。
おいらはそこでラーメンをオーダーした。
しかし出てきたのは湯麺だった。
この食堂では湯麺をラーメンといって出しているのである。
店のすぐ近くをバーミリオンとクリームのツートンの電車が走っている。
是非写真を撮りたいと思ったが、
食堂の人がいろいろ話しかけてきてなかなか出る機会がない。
そしていろいろと話をしている内に、
ここが課長の親戚だという事が分かった。
店は大変混んでいて、座れない人も出ているほどだった。
そこでやっと思い出した。
「佐藤食堂」は表からはいると大衆食堂だが、
裏からは「佐藤照代拉麺店」になっているという、
大阪では非常に有名な店だったのだ。
電車は軒下ぎりぎりのところを走り、店は何時までも賑わっていた。
※これは林檎乃麗が見た初夢を文章化したもので、
実在の飛行機、空港、同僚、浴衣メーカー、佐藤食堂、鉄道会社とは一切関係ありません。
2004/01/01 13:55
初出:ASAHIネット電子フォーラム、serori・networkの中の会議室「短文文筆家集合所」