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<リアル ボクシング ルポ>「残り少ない、ボクサー人生ですから」 自ら、そうクチにしてしまう福原力也 

2013-06-20 22:54:12 | スポーツ

 まだ、6月21日の試合どころか、先が、まったく決まって無い頃のこと。

 彼は、それでも、ほぼ毎日、ジムに来ては、練習を積み重ねていた。

 気になり、じっと観ている、こちらの顔に気付くと、その元 日本チャンピオンは、苦笑いを浮かべて、こう言った。

 「残り少ない、ボクサー人生ですから」

 その言葉に反応して、私は、ひどい言葉を、その人に返した。

 「だから、取材したいんですよ」、と。

 本心は、違っていた、はずなのに・・・・・・。

 本心は、こう思っていた。だから、ダメなんですよ。そう、自分で思い込んでいるから、良くないんですよ、と。

 この人を、評して、皆が皆、こう言う。

 「気持ち、のひと」 「考え過ぎる人」 「ハートさえ、強ければねえ・・・」 

 プロデビューしたのは、丸13年前。21歳の時。

 相手を圧倒し、1ラウンド、レフェリーストップ勝ち。

 5年後には、日本スーパー・バンタム級チャンピオンに輝く。しかし、好事魔多し。

 強打者、ハード・パンチャーゆえか、なんと、試合中に右腕を骨折。相手に知られまいとしつつ、左腕1本で戦うも、負ける。

 手術し、右腕の筋肉に、金属棒を埋め込む。腕には、今も手術跡が、クッキリと見える。

 その、2年後。またも、試合中に古傷とも言うべき、右腕を骨折!

 今度は、さすがに無理をさせられぬと、即刻、セコンドが判断。タオルが投入された。

 いきおい、試合間隔は、開いてゆく。

 運、不運、何というべきか。世界チャンピオンへの、足がかりにと、東洋・太平洋の王座に挑むが、ノックアウト負け。

 明るくなれ! いつも、元気出せ!というのは、酷か・・・・・・。

 気持ちが沈むことが、多くなった。ブログでは、空にこころを投影してた。

 例え、試合に勝っても、クチをついて出るのは、反省点ばかり。「詰めが・・・・・」。「あの場面で、・・・が出ないんですよ」。「アタマでは、分かっているんですよ」。

 そういって、苦笑い。

 確かに、かつてに比べれば、全体に、落ちている。ぶしつけにも、以前だったら、あのトコロで、倒せてましたね。そう言ってしまったこともある。

 それは、現在までの戦績たるや、26勝7敗1引き分け。26勝のうち、19ものKO&TKO。KO率、実に7割強。

 近年は、試合数も、少なくなりつつある。

 今回の6月21日の試合も、実は、同じジムの選手が、ケガをしたため、急きょ、彼に出場機会が回ってきた。

 そういう、背景もある。

 右ストレートが、こわくて打てない。何も、故障もしてないのに、そんな気持ちに襲われているみたい。

 新任のトレーナーが、首を傾げる。思い込みが、この元 チャンピオンに、時折り、のぞく。

 ボクサー生活、デビュー前も含めると15年間近い。2度の骨折をしていなくとも、体のあちこちに、ガタとほころびが、のぞいて当たり前。

 やっていない私から見つめていても、尋常ではない体全体への酷使を、日々、積み重ねているのが、プロボクサーだ。

 つい最近も、試合後、こんなことがあった。

 6月10日。和氣慎吾という、リーゼントのヘアスタイルでも有名な、東洋・太平洋(OPBF)スーパー・バンタム級チャンピオンが、完勝で初防衛を果たした。

 プロデビューして、7年目。大きなケガは、聞いてはいない。だが、「次の防衛戦は、いつ?」と、聞く取材陣に、会長でもある古口トレーナーは、こう言った。

 「しばらく、ゆっくり休ませたい。このところ、試合が立て込んでいて、体に結構ガタがきてるんだ。本人は、痛いなんてクチに出して言わない性格だけど、休ませることが、今は必要だと判断している」

 

 五体満足、どこにも痛みのない中堅プロボクサーなんて、1人もいない。

 親しくさせてもらっているボクサーには、実は今、ココが痛くて、練習を休んでいるとか、練習量をセーブしているなどということは、しばしば聞く。

 しかし、書かない。そんな、選手にとってマイナスになることは、こころ迷いつつも、極力書かない。

 まだまだ、上をいける彼だが、時に弱気になって、それを年齢のせいにする。

 「俺、もう34ですからねえ」

 そう自分から言って、苦笑する。

 「でも、それ言って言い訳にしちゃ、いけませんよねえ」

 「世界チャンピオンの、内山高志なんて、俺よりたった1つ下の、33歳ですからねえ」

 そう言って、また小さく笑う。

 年齢だけで区切ったら、彼はまだ、ひょっこみたいなもん。自らのブログに毎回登場させている、子犬みたいなもん。なぜか、同じ屋根の下にいる、最愛の人は登場させてないけれど・・・・・。

 飛天(ひだか)かずひこ、プロデビュー17年のキャリアで、同じ34歳。36戦やって、元OPBFウエルターと、スーパー・ウエルター級チャンピオンだ。つい最近、会ったが、ものすごいパワフル。圧倒された。

 湯葉忠志、まだ36歳。こちらも、プロデビューして、まだ17年。すでに、4階級制覇を終え、つい最近の試合では、私も文句なしの「勝ち」。

 控室に、勝ったお祝いに来た、柴田明雄に「次、試合やろうよ」と、せがんでいた。柴田、まだ31歳。湯葉の、1発で試合の流れをひっくり返す強さを、身を持って知ってる人。柴田、今、OPBFミドル級と共に、日本スーパー・ウエルター級のチャンピオンだ。

 湯葉が、柴田に勝てば、5階級制覇完成。逃げ腰の柴田に、試合の約束を、迫っていた。まだまだ、やる気十二分!

 石田順裕(のぶひろ)だって、37歳。キャリア、まだ13年。日本の大阪を、再び主戦場にする。東京妻の存在は、どうするのか、気になるけれど・・・・

 トドメは、西澤ヨシノリ。プロデビューして、27年間。すでに、58戦こなして、まだ47歳。今は、オーストラリアを主戦場にしており、帰国時、日本でお逢いした。

 「実は、ベルト2つも、持ってるんですよ。ふふふ、地域タイトルですけれどね」

 皆さん、強い。弱気、見せない。突き進んでる!

 ひよっこの、元日本チャンピオンと、対戦するのは、25戦して、わずか8勝15敗2引き分けの、31歳。8勝のうち、KOは4勝。

 KO率は、たった1割6分。このところは、勝ったり、負けたり。

 迷い、こころ揺れがちの彼にしても、意外や、楽勝?

 「戦績だけ見るとね、そう想うかも知れませんがね」

 そう切り出したのは、何を隠そう、彼のトレーナー。

 「実は、負けてる相手は、みんな強いやつばかりなんですよ。そのうえ、試合内容も、結果としては負けになってるんですが、かなり接戦ばかりで・・・・。なので、気を引き締めて、戦いに臨むつもりです」

 彼、福原力也は、他のジムのランキング・ボクサーと、激しいスパーリングを繰り返してきた。

 トレーナーによれば、「力也のテンションも、久々に上がって来てる」との、こと。

 前の試合前は、「プロデビュー前の子と、スパーリングやって、調整してたんだもんなあ」 と、山川豊特別トレーナーを、落胆させた。

 今度は、打ち込まれて、ヤル気、ぶっ倒す気迫が、甦ってきたので あれば、良いのだが・・・・・・

 無我夢中。あれこれ考えずに、一気にコーナーに詰めて、連打で相手を沈める。

 そんな、かつての試合のような、再現を見たい!