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「1970年代 記録文学の時代」(その1):資本主義の矛盾と近代への反省:①オイルショック、② 公害、③ベトナム、④公民権、④-2ウーマンリブ!過激派!(斎藤美奈子『日本の同時代小説』2)

2022-02-14 14:10:55 | 日記
※斎藤美奈子(1956生)『日本の同時代小説』(2018年、62歳)岩波新書

(14)資本主義の矛盾と近代への反省:①第1次オイルショック、② 公害、③ベトナム戦争、④公民権運動、④-2「ウーマンリブ」!「過激派の暴走」は人心の離反を招いた!
A 1970年代は「近代の限界が見えた時代」、「資本主義のほころびを突きつけられた時代」だ。(46頁)
A-2  戦後の復興期から高度経済成長期にかけ、東京オリンピック(1964)で盛り上がり、大阪万博(1970)に浮かれ、ひたすら走り続けてきた戦後日本。(46頁)
A-2-2 ところが、①第1次オイルショック(1973)が列島を襲う。狂乱物価、そしてスーパーにはトイレットペーパーを求める長い列。「私たちは、このまま走り続けていいんだろうか」という雰囲気が生まれた。(46頁)
《参考》1973年「ユックリズム」を交通評論家玉井義臣(よしおみ)氏が提唱した。玉井は、大量生産―大量消費―大量廃棄の浪費社会は、資源枯渇、環境汚染、人類滅亡につながるとし、「減速」の哲学、「ユックリズム」を訴えた。
A-3 こうした気分は60年代から徐々に醸成されていた。②戦後の急激な工業化が「公害」を生み出し社会問題となった。水俣病、新潟水俣病、四日市ぜんそく、イタイイタイ病など。(46頁)

A-4 もうひとつ、人々に反省の材料を与えたのは、③「ベトナム戦争」(1965-1975)だ。60年代末には米軍の北爆(北ベトナム爆撃)に抗議する反戦運動が世界中で活発化する。日本では小田実らが立ち上げた「べ平連」(「ベトナムに平和を!市民連合」)を中心に運動が広がり、自国の戦争・植民地支配について振り返る気運につながった。(46-47頁)
A-5  さらに④60年代アメリカの「公民権運動」に端を発した意識革命が、人種・民族・国籍・性別などによる差別の存在を認識させた。④-2 日本では70年代初頭、「ウーマンリブ」(Women's Lib;リブはliberation 解放の略語)と呼ばれる第二波フェミニズムが産声をあげ、女性解放が大きなテーマとなった。女性史のブームが起こり、 オーラルヒストリー(口述歴史)への関心が高まる。(47頁)

A-6  その一方で左翼運動は70年代に入って急速に廃れていった。(a)セクト間の内ゲバ、(b)よど号ハイジャック事件(1970)、(c)連合赤軍事件(1971-72)。これら「過激派の暴走」は人心の離反を招いた。(47頁)

(14)-2 1970年創設の「大宅壮一ノンフィクション賞」などノンフィクションの興隆!
A-7  では1970年代の出版界、文学界はどうだったか?一つの大きな流れは、ノンフィクションの興隆だ。1970年創設の「大宅壮一ノンフィクション賞」(大宅賞)は「ノンフィクション界の芥川賞」と呼ばれ、さらに1974年「日本ノンフィクション賞」、1979年「講談社ノンフィクション賞」が創設された。(47頁)
A-7-2 「事実と虚構を峻別する西欧」と異なり、日本では「私小説の伝統」があり、「創作と記録」、「フィクションとノンフィクション」の境界が曖昧だ。かくて1970年代には「フィクションとノンフィクション」の境界線上で、多くの佳作・大作・話題作が生まれた。(47-48頁)
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