※安部悦生『文化と営利 ―― 比較経営文化論』有斐閣(2019)「第Ⅱ部 経営文化の国際比較」「第10章 中国の経営文化」(その2)
(3)家族企業と経営者企業(1):家族主義では①企業規模の拡大、②後継者の点で制約がある!
G 「家族以外の人間を信用しない」慣行の下で、「親族関係にない人々がともに企業などの集団や組織を形成すること」は難しくなる。(フクヤマ)(193頁)
G-2 企業と言っても、「家族の延長である家族企業」と「所有と経営が分離し、赤の他人である専門経営者が経営する経営者企業」とは異なる。(193頁)
G-3 「取引先に対する信頼」や「他人に経営を移譲することに対する信頼」が弱いので、中国の民間企業の成長には制約があった。(193頁)
G-4 企業が拡大していけば、「家族、親族だけでは経営の人材を質量ともに確保できない」。また長期的には「息子や孫が経営能力を持っているとは限らない」。(193頁)
(3)-2 家族企業と経営者企業(2):日本では準経営者企業の財閥(三井・住友)の番頭経営があった!中国にはない!
H 日本では準経営者企業として財閥(三井・住友の場合)が誕生した。江戸時代の番頭経営の伝統に基づく。所有者は三井家、住友家だが、経営は番頭(三井:中川彦次郎・益田孝・団琢磨;住友:広瀬宰平・伊庭貞剛)がおこなった。(194頁)
H-2 三菱は初代岩崎弥太郎が陣頭指揮。
H-3 戦後、財閥解体で、所有と経営が完全に分離され経営者企業が広汎に成立。「経営者資本主義」!
H-4 中国では、赤の他人(番頭)に経営をゆだねることはない。(中国の番頭は所有者隠しなどのため。)
(3)-3 家族企業と経営者企業(3):(a)日本は血縁関係が無くても有能な娘婿を「養子」にする(195-6頁)!中国では養子縁組は親族集団内で行われた!(b)日本の家は「家業」だった!中国の家は男系の紐帯!(195-6頁)
I (a)日本では、養子制度が、家の存続、家業の繁栄のため、「養子制度」が活用された。血縁がつながっていても無能な後継ぎは排除し、血縁関係が無くても有能な娘婿が好まれる。
I-2 日本には「主君押し込め」の伝統もあった。無能な主君、主人は座敷牢に閉じ込め、その息子が元服したのち継がせる。
I-3 中国では、養子縁組は親族集団内で行われた。あるいは背信の可能性の少ない「」
I-4 (b)日本の家は「家業」だった。中国の家は「父子一体」で男系の紐帯だった。
(3)-4 家族企業と経営者企業(4):(c)中国には科挙制度での栄達の道があたった!
J (c)中国では科挙に合格すれば身分に関係なく士大夫階級となり官吏として栄達できた。事業で得た利益は再投資せず、土地を購入し、地主となり社会的威信・栄光を求めた。
J-2 日本では科挙制度がなく、商人は「家業」の発展を望むのが社会的上昇の唯一の方法だ。かくて番頭制度、養子制度が駆使された。
(3)-5 家族企業と経営者企業(5):(d) 中国は均分相続で長期にわたって私企業が継続・発展しにくい!
K (d)日本では、農家でも商家でも一子相続(ほとんどが長子相続)だった。二男・三男が若干の土地を貰っても「本家と分家の関係」。(ただし日本は第二次大戦後、均分相続となった。)(197-8頁)
K-2 中国は均分相続で、土地などの財産は細分化されて行った。長期にわたって私企業が継続・発展しない理由のひとつだ。
(3)-6 家族企業と経営者企業(6):(e) 中国の家族企業では、従業員は個人主義!
L 家族主義の中国では、血縁関係がない従業員にとっては、企業は一時の仮の宿にすぎず、離職が日常茶飯事。高いジョッブホップ率。(家族でない)他人のために汗水たらして働かない。(199頁)
L-2 中国の家族企業では、所有者は家族主義、従業員は個人主義が優勢。(199頁)
(3)-7 家族企業と経営者企業(7):家族主義・個人主義・集団主義の国際比較!(199頁)
M 日本では、経営者企業の発展により、職場は全員を包括する集団主義だ。(※擬制的家族主義はありうる。)
M-2 英米は、経営者企業の発展で家族企業は劣勢。職場は個人主義。
M-3 中国は、家族企業が基本。所有者は家族主義、従業員は個人主義。
(3)-8 家族企業と経営者企業(8):ブッデンブロック現象(家族企業は三代目で没落する)!(199-200頁)
N トーマス・マンの小説『ブッデンブロック家』では、三代目が初代の作った企業を没落させる。
N-2 日本では「売家と唐様で書く三代目」。売り家札の筆跡は唐様(中国風の教養ある筆跡)だ。遊芸にふける三代目。
N-3 英米でも三代目で没落。「一代目はシャツ一枚、三代目のシャツも一枚」(アイルランドの諺)。
N-4 ブッデンブロック現象は世界共通。
N-5 ブッデンブロック現象(三代目の没落)を回避するためには、有能な他人に企業を任せるしかない。つまり経営者企業や準経営者企業(番頭経営)への移行、あるいは家族企業なら養子制度の採用。
N-6 中国では、(ア)番頭経営も(イ)養子制度も採用されず、さらに(ウ)均分相続なので、家族企業はブッデンブロック現象にしばしば陥る。
N-7 イギリスのマーチャントバンクであるロスチャイルドは例外で、家族企業だが何代も続いている。
(3)家族企業と経営者企業(1):家族主義では①企業規模の拡大、②後継者の点で制約がある!
G 「家族以外の人間を信用しない」慣行の下で、「親族関係にない人々がともに企業などの集団や組織を形成すること」は難しくなる。(フクヤマ)(193頁)
G-2 企業と言っても、「家族の延長である家族企業」と「所有と経営が分離し、赤の他人である専門経営者が経営する経営者企業」とは異なる。(193頁)
G-3 「取引先に対する信頼」や「他人に経営を移譲することに対する信頼」が弱いので、中国の民間企業の成長には制約があった。(193頁)
G-4 企業が拡大していけば、「家族、親族だけでは経営の人材を質量ともに確保できない」。また長期的には「息子や孫が経営能力を持っているとは限らない」。(193頁)
(3)-2 家族企業と経営者企業(2):日本では準経営者企業の財閥(三井・住友)の番頭経営があった!中国にはない!
H 日本では準経営者企業として財閥(三井・住友の場合)が誕生した。江戸時代の番頭経営の伝統に基づく。所有者は三井家、住友家だが、経営は番頭(三井:中川彦次郎・益田孝・団琢磨;住友:広瀬宰平・伊庭貞剛)がおこなった。(194頁)
H-2 三菱は初代岩崎弥太郎が陣頭指揮。
H-3 戦後、財閥解体で、所有と経営が完全に分離され経営者企業が広汎に成立。「経営者資本主義」!
H-4 中国では、赤の他人(番頭)に経営をゆだねることはない。(中国の番頭は所有者隠しなどのため。)
(3)-3 家族企業と経営者企業(3):(a)日本は血縁関係が無くても有能な娘婿を「養子」にする(195-6頁)!中国では養子縁組は親族集団内で行われた!(b)日本の家は「家業」だった!中国の家は男系の紐帯!(195-6頁)
I (a)日本では、養子制度が、家の存続、家業の繁栄のため、「養子制度」が活用された。血縁がつながっていても無能な後継ぎは排除し、血縁関係が無くても有能な娘婿が好まれる。
I-2 日本には「主君押し込め」の伝統もあった。無能な主君、主人は座敷牢に閉じ込め、その息子が元服したのち継がせる。
I-3 中国では、養子縁組は親族集団内で行われた。あるいは背信の可能性の少ない「」
I-4 (b)日本の家は「家業」だった。中国の家は「父子一体」で男系の紐帯だった。
(3)-4 家族企業と経営者企業(4):(c)中国には科挙制度での栄達の道があたった!
J (c)中国では科挙に合格すれば身分に関係なく士大夫階級となり官吏として栄達できた。事業で得た利益は再投資せず、土地を購入し、地主となり社会的威信・栄光を求めた。
J-2 日本では科挙制度がなく、商人は「家業」の発展を望むのが社会的上昇の唯一の方法だ。かくて番頭制度、養子制度が駆使された。
(3)-5 家族企業と経営者企業(5):(d) 中国は均分相続で長期にわたって私企業が継続・発展しにくい!
K (d)日本では、農家でも商家でも一子相続(ほとんどが長子相続)だった。二男・三男が若干の土地を貰っても「本家と分家の関係」。(ただし日本は第二次大戦後、均分相続となった。)(197-8頁)
K-2 中国は均分相続で、土地などの財産は細分化されて行った。長期にわたって私企業が継続・発展しない理由のひとつだ。
(3)-6 家族企業と経営者企業(6):(e) 中国の家族企業では、従業員は個人主義!
L 家族主義の中国では、血縁関係がない従業員にとっては、企業は一時の仮の宿にすぎず、離職が日常茶飯事。高いジョッブホップ率。(家族でない)他人のために汗水たらして働かない。(199頁)
L-2 中国の家族企業では、所有者は家族主義、従業員は個人主義が優勢。(199頁)
(3)-7 家族企業と経営者企業(7):家族主義・個人主義・集団主義の国際比較!(199頁)
M 日本では、経営者企業の発展により、職場は全員を包括する集団主義だ。(※擬制的家族主義はありうる。)
M-2 英米は、経営者企業の発展で家族企業は劣勢。職場は個人主義。
M-3 中国は、家族企業が基本。所有者は家族主義、従業員は個人主義。
(3)-8 家族企業と経営者企業(8):ブッデンブロック現象(家族企業は三代目で没落する)!(199-200頁)
N トーマス・マンの小説『ブッデンブロック家』では、三代目が初代の作った企業を没落させる。
N-2 日本では「売家と唐様で書く三代目」。売り家札の筆跡は唐様(中国風の教養ある筆跡)だ。遊芸にふける三代目。
N-3 英米でも三代目で没落。「一代目はシャツ一枚、三代目のシャツも一枚」(アイルランドの諺)。
N-4 ブッデンブロック現象は世界共通。
N-5 ブッデンブロック現象(三代目の没落)を回避するためには、有能な他人に企業を任せるしかない。つまり経営者企業や準経営者企業(番頭経営)への移行、あるいは家族企業なら養子制度の採用。
N-6 中国では、(ア)番頭経営も(イ)養子制度も採用されず、さらに(ウ)均分相続なので、家族企業はブッデンブロック現象にしばしば陥る。
N-7 イギリスのマーチャントバンクであるロスチャイルドは例外で、家族企業だが何代も続いている。