満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

釣り場にて…(昔ばなし)

2006-10-12 | 昔話のハチャメチャ
私の父はアウトドア派である。

スキー・釣り(魚釣り及び女漁り)・ゴルフ・キャンプ

なので、我ら家族は休みの日ともなれば
一家総出で北海道各地を遊び回っていた。

なかでも、釣りには大層な熱を入れていたと思う。
専門は海釣り。
竿の数も半端じゃない。数えたことは無いが十数本は持っていた。
リールに至っては竿の数より多く持っていた。
竿の数だけありゃ~イイんじゃないかぃ?と思うが
新作リール&竿は買わずには居られないらしい…
(今ならゴルフ用品で同じ思いがあるので…理解できる)

前日の夕食後に家族総出で「仕掛け」作り
子供は8時に一度就寝。
夜の12時近くに起こされ、車で一路つり場へ向かう
札幌に住んでいたので、つり場はたいがい日本海側だったと思う。
現場に着くと家族は車の中で一時、寝る。
日の出と共に起きて防波堤にいくか、船に乗るか、岩場へでるか…

その日は防波堤での釣りだった。
目標はカレイ。マコガレイに黒ガレイ。
エサは「ゴカイ」(形状はミミズ似)
私は「すず虫」(9/15過去記事)でも載せたが
あの頃は無類のニョロニョロ系好きだった。
ゴカイは細長い薄ねずみ茶色(表現が難しい)の筒状の中に生息していて
当時はソレを束で買う(剥いてあるのは値段が高く、イキが悪い)
束で買った筒状の物を裂いて中から「ゴカイ」を取り出す。

私は手で摘んで取り出した「ゴカイ」をタッパーに入れる作業をし、
父は竿に仕掛けを取り付ける。
長い「ゴカイ」を小刀で切り、針に刺して絡ませる。
この一連の作業が何故か好きだった。
父ですら「ゴカイ」は苦手だったらしい節があったので
私の事を奇異な目で見つめながらも、重宝していたようだ。

竿は剣道の面の体制で振り投げる。
海面と平行になる少し前にリールを緩め
より、遠くへオモリと共に針・エサを投げる。
海底に沈んだ頃に少しだけ糸を巻き、糸に少しの緊張を与える。
それからは、竿の先を見つめながら待機する。
竿の先には鈴を付けてあるので、波に揺られて「チリン」と鳴る。
アタリがあると竿は大きくたわみ、鈴も「チリチリ」と音を荒げる。

釣りは性格が短気な方がイイと聞く。
我が家は全員「短気モン」だった…。
私はゴカイを剥き、竿を投げるまでが好きだったので
その後は波に反応する鈴音を聞きながら読書タイム。
父は昼寝。弟だけが真剣な眼差しで3人の竿の番人をする。

たいした釣果もなく
クーラーボックスの中は「ガヤ(エゾメバル)」一匹のみ

そこに、弟の素っ頓狂な声が響いた
「姉ちゃん、竿!!」
見ると、しなった竿は今にも海に落ちそうになっていた。
慌てた私は竿を掴みリールを巻く。
しかし、手ごたえが強すぎて糸が切れそうになる。
父は私の手から竿を奪い、何度も竿を立ててみるがビクともしない。
かなりの大物かも…?
そこに数人の太公望(釣り好きジイジ)達が集まってきた。
竿のしなりを見て、一人の太公望が厳かに言い放った。

「こりゃ~、タコだな」

タコ~?タコってアノ蛸?
「どーする?糸切るか~?上げるか?」っと太公望は私の顔を見る。
私は思わず生唾を飲み込む様にうなづいた。

「よし。わかった。」
5人の太公望達が、何処から持って来たのか
ヤリとタモ(虫取り網似のデカクて丈夫な物)を持って来た。
太公望ゴレンジャー見参!

赤ジイジが堤防から身を乗り出し指示を出す。
青ジイジが竿を持ち糸の緊張を見つめる
黄ジイジがタモを持ち
緑ジイジがヤリを持つ
桃ジイジは掛け声担当。

私達家族が呆気にとられている内に
タコが防波堤に上げられてきた。
かなりデカイ!小学生の弟の身長よりデカかった。
いつの間にか集まって来た見物人達は思わず拍手喝采。

我にかえった父は小刀を取り出し
5人の太公望達にタコの足を1本づつ渡していた。
デカイ頭に3本足のタコは、それでもクーラーBOXに入らなかった。
近所に居たオジサンが水汲み用のビニール袋をくれたのでソレに入れた。
もちろん、ビニール袋をくれたオジサンにも足1本プレゼント。
かくして、デカ頭のタコは2本足になって我が家にたどり着いたのだった。

頭は茹でて甘醤油煮に、
足は塩でもんでヌメリを取り刺身に。
新鮮なタコの刺身は吸盤がくっつく。
私も弟も父も母も、顔や手にタコの刺身をくっつけて
今日の出来事について、飽きることなく語り合った。

太公望ゴレンジャー達はタコの足を貰うと
それぞれ帰って行った。
つまり、彼らは仲間でもなく、友達でもなかった。
ただただ、釣り好きだったのだ。
一丸となっての作業は見事であった。
子供心にも太公望ゴレンジャー達の雄姿は
何時までも脳裏に焼きついていた