大晦日に衝撃的なニュースが飛び込んできた。東京都の1日あたりの新型コロナウイルス感染者数が1337名となり、これまでの最多(12月26日が949人)を大幅に更新したのである。さらに問題なのはその1337名の内訳で、全体のうち経路不明者が928名、またPCR検査の陽性率も10.2%であり、あらゆるデータが「事態が制御不能になりつつある」ことを示している。正月を越えても東京都では1日あたり700-800人台の感染者数が継続していて、収束する気配はない。アメリカの状況(通算で感染者数2000万人、死者34.6万人。直近は3日間で約1万人が死亡)から判断する限り、この感染症の拡大に「ここまで感染すれば終わり」というポイントは存在せず、放置すればどこまででも事態は悪化していくと予測される。何等かの「歯止め」をかける処置が今、必要なことは明らかである。ちょうど今日、1都3県が政府に緊急事態宣言の要請を行ったとニュースで報道されていた。適当に思ったことを。
1、「1337名」という数字はこれまでの最高記録を一気に400人近く上回る数字である。こうなると「保健所による追跡・発症した患者さんの入院やホテル療養の手配」が追いつかなくなる危険がある。どんな組織であっても、これまでの1.5倍の仕事を突然投げられてスムーズにこなせる訳がない。入院やホテル療養の手配が追い付かなくなると、「発症した後に自宅で待機する患者さん」が増加するという事になり、こうなると正月明けに自宅で重症化してしまった患者さん、あるいは家庭内感染を起こしたりするケースが増えるのではないかと予測される。恐らく正月明けにさらに事態は悪化してしまうだろう。そしてさらなる感染爆発が起きれば、さらなる業務破綻が引き起こされるだろう。不安が尽きない。
またすでに4月から指摘されてきた「感染症発生届を紙とFAXに頼ったシステム」は何一つ改善されたという話を聞かない。HER-SYSなるシステムが導入されたものの、入力が煩雑過ぎて余計に現場の負担を悪化させているというニュースが聞こえてくるばかりである。この手のIT化を柔軟に改善しながら進めていくのはどうにも日本は苦手の様である。それにしても何か月もかけて結果がこれである。何とか改善を期待したい。
2、データから見ると年末は各地で人出が増加していた、というニュースが報道されていた。忘年会なども各地で開催されていたようである。また残念ながら、菅首相をはじめとして、多数の政治家が大人数での会食を開催したこともニュースで報道されていた。政治家は人と会うのが仕事ではあるのだろうが、率直に言って、国を指導する立場の人が今の状況でやるべきことではないだろう。例えとしては良くないかも知れないが「割れ窓理論」に近い影響を与えてしまっていると思われる。
Wikipedia「割れ窓理論」
「あの人も会食しているんだから、自分だって少しくらいいいだろう」と皆なってしまっているのだろう。すでに「会食の場」が最も感染において危険な場所というのは多くのデータが示す通りである。ここは是非、著名人に「一人で食事をして、Zoomなどで友人と語りあう姿」を皆の前で模範として示して欲しいところである。
3、このウイルスの特徴として「年齢によって大きく致死率が違う」という問題がある。若い人にとっては致死率は1%にもならないウイルスであるが、80歳を超えた人にとっては「致死率が10%を超える上に恐ろしく感染力が強い」という、まさに殺人ウイルスなのである。ただ各世代に対するリスクが違うにも関わらず、「感染防止策は社会全員で取り組まなくてはならない、行動制限の負担は若年者も高齢者も全員でおわなくてはならない」という問題があり、これが民主主義国家の感染予防策をさらに難しくしている。
こうなると、リーダーが分かりやすい言葉で、社会の団結を呼びかけるという事がどうしても必要になってくると思われる。政府の方に是非ここは頑張っていただきたいところである。
4、それでは若い人なら、致死率が低いからかかっても問題はないのか?となるとそうでもない。後遺症の研究がまだ何も進んでいないという問題がある。すでにコロナ後遺症の専門外来はあちこちの施設で開始されているが、年単位でみたらどんな症状が起きるのか、まったく未知のままである。
麻疹に罹ったあと、10年ほど経ってから発症する亜急性硬化性全脳炎という病気があるが、これに類似する事態が新型コロナウイルスで発生しないという保証はどこにもない。現時点ではたとえ若年者であっても感染予防を徹底するべきであろう。
Wikipedia「亜急性硬化性全脳炎」
緊急事態宣言はもはや止む無しと思われるが、同時に経済的な打撃もまた考えなくてはならず、簡単な判断ではないのだろう。何とか事態が好転することを期待するのみである。
After Coronaその6