(※今日のは長いですよーー)
心筋梗塞など動脈硬化のリスクを高めるとして悪者扱いされてきた食事のコレステロール。健康のためにこれまで摂取が制限されてきたが、厚生労働省が4月改訂の「食事摂取基準」でコレステロールの基準を撤廃した。日本動脈硬化学会も今月、「食事で体内のコレステロール値は変わらない」との声明を発表した。同学会は動脈硬化を防ぐには食事を含め運動など生活習慣全般の改善が必要と指摘している。
◆血中濃度は体内調整
コレステロールは脂質の一種で、細胞膜の重要な材料のほか、ホルモンや胆汁の原料としての役割も担う。健康診断で「コレステロールが高い」といわれるのは血液中のコレステロールのことで、濃度が高いと血管の内側に脂質がたまって動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞などのリスクが高まるとされている。
これまで食事に含まれるコレステロールを制限すべきだとしていたのは、血中コレステロールに影響を与えると考えられていたためだ。コレステロールを多く含む卵や鶏レバー、バター、エビ、イクラなどは悪者扱いされ、中でも1個に200ミリグラム超のコレステロールを含む卵は「1日1個まで」という制限が常識のようにもなっていた。
しかし、血中コレステロールの7~8割は体内で作られ、食事の影響はもともと少ない。また、食事から多く取れば体内で作る量が減らされ、逆に少なければ体内でたくさん作られるというように、血液中の量をコントロールする調整機能が備わっている。
◆和食がお勧め
こうしたことから、厚労省は4月改訂の「食事摂取基準(平成27年版)」で、これまで18歳以上の男性で1日当たり750ミリグラム、女性で同600ミリグラム未満としていたコレステロールの基準を撤廃。同省栄養指導室は「基準を設定するのに十分な科学的根拠が得られなかったため」と説明する。
日本動脈硬化学会も今月、「食事で体内のコレステロール値は大きく変わらない」とする声明を発表、健康な人では制限は必要ないとした。
ただし、複数ある血中のコレステロールのうち悪玉のLDLコレステロール値が高い人は従来通り摂取制限が推奨されるとする。また、動脈硬化を防ぐには、食事だけでなく、血圧や血糖値の管理、禁煙や運動など包括的な生活習慣の改善が大切とした。
コレステロールを含む食品は動物性タンパク質や脂溶性ビタミンなどを含む物も多い。厚労省の報告書には「高齢者では摂取量を制限すると低栄養を生じる可能性があり注意が必要」とあり、高齢者には適度な摂取を推奨している。ただし、コレステロールなど脂質は他の栄養素に比べカロリーがあり、食べ過ぎればカロリーオーバーとなる点は注意が必要だ。
日本脂質栄養学会の小林哲幸理事長は「食事のコレステロールを気にする必要はないが、脂質の量と質には気をつけてほしい。脂質の中でも現代人に不足しがちな必須脂肪酸のオメガ3脂肪酸などをバランス良く取ることが大事。それには魚や野菜を使った伝統的な和食がお勧め」と話している。
■動脈硬化性疾患、男女で発症リスクに差
日本動脈硬化学会は、LDL(悪玉)コレステロール値が高い人は従来通り摂取制限が推奨されるとするが、高い人とはどの程度をいうのか。同学会は140以上を「高LDLコレステロール血症」と定義する。しかし、日本脂質栄養学会は「LDLが高い方がむしろ長生き」とするなど論争が続いている。
こうした状況の中、NPO法人「臨床研究適正評価教育機構」(理事長=桑島巌・東京都健康長寿医療センター顧問)は、これまでに報告されている科学的根拠を中立的な立場から考察し、見解を出している。
それによると、動脈硬化性疾患は男女で発症リスクに差があり、LDLコレステロール値については、男女別の基準値を示して啓発する必要があるとする。また、発症リスクはコレステロール値のみでなく、高血圧、糖尿病、喫煙など他の危険因子やこれまでの既往歴も考慮した総合的な管理が重要としている。
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