『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

女の子好み!幻想的な北欧ファンタジー『ムッドレのくびかざり』

2017-06-14 17:02:14 | 北欧文学


『ムッドレのくびかざり』(2003年復刻版)
イルメリン・サンドマン=リリウス作 ベロニカ・レオ画
木村由利子訳 フェリシモ出版
ENHORNINGEN,1962


■あらすじ
サンゴの首飾りの行方をめぐり、“ひみつのお庭”から始まる冒険物語がこちら。ムッドレの首飾りのサンゴが一角獣の角に!?一角獣を追って、相棒の人形アステル・ピッピと川のぬしのおじいさんと、海魔女のところを目指します。途中色んな不思議な住人たちがでてきますが、トロルもおどろおどろしいのではなく、オサビシトロルといって、なんとも言えずかわいらしい。果たしてムッドレの首かざりは取り返せるのか。

どの場面もとても美しくて絵画的です。こ・れ・は、女の子が好きそう。私自身は小学校3年生のときに読んだのですが、あまり覚えてなかったので、30数年ぶり(!)に再読でした。

作者は、スウェーデン系フィンランド人だそうで、最近読むYA(ヤングアダルトと呼ばれる中高生向きの物語)のスウェーデンものは、夢から覚めるような厳しい現実が描かれたものが多いだけに、久々に夢見させてもらった感じ。ただ、ふわふわっとしたファンタジーなので、夢中になるか、苦手か二手に分かれるかな


■魅力は自然環境と食べ物!
大人になってから読むと、物語の中に入りこむことはできませんでしたが、別のところでワクワク。なんて、自然環境豊かでいい場所に住んでるの~!とか、ブルーベリーケーキの出る「午後のコーヒー」お呼ばれしたいな、とか(笑)。

もうね、ひみつのお庭が素敵なんです。クレマチスが期のてっぺんまでからみつき、どちらを向いてもつるや茂みだらけで、外から中が見えないの。そして、中から見えるのは、山がひとつだけ。さらに、小川も流れているの。家から続いてる庭が、ですよ!?挿絵もいいんだなあ。

川のぬしのおじいさんが作ってくれる、バターを少し落として、卵を12個(!)割り入れたとろりとしたオムレツ。海魔女のつくる秘伝の海のイーストを加えた焼きたてのかまどパン。やっぱり、花より団子の私


■自分は夢のある人間か否か
海魔女がハリネズミたちと協力して毛すきをし、イッカクジュウの角で糸紡ぎをする場面もとても美しい。でもね、この一頭残し、残りのイッカクジュウの群れは、なだれのような勢いで海へ入っていってしまうんです。理由はもう丘の上には住む場所がないから

「ここらへんには夢のない人間が、たくさんいるんだ」海魔女は言いました。「しかも数がどんどんふえていく。子どものときはとても自由なのに、大人になると夢をなくす人間もいて、そういう夢のない人間は、自由な人間や飼いならされない動物がきらいなんだ。いや、とっぴょうしもないものや、ふしぎなものや、自由なものは、何によらずきらいなのさ。だからたとえば、イッカクジュウを見つけたりすれば、おりに入れたり、うちころしてはくせいにしたりするんだ」(P.150-151)

今回思ったよりも、物語に入りこめなかった私、ドキっとしましたね~。夢のない人間に近づいてたかも!
そして、ラストもいいです。一晩家を空けた娘を心配しつつも、ムッドレの話をそのまま受け入れてくれる夢のある人間の両親。かくありたいな


最新の画像もっと見る

コメントを投稿