『ヒットラーのむすめ』(2004年)ジャッキー・フレンチ作 さくまゆみこ訳
北見葉胡訳 鈴木出版
Hitler's daughter(1999) by Jackie French
午前中とはうって変わって、午後から鎌倉はすんごい雨です!警報出てます!
でも・・・家の中で守られているときは、雨って好きなんですよねえ。雨音聞いてるのが好きなんです。読書日より。こんなとき、物語を語ってくれるストーリーテラーがいたら、雨の日はより一層特別な日になりそう。
そんな雨の日に語られたお話が、今日の一冊『ヒットラーのむすめ』
≪『ヒットラーのむすめ』あらすじ≫
雨がふりつづいていたある日、スクールバスを待つ間に、オーストラリアの少女アンナがはじめた「お話ゲーム」は、「ヒットラーのむすめ」の話だった…。もし自分がヒットラーの子どもだったら、戦争を止められたのだろうか?もしいま、だれかがヒットラーと同じようなことをしようとしていたら、しかもそれがぼくの父さんだったら、ぼくはどうするべきなのだろうか。(BOOKデータベースよりそのまま転載)
前々から気になっていたこちらの物語。ヒットラーと聞くだけで、憂鬱になりそうですが、そこに娘が出てきて、この表紙となると、ちょっと雰囲気が変わってきます。思ってたとおり、よかった!!!
舞台は現代のオーストラリア。スクールバスを待つ間の「お話ゲーム」で、空想の話として語られた「ヒットラーのむすめ」の話に、マークとトレーシーはどんどん引きこまれていきます。そして、戦いがカッコイイと思っていて、話に茶々を入れたがるベンを避けて、マークはアンナに話の続きをせがむのです。マークはもはや他人事とは思えず、もし自分の親がそうだったら・・・とやがて考え込むようになっていくのです。
暗いというよりも、どちらかというとちょっと切ない。お父さんから、家庭教師のゲルバー先生からの愛情を欲しているヒットラーの娘ハイジ。でも、自分の胸の中にだけとどめておきます。それが健気で・・・。
ハイジは隔離されています。ハイジの存在は秘密なのです・・・顔にあざがあって完璧ではないから。隔離されているので、ハイジには外の状況は全くワカラナイ。それでも、色んなことを感じ、察していく。
【ここがポイント】
・現代っ子たちが、戦争を遠い昔話としてではなく、自分のこととして感じられる仕立て
・戦争の悲惨さよりも、自分だったらその状況でどうしたか、ということに焦点が絞られている
・真剣に悩むマークから質問された、大人たちの対応が考えさせられる
・暗いのではなく、考えさせられる
・小学校高学年から。本が苦手な子でもいけそう。
・大人こそ読みたい!
マークには大体想像がつくのです。そういう状況になったら友だちがどうなっていくのか。
夢の中で友だちは、みなナチスに傾倒しています。それをマークはこんな風に冷静に思うのです。
ボンゾはわくわくするようなことが好きなだけだし、ベンは考えたりしない。それにトレーシーは友だちと同じことをしているのだ……。(P.140)
そう、平和なときは仲良くできた人たちが、人が変わっていってしまうのが戦争。
親だってワカラナイ。マークが質問したときのめんどくさそうに答える場面見ると・・・。
ラストは、もしかしてもしかして、と思っていた通り。不覚にも涙してしまいました。
とても、胸に残る物語で、雨の日のたびに思い出すことになりそうです。
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