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『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

他人事ではない『ともだちのしるしだよ』

2017-07-11 08:28:21 | 絵本


『ともだちのしるしだよ』カレン・リン・ウィリアムズ/カードラ・モハメッド作 ダーグ・チャーカ絵 小林葵訳 岩崎書店

今日の一冊はコチラ。アフガニスタンとパキスタンの国境にあるペシャワール難民キャンプを舞台にした物語。
難民キャンプを知らない子どもが聞いたら、それほど胸に迫るものはないかもしれない。でもね、大人はもうその背景にあるものを思うから、泣けて泣けて仕方がない。難民キャンプの惨状を描いてるというより、友情を描いているんです。でも、ところどころで描かれる現状に胸が痛む。

「おかあさん、なんで泣いてるの?」

と子どもに不思議そうに聞かれました

難民キャンプに暮らすリナとフェローザ。古着などを分けてくれるトラックが到着した際、二人は、それぞれ真新しいサンダルと片方ずつ見つけるのです。青い花飾りのついた、黄色のサンダル。

10歳のリナは、もう2年も裸足のままだったのです。それだけでも、大人は彼女たちが、どんな生活を強いられてきたか想像できて、胸が痛む

リナがもう片方のサンダルを履いたフェローザを見つけ、最初に声をかけたとき、フェローザは急に背を向けて行ってしまうんですね。複雑だったんだろうなあ。サンダル守りたかったんだろうなあ。

川で洗濯しているときに再会した二人は、順番こにサンダルを履くというアイディアを思いつきます。

「ともだちのしるしだよ」

って。いたずらっ子の弟たちからサンダルを守ったり、お互いの亡くなった家族の話をして涙したり、二人の距離は縮まっていきます。

ある日、2年待ったすえ、リナのうちほうはアメリカ行きのリストに名前が載ります。でも、フェローザのほうはなくて・・・。

「はだしじゃ、アメリカにいけないでしょ」

とサンダルをリナに差し出すフェローザ。もうね、この辺からうるうるで読めなくなってきます。結局リナはお母さんに革靴を用意してもらい、フェローザにサンダルを渡すのですが、やっぱり片方はあなたが、持っていて、と駆け寄るフェローザ。

「おもいでのサンダルだから」
「ともだちのしるしだよ」


・・・。

・・・。

母、涙でうまく読めない。

20年以上にわたり、難民キャンプで救助活動に関わっていた作者が、ある日
「なぜ、わたしたちみたいな子どもを 描いた本が ないの?」
と一人の難民少女の言葉をきっかけに生まれたそうです。

こういう絵本は手渡さないと読まないだろうなあ。でも、学校の読み聞かせで読むには、タイミングをはかる絵本かもしれない。さらっと何かのタイングで差し出せるといいのだけれど。

心にリナとフェローザという友だちを持った子どもたちは、難民キャンプが他人事ではなくなります。ぐっと身近になる。
大人も読みたい絵本です。

メッセージ性が高いと子どもから敬遠される

2017-07-06 08:34:27 | 絵本


『ほんとうのことをいってもいいの?』(2002年)パトリシア・C/マキサック文 
ジゼル・ポター絵 ふくもとゆきこ訳 BL出版


今日の一冊はコチラ。秀作といわれているメッセージ性の高い絵本です。

でもね・・・メッセージ性の高い本って、子どもから敬遠される(笑)。大人の「こうあってほしい」という意図が見え隠れするから。こういうものに関し、子どもは敏感に察知します、そして嫌がります。この子どもの察知能力がすごくて感心しちゃう。

さて、この絵本のテーマは、正直に本当のことを言うのはいいこと?悪いこと?ということ。
初めてお母さんにうそをついて後悔したリビーは、その日から本当の事だけ言おうと誓いますが、本当のことを言えば言うほど、周りを傷つけてしまい、みなから嫌われるはめに…。

大人が読めばとてもいい絵本だと思います。いわゆる教訓めいた本やしつけ絵本とは違います。それでも!!!タイミングと子どもを選ぶ本かな~。

例えば、うちの次男(小3)はこのリビーみたい。正直な感想言っては、まわりを怒らせます。お母さん、おなか出てるね、とか(笑)。でね、こちらも伝えたくなるわけです。正直だったらいいってもんじゃあないのよ、って。相手が不愉快になる言い方はしないとかね。リビーのおかあさんはこう言います。

「おもいやりをもって ほんとうのことをいうのは、ただしいことなのよ」


これこれ!次男にも分かってもらいたい!でも、こちらの意図が見え隠れしたら受け取らないだろうな~、と思いつつ実験的に読んでみる。案の定嫌がりました。絵本は基本何でも好きなので、面白くないというのは珍しい。やっぱりね、という感じでした

さらに、やってはいけないと言われてることを‟あえて”やってみました。
それは、「聞いててどう思った?」と質問すること。授業じゃないんだから、聞くのは野暮ですよね。でも、予想通りの反応かどうか知りたくてあえて。はいはい、分かりましたよっ!みたいなふてくされた予想通りの回答がきました(笑)。

誤解のないように、この絵本自体はいい絵本です。でも、うちの次男にはドンピシャすぎて嫌がられるわけです。絵本から学べというメッセージが強すぎて。人とタイミングを選びます。

そんなわけで、メッセージ性の高い絵本は、慎重になります。自分からだけでは手に取らないような本にも出会ってもらいたい。平和の本とかね。でも、それ以上に大切なのは、本とともにあるただただ楽しいという時間

以前小学校の元校長先生のおすすめ絵本で、日野原重明先生の訳した『勇気』という絵本がありました。こちら↓


当時勇気を必要としていた長男に読んでみたら、まあ拒否られましたね。大人が読むメッセージ本。子どもは嫌がります。もちろん、これで「そうだったのか!」と救われる子もいるかもしれないけれど、差し出されるタイミングを選ぶ本です。

これを伝えたい!よりも、心に寄り添える絵本を選んでいきたいです。

ひみつ♪な絵本特集

2017-06-29 10:52:15 | 絵本


前回の児童文学ピクニックのテーマ『ひみつ・かくれ家』は、絵本もいっぱい
ありすぎるので、いくつかセレクトしてピックアップしてみますね

まずは、3年生の読み聞かせで喜ばれたのがコチラ↓


『ひみつだから!』ジョンバーニンガム作・絵 福本友美子絵

夜になるとふらっといなくなって、朝になっては帰ってくるネコ。ネコは一体夜どこに行ってるの?そんな疑問から生まれた楽しい物語。犬に見つからないように気をつけながら、ネコの女王さめのパーティーへ!
読み始める前に、

“ねえ、ネコって夜どこ行っちゃうのかな、って思ったことなあい?どこ行くか知ってる人~?”

って一言聞いてから、始めると、子どもたちはぐっと物語に引き付けられるようです


お次は、コチラも3年生の読み聞かせで、子どもたちが大喜びだった一冊↓


『ひみつのひきだしあけた?』あまんきみこ作 やまわきゆりこ絵

“わあ、『ぐりとぐら』と同じ絵だあ!『ぐりとぐら』持ってるー!”


って何人もの子が声あげます(かわいかったなあ)。お話を書いたのは、あまんきみこさんですが、山脇百合子さんの絵というだけで、子どもたちは嬉しくなっちゃうみたい。いかに親しみがあるかが、分かります。ストーリーもおばあさんの引き出しがするするするする、どんどん伸びて、壁に穴開けて、まだ伸びて、庭にまでいっちゃうところが面白い。


隠れ家だったら、やっぱり木や茂み、自然と結びついてるものがワクワクします
私はやっぱりこの2冊!


『おおきなきがほしい』佐藤さとる作 村上勉絵

古い絵本ですが、子どもの夢がぎゅぎゅっと詰まっていて、今の子たちが読んだってワックワク。木の上のおうち、いいな。作者はコロボックルシリーズの佐藤さとるさんです。


『みどりの船』クエンティン・ブレイク作・絵 千葉茂樹訳

こちらは、以前このブログでも詳しくご紹介しました(そのときの記事はコチラをクリック)が、5年生のときの読み聞かせだったかな?のとき、子どもたちからも大好評だった物語。ごっこ遊びの金字塔!


絵が美しくて、しんみりいいなあと思うのは、『長くつしたのピッピ』や『やかまし村』シリーズでお馴染みのリンドグレーンのコチラ↓

『ひみつのいもうと』A・リンドグレーン作 ハンス・アーノルド訳 石井登志子訳

空想で生み出した秘密の双子の妹と、美しい谷などに冒険に出かける物語。これは、女の子は好きだなあ


一方力強く、ちょっぴりシュール(?)な絵でうちの次男坊(小3)を魅了したのはコチラ↓


『ひみつの川』マージョリー・キナン・ローリングズ作 ダイアン・ディロン絵 小島希里訳

作者は『子鹿物語』を書いた人なんですね。3年生の読み聞かせで読んでほしい!と次男からリクエストされたのですが、文字数多く、教室で大勢相手に読むのには向いてないかも。絵がね、どちらかというとちょっとマオリやハワイアンの神話に通ずるようなところがある。だからなのかな、なんだか神秘的。

ほかにもい~っぱいあるのですが、長くなるので、今日はこんなところで!




住宅街の中のパワースポット!?

2017-06-21 13:33:30 | 絵本

『めっきらもっきらどおんどん』長谷川摂子作 降矢なな絵 福音館書店

今日の一冊はコチラ。
何度読んでも飽きない、子どもたちに大人気の絵本です。神社の木の根っこの穴から、妖怪の世界へ転がり込み、妖怪たちと楽しく遊ぶお話です。これは、ホント傑作。絵も言葉のリズムもいい。学校の読み聞かせなんかで読むと、子どもたちが一斉に呪文をとなえてくれるんです。それが、たまらない

昨日三男(4歳)の遠足で立ち寄った、白山神社というところがね、まさにこの絵本に出てくるような場所だったんです!
主人公のかんたがめちゃくちゃに唱える呪文
“ちんぷくまんぷく あっぺらこのきんぴらこ じょんがらぴこたこ めっきらもっきら どおんどん”
を唱えたら、妖怪たちの世界へ滑りこめるのでは?と思わせてくれるようなところでした。こんな感じ↓



住宅街、バス通り沿いにあって、決して人里離れているわけではないんです。日常の延長線上にある。なのに、鳥居をくぐり、階段をのぼれば、凛とした別世界。後ろを振り返れば、家々は階段の下に沈んで見えず、見えるのは北鎌倉の山並みだけ↓



神社横の森からは、光が降り注いでいて、異界への入り口になっているのでは?と思わずにはいられない光景なんです↓



そして、神社のあとは散在ヶ池森林公園へ↓



散在ヶ池といえば、こちらです↓

そのときの紹介記事はコチラをクリック

散在ヶ池森林公園もとってもよかったあ。一歩森へ入ればシンと静まり返って、聞こえるのは歩く音と、高らかに歌うオオルリの声のみ。片面は断層の岩山、足元にはせせらぎ。とても暑い日だったのだけれど、森の中は涼しくて、流れる空気が違う。



いいなあ、ここ

散在ヶ池は人工湖で、この辺は昔子どもの水難事故が多かったことから、心霊スポットでもあるみたい。けれど、森の中は、いまや現役の子どもたちの笑い声が鳴り響き、むしろパワースポット!?のように感じました。だってね、子どもたちはキラキラしているし、悪い霊はよりつけないよね。浄化されちゃうよね、って

天園ハイキングコースまでつながっているようなので、次回時間のあるときにはもっともっと歩きたい場所となりました♪


梅雨時のお楽しみといえば?

2017-06-15 17:27:17 | 絵本


梅雨時のお楽しみのひとつは、なんといっても紫陽花・・・よりも、桑の実(笑)。
家の近所でも桑の実がたくさんなっていて、指が紫色に染まり、つぶされた実で道路が悲惨な状態になっています
本当は桑で作りたかったけれど、今回は冷凍のミックスベリーで、お手軽にベリータルトをつくりました♪



ヨーグルトが爽やかな、フローズンベリータルト。色がキレイでテンションあがります。淵に飾るのは、ブルーベリーよりもラズベリーのほうがかわいかったかな。

というわけで、今日の一冊はコチラ!↓



『ブルーベリーもりでのプッテの冒険』エルサ・ベスコフ作・絵 小野寺百合子訳 福音館書店


お母さんの誕生日プレゼントにしようと森へベリー摘みにでかけたプッテ。ところが、見つからずに泣いていると、ブルーベリーの王さまが現れます。王さまの魔法で小さくなったプッテは、王さまの子どもたちと遊んだり、コケモモ母さんのところに行ったり、楽しいひとときを過ごします。

ベスコフは絵がきれい!北欧好きの方なら、プッテの持っている白樺のカゴにもテンションあがるのでは?
私の場合は、コケモモのように日本で見ないものに出会うとワクワクします。IKEAにあるリンゴンベリージュース、あれです、あれ。あれがコケモモジュースですね。コケモモの場面が好きで思わずポストカードも飾っています↓



もみじの葉を張った木の皮のヨットで川遊びをしたり、ねずみにまたがって、森をかけぬけたり、クモの糸のブランコで揺られたり。子どもたちは、そんな場面に“いいな~、いいな~!”って憧れのため息。ベスコフの描く北欧の森はいつも本当に楽しそうで。動植物たちと同じ目線なのがいい。
贈り物にも喜ばれそうな一冊です