道草あつめ

日常思いついた由無し事を、気ままに拾い集めています。

「大公のバレー」

2010-03-27 13:04:18 | 音楽
最近、頭の中でなり続けている(これをデュラン効果と謂うらしい)のが、スウェーリンク「大公のバレー(Ballo del Granduca)」。 軽快なリズムで古雅な和声を刻む佳曲である。

オルガンによる演奏

チェンバロによる演奏

スウェーリンクというのは、多くのオルガニストを育て、トッカータやファンタジア、リチェルカーレの類を多く作曲し、 こういった面で鍵盤音楽の発展に大いに寄与した人物である。 しかし、私は、そういった彼の革新性よりも、 むしろ古くさい変奏曲の方に魅力を感じる。
「我が青春は過ぎ去りぬ(Mein junges Leben hat ein End)」
「緑の菩提樹の下で(Onder een linde groen)」
「おかしなシモン(Malle Sijmen)」等々。
これらは、当時各地で歌い継がれてきた民謡・舞曲の旋律を主題にして、 鍵盤的技法を様々に駆使した変奏曲を展開している。 音楽としての新しさという歴史的意義こそ薄いが、作品として成熟した厚みがある。


そもそもの原曲は、1589年、メディチ家当主フェルディナンド1世とフランス王アンリ2世の孫娘クリスティーヌとの結婚式典のためにエミリオ・カヴァリエリが作曲した舞曲「O che nuovo miracolo(おお、何という新しい奇跡)」らしい。 この結婚式では歌劇「La Pellegrina(巡礼の女性)」が上演され、「O che nuovo miracolo」はその幕間劇として使われた。
そのバスパート、すなわち踊りのリズムを刻む旋律がなかなか特徴的なのだが、これをそのまま最低音に用いて鍵盤曲にしたのが、スウェーリンク「大公のバレー」である。

つまり、「大公(Granduca=Grand Duke)」というのは、トスカーナ大公フェルディナンド1世・デ・メディチのことだったのだ。なお、「Ballo」を「バレー」とするのはいささか訳しすぎで、 「踊り」とでも言っておいた方が良いのかもしれない



youtubeで音源を探すと、いろいろ面白いものが出てくる。

ほとんど骨組みだけのリードオルガン
弾いているのは工房の職人さんと思われる。なかなか味のある素晴らしい演奏。

クラヴィオルガヌム
チェンバロとパイプオルガンを一緒にした楽器。 原理的に可能であろうとは思っていたが、まさかそれを聴くことができるとは思わなかった。

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