道草あつめ

日常思いついた由無し事を、気ままに拾い集めています。

あんぱんの日

2007-04-05 13:48:30 | 旬事
「4月4日は"あんぱんの日"」
そう言って、コンビニにあんぱんがずらりと並んでいた。

最近、競争過多のコンビニでは、
なにかにつけてイベント化して商品を売ろうとする。
結果的には他のコンビニも追従するからイタチごっこなのだが。

話が逸れたが、4月4日は「あんぱんの日」らしい。
木村屋の初代安兵衛があんぱんを明治天皇に献上したのが由来である。
その、パンという西洋の素材を用いて、日本独自のものを生み出した趣向は、
明治の精神を代表するものとも言える。
そういう意味では、「あんぱんの日」というのも、なかなかたいそうなものである。

パンで餡を包むということが、
何故それほど「日本化」としての意味を持ち得るのであろうか。
「餡を使ったから」というだけで「日本化」といえるものであろうか。
日本の食材を使うだけで「日本化」なのであれば、
カレーパンを「インド化」とも言えるハズである。

おそらく、餡という食材に加えて、
「包む」ということがミソなのではないだろうか。
すなわち、西洋ではパンの食べ方において、
・塗る(ジャムやバター)
・のせる(ハムなど)
・はさむ(サンドイッチ・ハンバーガーの類)
といったヴァリエーションがあったが、
包むというのはそれほどなかったのではないだろうか。
もちろん、チーズやゴマ入りのパンはあるが、
それは生地に「混ぜ込む」のであって、
あんぱんなどのように「包む」わけではない。
それを木村安兵衛は、酒饅頭をヒントに、
「包む」スタイルのパンを発明したのである。
これは、パンの酒饅頭化であり、「日本化」と言える。

「塗る」「のせる」「はさむ」ではなく、
「包む」というスタイルを選択したことは、
物質的・技術的要素を取り入れつつも、
それを自前の思考様式・精神文化によって活用するしたということである。
すなわち、まさに漱石の言った「和魂洋才」である。


しかし、ここで問題となるのは、
「包む」ことが、「塗る」「のせる」「はさむ」の西洋的スタイルと異なり、
日本と西洋との違いを言うことはできる。
しかし、「包む」動作は、日本独自のものではない。
中国にも、まさに「包子」と呼ばれるもの、すなわち肉まんの類がある。
そして、中に餡を入れる点においても、まさにあんまんなるものがあるのだから、
パンの酒饅頭化は同時に「あんまん化」とも言え、
日本独自の文化形態とは言いがたい。
中国だけでなく、韓国にも中華まんのようなものがあるらしいのだから、
もはや、日本の特徴というよりは、東アジアの特徴というべきであろう。

思うに、あんぱんとは、
パンを「東洋化」あるいは「東アジア化」したものではないだろうか。
すなわち、「西洋と日本」ではなく、「西洋と東洋」という対比の構図である。

パンの形状をそのままに異物を追加して個性を保つ「塗る・のせる・はさむ」、
パンの形状を変化させ異物を内に含んで調和する「包む」、
安易な比較であるが、西洋と東洋の精神文明的差異というのは、
案外、パンや酒饅頭から論じることができるのかもしれない。


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