道草あつめ

日常思いついた由無し事を、気ままに拾い集めています。

龍門石窟訪問記

2007-04-06 22:23:02 | 旅中
洛陽市街からバスで1時間ほど行ったところに、
龍門石窟という遺跡がある。
伊河の両岸の岩壁に、無数の仏像が掘り込まれたものである。

穴の数は2000余り、河の対岸から眺めると蜂の巣のようである。
仏像は巨大なものから手のひらより小さなものまであって、総数は10万体以上。
想像を絶する労力によって造られた、すさまじい遺跡である。

仏像のうち最も有名なのは、奉先寺の盧舎那仏、
巨大で威厳あるその仏像は、則天武后をモデルにしたとも言われる。
しかし、実際に見て圧倒されるのは、万仏洞であった。
遠くから見ただけでは、穴の壁に網目模様があるようにしか思えないのだが、
近づいてよくよく見ると、全て小さな仏像。
「万~」という名前でも、さすがに1万もないだろうと思っていたら、
ところがどっこい、その小さな穴の中には、1万5千もの仏像が彫られているという。
その手間を考えると、気が遠くなる。
まれにお供え物がされている仏像もあるが、
仏像よりも、これだけの仏像を彫った人々に合掌したい気分になる。

ところで、ある程度規模の大きい仏像の中には、
顔がないものがかなり多い。
それも、人為的に削り取られたような跡がついている。
廃仏の被害にあったのかと思っていたのだが、
後で説明を読んでみると、実は盗掘によるものらしい。
現在行方が分かっているもののうち、
欧米の博物館にあるものも少なくないが、
大多数は日本にあるという。
つまり、旧日本軍が、戦争の際に持ち帰ったということである。

実に無粋である。
どうせ奪い取るのなら、仏像まるごと奪い取るべきであろう。
顔だけ削り取ってしまうと、顔も残された本体も、不気味である。
まるごと持ち帰る余裕がないならば、そもそも盗掘などすべきではない。

ここで先の戦争の是非を論じるつもりはないが、
こういった野蛮な行いは、勝っても負けても自国の名誉を損なうのである。
いまどき「小日本」なんて言う人はいないが、
往時は言われても仕方ないことをしていたのである。


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