今日の私たちのお部屋は、ヤマネちゃん。
どれどれ・・・ パパいるかな?
いました・・・
パパさん、一人でまったり。
パパ 「あれ?ずいぶん早いじゃん」
ママ 「頂上行かずに帰って来た」
パパ 「えっ!?そうなの? 何で? 行ってくれば良かったじゃん」
ママ 「疲れて行けなかったの!」
パパ 「なんだ、だらしないなぁ」
ママ 「パパに言われたくない! パパなんて行く前から諦めてたじゃん。」
パパ 「諦めたんじゃない。 ちゃんと自分のことをわかってたから最初から行かなかったの!」
ママ 「・・・・物は言いようだよね。」
パパ 「まあ、何でもいいよ。 それよりさ、今日は布団10枚に20人だってよ」
ママ 「え~~っ! そんなに? でも常念より部屋がちょっと広いから圧迫感は余りないね」
・・・・ってな具合で他愛のない会話は続いたのでありました。 以下省略。
隊長も無事に帰ってきたので、ちょっと早いけど夕食にしましょ。
昨年と同じく、今年も素泊まりにしました。
なんかゴハン多すぎ~。
見た目は全然美味しそうじゃありませんが、実際はそんなことありませんよ。
パパはチキンカレー、 ママはグリーンカレー、 隊長は親子丼のご飯と具が別バージョン。
生ビールも飲んじゃおう!
今日はお疲れ様!
・・・・でも ママはなんとな~くスッキリしなかったんだ。
やっぱり頂上踏めなかったことが。
今までもそんなの何度もあったけど、
せっかくのお泊り山行だったのに、しかも、北アルプスだったのに・・・。
やっぱり悔いが残る・・
ご飯食べ終わってまったりしてたら、一人の男性が隊長に近づいてきました。
「よおっ!」 (だれ?だれ?この人だれ?)
ビール片手に、顔が真っ赤。
かなり出来上がってる様子です。
隊長が一人で針に登ってる時、声を掛けてくれ、一緒に頂上を踏んだ、ということでした。
それはお世話になりました。
色々と話をしていたら、以前は娘さんと一緒に山に登っていたそうですが
結婚してしまったので、今は一人寂しく・・・なんですって。
山のお花が大好きなんだそうです。
お花に会うために山に登ってるんだって。 (あらステキ)
頂上行けなくて残念だった、と私が言ったら、
「いいんだよぉ~ 山の歩き方は人それぞれなんだからぁ~。
頂上行きたい人は行けばいいし、花が目当てなら花見て帰ればいいんだよぉ~。
こうしなきゃいけない、なんてのは山にはないんだからさぁ~。
家族で歩けるってすごいことじゃん。
それだけでもう目的果たしてるようなもんだよぉ~。 俺も誰かと歩きたいよぉ~。」
完全に酔っぱらってるオジサン・・・ でも そうだよな、それでいいんだよな、って
私は妙にキュンとしてしまったのでありました。
何度も何度も同じフレーズを繰り返すこのオジサン・・・ずっと聞いてると 明日の朝までかかりそうだったので
「そろそろ涼しくなってきたので、お部屋に入りますね。楽しい話をありがとうございました。」
と行っておいとましました。
気になって部屋に入ってから外をのぞいてみると、今度は他の登山客を前に、何やら大きな声でおしゃべりしているようで、
チラッとその方の表情を見たら、 『』 こんなになってました。
酔っぱらってるけど なんだかいい話してくれたオジサン。
こういう出会いもちょっといい。
夕日の残りを浴びたシャチホコみたいな雲と 黒い影山。
一日が終わろうとしている・・・
またちょっと逸れちゃうけど、お話聞いてもらえますか?
同じヤマネちゃんのお部屋で隣の布団になった女性。
山岳会の個人山行で女性一名、男性二名で来てらっしゃいました。
私たちの大先輩のその女性は パパと私が、疲れて針の頂上を踏めなかったことを伝えたら
「え~~~っ!もったいないっ!針に来て針の頂上踏めないなんて考えられない!
今日はこんな良い天気だったのにィ~~! こんなすごい展望、そうそうないわよ~!
私は山に登ったら、絶対に頂上行かないと気が済まないの。 もったいないわね~!」
さっきの酔っぱらいオジサンとは真逆の発言・・・
でも全然嫌味な言い方じゃないので、そこんとこ誤解のないように。
パパは、顔は笑いながらも 心のどこかで 「ふんっ・・」 てなってたのがわかった。
でも・・私は・・・・たたみかけていた心のひだひだの隅をチクっと針で突かれたみたいに 「・・・やっぱりそうだよなぁ」 って思ってたの。
針ノ木岳って、ここを目指してくる人よりも、縦走の通過点として捉えてる人の方が多いみたいです。
今回ヤマネちゃんのお部屋で一緒になった方たちも、なんと私たち以外は全員が縦走中。
その女性を含むパーティさんは、今回、二泊三日で蓮華から船窪岳、烏帽子岳を通って高瀬ダムに下りるとのこと。
もう一つ、大所帯のパーティさんは針ノ木から爺ヶ岳を回って扇沢に戻るとか・・・
この後のお部屋の雑談は、どこそこの道は険しかったとか、あそこの山はきれいだったとか、
ポレポレ隊が歩いたことのない山域の感想大会になったので ちょっと蚊帳の外みたいな気分になって
ニコニコ聞きながらも先に横にならせてもらっちゃいました。
この時、隣のお布団の女性が言ったんです。
「大丈夫よ、一日寝れば体力はかなり回復するから。 明日はテッペン踏めるわよ。
せっかく来たんだから、絶対に上がっていきなさい。 針でも蓮華でもどっちでもいいから。
でも、ステキじゃない! 家族で山登れるなんて。 羨ましいわ~。」
この最後の言葉・・・さっきの酔っぱらいオジサンもそうだったけど、今までどこの山小屋で一緒になった方からも言われました。
そうだよね。 家族で山に登れる、って、それだけで幸せなことなんだよね。
おやすみなさい。
翌朝・・・皆さんがゴソゴソと起き出しました。
私もすっかり目が覚めてしまいました。
隣のお布団のパーティさんたちは昨夜寝る前に
「明日は船窪小屋泊だから急がなくていいよね、ゆっくり出発しようね」
と話していたので、まだ寝ているようです。
そーっと起きて廊下から窓の外を見てみると・・・・
月が見える! 稜線も見える!
昨日の疲れはほとんどないっ!
で、まず隊長に 「いい天気だよ!」 と声をかけ、次にパパさんにもおそるおそる聞いてみる。
「身体、大丈夫そうだったら行ってみない?」
パパはね、昨日の段階では全然そんな気なかったんです。
二人で(もしくは隊長だけ)蓮華行ってくるといいよ、って言いながら寝たの。
でも・・・私は、三人で歩きたかった。 頂上に向かう道を。
だんだん空が明るくなる。
そして、昨日は見えなかった富士山が!!!
結局・・・・好天の気配に引っぱられるようにパパも外へ。
ソイジョイとカロリーメイトを頬張って歩き出す。
本当はね、パパは、針ノ木に行きたいって言ったんです。
が、隊長は既に昨日登っていて、蓮華に行きたい、って。
私は三人で登るならどっちでも良かった。
でも当初の計画は初日に針で翌日は蓮華。
だから当初の予定通り、(つまり隊長の希望通り)蓮華に向かって歩き出しました。
コマクサちゃん、まだ咲いてるかな。
どんな景色が待ってるのかな。
ワクワクする~~
小屋を真ん中に針の道とは逆側が蓮華への道。
昨日は反対側の上から小屋を見ていたっけ。
針が見えた!(真ん中のピーク)
昨日は、たった1時間の道のりが、私には届かなかった。
パパなんて全くその気がなかった・・・
今日は行けるかな。
イワツメクサだって頑張っているんだから。
んーっ!! スバリさんに抱かれちゃった。
ゆっくりね。 とにかくゆっくり。
標準コースタイムでは、蓮華まで針ノ木より10分プラスの70分。
私たちだともっとかかりそう。
何見てるの~?
剱さんでしたか!
ああ・・・・昨日歩いた道が見える・・・
私、どの辺で引き返したんだろ。
針(右のピーク)さん、昨日はたどり着けなくて残念でした。
朝日に染まるあなたは カッコイイ!!
スバリさんの右側にツルギさん。
パパも「来て良かった」って絶対に思ってるはず!
隊長はいつもと同じ、淡々と。
あっ!!!!!
突然現れた女王。
ちょっと遅かったけど でも会えた。
朝日が上がった。
この眩しさは最高のプレゼント。
雷鳥さん、いないかな。
いないね・・・
けっこう急だけど、今日は大丈夫。
ポレポレシャドウ。
あと少しだね。
・・・・実はこの時、私たちは目の前の山が蓮華のピークだと思ってました・・・・
私の足、ながーいっ!
なんてふざけて楽しんでた、まだこの時は。
でも、本当に気持ち良くて、嬉しくて。
パパ、良かったでしょう?
やっぱりさ、上に登らないと見えない景色ってあるんだよ。
なんて・・・言ってました、この時は。
ああっ! いっぱい!!
上から来た方に撮ってもらって大喜び。
そう、今回、三人の写真ないもんね。
針とスバリの鞍部から立山が見え始めました。
槍だって負けてませんよ~!
やっぱり目立つ。
どこからでも。
コマクサちゃん、いっぱい待っててくれました。
そう、蓮華岳はコマクサの群生地として有名なんです。
ただ、近づくことはできません。
そっと遠くから見守りましょ。
パパもコンデジで頑張ってる。
This is it!
私だって負けないよ。
もういっちょ。
テン場もズーム。
このテン場は小屋から一番遠い場所だったかな。
写真撮りながらだから かなり遅いペース。
まあ、こんな近くにも!
砂礫の上はコマクサの楽園になってました!
う~ん、気持ちいいっ!
朝日と一緒に歩けるなんて贅沢だあ~。
でも・・・・さっき頂上だと思ってた場所って もう過ぎたんじゃない?
どこが頂上なの?
そんな不安を蹴散らすように、チングルマの果穂ちゃん、そよそよ。
昨日、針に行く途中ではまだ花が咲いてたよね。
あら・・・? また目の前にこんな風景が・・・
どこが蓮華なの~? (遠くに見えるあのおっきな山が蓮華だった・・・・)
隊長はどんどん進んでいく。
不安はよぎるんだけど、何しろ360度、大興奮の展望。
今はとにかく感動しよう。
ほら、見て! 富士山を真ん中に南アルプスと八ヶ岳が一直線上!
すごい、すごい!!
あの右側の塊のどこかに かわみんちゃん が。
ヤッホー!!!
今、この景色のあちこちで
歓声が上がっているんだろうね。
みなさ~ん! わっしょーい!!!