徒然なるまゝによしなしごとを書きつくる

旧タイトル めざせ、ブータン

福島原発事故 もう一つの後始末

2011年04月07日 | 福島原発

福島原発事故の技術的処理の他に、被害補償という大変な問題が控えている。国や東電は今のところ最大限の補償を努力するとは言っているが、10兆円とも言われる補償費を右から左に簡単に出せるはずも無く、長く尾を引きずる問題となると考える。

この問題は被害者側からの補償額に対する不満と加害者側の財源不足により、間違いなく法廷闘争になり、司法の場で決着をつけることになろう。その場合,下記のような争点が考えられる。

1.自然災害による不可避的な事故か?

2.被害者は誰か?

3.加害(責任)者は誰か?

4.妥当な補償額とは?

1.の不可避的な事故か否かについては、女川原発や福島第二原発が同じ状況にありながら安全に冷温停止した事実を考えれば、福島第一の事故を不可避と強弁することは難しいだろう。

被害者は周辺20kmの強制退去者、20-30kmの屋内退避者、出荷停止を指示された農業従事者、漁業従事者等はまず明確である。しかし、それ以外にも風評被害により損失をこうむった農業、漁業従事者、死者は出ていないものの、健康被害をこうむったと主張する日本国民。また、原発事故処理の為に作業を行っている方々に健康被害があれば、当然被害者と言うことになる。 加えて、外交問題ではあるが、韓国を始めとする近隣諸国も被害主張を行う可能性はある。国の指示に基ずく退避や出荷停止以外の被害認定は、水俣訴訟や原爆被爆者認定と同様に困難な道筋が想定される。特に健康被害については医学者の中でも意見が分かれており、確定的な判断が難しい為、明らかな死亡以外は難しいだろう。また、本事故による癌等の発生は10年以上後になるので、訴訟が起るのはその後かもしれない。

さて、恐らく最大の争点は、この事故の一義的な責任者(加害者)は誰か、と言う問題だろう。この議論を始める前に明確にしておきたい事は、もし一義的な責任が国にある場合は補償費を国が払い、その支払いは税金で広く国民から徴収する事になる、また東電にその責任があるとすれば東電はそれを最終的には電気料金に転嫁し、首都圏受益者から徴収する事になると言うことだ。

事故のあった福島第一原発は東京電力に所属し、その直接的な管理責任は東電にある。しかし、東電は電力を供給する公共事業者であり、原子力を含むその運営には国が深く関わっている。また、東電は国の指定する基準に沿って原発を建設・運営しており、そこからの逸脱が無い限り国の責任は免れない。特に今回の全電源喪失イベントに関して、国の安全委員会基準では検討の必要は無い、と規定しており問題がある。

一方、原発を誘致した県、および市町村の責任はどうだろうか?最大の被害者である地元に責任を問うのは酷ではあるが、誘致反対の選択はあったはずだ(現にそのような自治体は多い)、しかし誘致メリットもあったので首長選挙等で確認された住民の総意として誘致したことも事実であろう。(国、東電に騙されたという意見もあろうが、騙されるほうも悪い。)

いづれにせよ、原発事故は現在進行中であり現時点で責任追及することは、無意味である以上に有害でさえある。当面は事故の拡大を防ぐべく全員が協力して事に当たる必要がある。その上で、事が収まった後に国、東電、および誘致自治体に対する責任追及が、長く法廷の場で行われる事を念頭に入れておく必要があろう。

 



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2 コメント

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Unknown (まさ)
2011-04-07 13:57:32
今回の被害地は震災以前から衰退の過程にありました。これを元に戻しても結局、衰退の道は止まらないでしょう。また、これに託けて政治家が利権をあさるような事態は見たくないですね。
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Unknown (TAXI)
2011-04-07 13:11:33
http://yamauchi-koichi.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-8783.html
そろそろ復興計画や予算が話題になりつつあります。 予算ありきの議論では、ハード中心・人間不在の復興になり、阪神大震災の教訓をいかせません。

阪神大震災の復興では、被災者の意見に耳を傾ける間もなく、都市計画や土木の専門家的発想でハードのインフラ計画が決まり、焼け太り的に神戸空港まで作って赤字を増やしてしまいました。

阪神大震災では被害額約10兆円、復興費約16兆円となり、被害額を大幅に上回るインフラをつくるという復興計画で、まさにバブル発想・高度経済成長期発想の復興モデルでした。
財政難かつ環境重視の21世紀型復興モデルにはなり得ません。

神戸みたいな都市部ならインフラに思い切って投資しても、ある程度は地価の値上がり等で利益が出るかもしれません。 しかし、三陸の農漁村の復興では、神戸モデルは真似できないし、
絶対に真似すべきでもないと私は思います。
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