徒然なるまゝによしなしごとを書きつくる

旧タイトル めざせ、ブータン

量子進化 J・マクファデン 生命と量子力学と人間原理

2016年06月13日 | 生命

量子進化 J.マクファデン 生命の起源に迫る重厚な内容を含む本だ。

原初の生命はRNAそのものだったというRNAワールド仮説が定説となりつつある。RNAは自己複製をすると共にそれ自体が3次元構造を持つ酵素の役割も果たす事ができる。つまり、RNA単体で生命の基本要素を満たす事ができるからだ。

最小の自己複製分子は32個のアミノ酸がつながったRNAペプチドと考えられる。アミノ酸自体はミラーの実験などで知られるように比較的簡単に自然界でできる。ただ20種類のアミノ酸が特定の32の順番で連続してつながる可能性は 20の32乗=10の41乗 の数だけある。これはまさに天文学的数字で偶然にこの組み合わせが起こるのを待つには宇宙の寿命をしても足りない。

この問題を解くのにマクファデンが導入した考えが量子の重ね合わせと人間原理だ。話は簡単ではないが、我々のこの世界は粒子波動の重ねあわせとその観察で成り立っている。何を言ってるのかピンとは来ないと思うが量子力学の示す物質(粒子)の波動性というのはまことに奇妙で理解しがたい内容を含んでいる。電子でも光子でもあるいは全ての物質、極端な場合はシュレジンガーの猫でも波動関数で示される確率的存在なのだ。それが観測の瞬間に粒子として確定する。

この波動性と観測の問題はニールス・ボーアの主張するコペンハーゲン解釈というのが現在の主流だが、別の解釈としてエヴァレットの多世界解釈という説がある。粒子と観測者を含む世界が波動確率に従って分岐するという説だ。この場合、32ペプチドの全ての組み合わせは10の41乗にスプリットされた世界のどこかで発現することが出来る。

そして人間原理。 水の分子は奇妙な性質を持っている。固体の水つまり氷は水に浮く。水以外の物質は液体より固体のほうが重い。水のこの奇妙な性質が無かったら地球に生命は存在しなかっただろう。氷が水に沈めば全球凍結した地球が液体の海を持つ事は無いからだ。この水の奇妙な特性は酸素原子と水素原子の結合角によって水分子がほぼ正四面体形成する偶然によってもたらされている。なぜこの結合角が偶然こうなっているかは誰もしらない。

実はこの結合角の違う宇宙は別に存在している、と科学者たちは考えている。たまたま結合角が今の状態だったので人間が生まれた。これが宇宙の人間原理だ。マクファデンはこの考えを拡張し32ペプチドの複製分子が存在する世界に人間が生まれた、と考える。

まあ、なんともインチキくさい感じはするが現に我々が存在する以上それは起こったと.... 量子力学の意味するところは考えれば考えるほど解らなくなる この世界はまことに奇妙な土台の上に成り立っている様だ。


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