徒然なるまゝによしなしごとを書きつくる

旧タイトル めざせ、ブータン

進化について

2010年11月10日 | 進化

みなさんは盲点というものをご存知であろう。 視野の中で見えない部分がある。これは視神経束が網膜を貫通している部分だが、これは我々の眼球の不合理な構造に起因するものである。 というのも我々の網膜は光を感じる視細胞とその信号を脳へ伝える神経線維からなるが、奇妙なことに光を感じる視細胞が神経線維の外側にあり、外部から入射した光は神経線維を透過した後に視細胞に到達し電気信号に変換される。これは例えて言えば受光素子であるCCDの光電変換面が配線の下にあるようなもので、極めて不合理な話である。また、そのおかげで、内側の神経線維を引き出すために、盲点を形成せざるを得ない設計になっている。なぜ、こんな奇妙な構造になっているのであろうか? また別の奇妙な話として脳の左右交差がある。右脳が左半身をコントロールし、左脳が右半身をコントロールしている。 なぜ? ところが、昆虫の目は複眼であるが、その個々の網膜は視細胞が光の入射面にあり神経線維がその下にある極めてまともな構造をしている。また脳の左右交差は無く右脳が右半身、左脳が左半身を素直にコントロールしている。

脊椎動物というのは昆虫のような外骨格生物が内、外裏返しになって出来た、としたらびっくりであろう。実は卵から幼体の発生の過程で、たった一つの遺伝子が変異することで、この内外反転が起こるのである。そして同時に眼球の内外も同時に反転し、先述の奇妙な構造を取ることになったのである。背骨は複数の骨で出来ているがこれは昆虫の体節にあたる。また、昆虫はより重要で保護すべき器官である神経束は地面側にあり消化管等が上側に有る。脊椎動物はこれが上下逆転している。これも、突然変異で頭に対して体が捩れてしまったのである。このとき、同時に脳の交差が起こった。

脊椎動物である魚類が陸上に進出したデボン紀に何が起こったか。魚が徐々に陸上に進出した? とんでもない、魚は一夜にして両生類になったのである! ホメオボックス(Hox)遺伝子というのがある。これはサブルーチンのようなもので呼び出されることで特定の形質を繰り返し発現する。デボン紀に”5”のHox遺伝子が発現したのである。魚の背骨は単純で首、背骨、腰、仙骨、尾てい骨の区別は無い。両生類はこの5分割の背骨を持つ。魚の鰭は単純であるが両生類の前、後脚は5つの部分からなる。また両生類は5本の指を持つ。(サンショウウオの指は赤ん坊のようだ。)この”5”を司るHox遺伝子のおかげで魚はいきなり両生類に進化した。

人類も然りである。普通の哺乳類は上に凸の猫背である。しかし人類を含む類人猿の背骨は上下(前後)が反転して逆にそっくり返っている。これが直立歩行に移行した重要な理由である。反転したのは遺伝子の突然変異によるものである。従来、突然変異というのはほとんどが中立で害があっても得になるケースは極わずかという捕らえ方をしていたが実は一回の変異がとんでもなく大きな進化ステップを引き起こすことが判ってきている。私自身はこんな面白い事を知ることが出来て、生きてて良かった、と思う。 ちなみに本編ネタは下記の本です。

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