おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

原典版は何から作られた?(Edition vol.7)

2020年01月05日 | エディション研究
原典版は作曲者の意図を理解するためのものです。

基本的に作曲者が書いたものしか書かれていません。
しかし、作曲者が書いた自筆譜が読みにくかったり、紛失していたりすることがあります。

原典版は何を資料として作成したか校訂報告に書かれています。

今回はそれをチェックしたいと思います。(J.S.Bachのインヴェンション)
ちょっと疲れる内容です・・
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【Bärenreiter】
この版の楽譜本体は「新バッハ全集Ⅴ/3巻からの忠実な再録である。
それは1723年のバッハ自筆の清書譜(ベルリンのドイツ国立図書館 mus.ms.Bach P610)を底本とし、1725年のハインリヒ・ニコラウス・ゲルバーの写本(現在個人所蔵)と、1723年頃に別の弟子によって書かれた写本(P219)からの装飾音を「付録」に掲げておいた。

【G.Henle Verlag】
1.1723年のバッハの清書譜(ドイツ国立図書館、ベルリンP610)
2.1720年1月22日から書き始めたW.F.バッハのためのクラヴィーア小曲集(エール大学、ニューヘブン)。W.F.バッハの手によるプレアンブルムe,F,G,a,hの筆写が残っており、プレアンブルムとファンタジアはおそらく1722年か1723年の春までは付け加えられていなかったと思われる。
3.W.F.バッハが所有していたバッハの無名の弟子が1723/24に筆写したもの(ドイツ国立図書館、ベルリン、P219)
4.1725年1月22日にバッハの弟子ハインリヒ・ニコラウス・ゲルバーがライプツィヒで筆写したもの(Gemeentemuseum's-Gravenhage、オランダ)

【Wiener uetext Edition】
A.清書譜、1723年のケーテン時代に書き始めライプツィヒ時代に最終校正した。31枚(17.5×24㎝)
(国立図書館、ベルリン―プロイセン文化所有―メンデルスゾーン資料館音楽部門、Mus.ms.Bach P610)
B.初稿、いわゆる、ヴィルヘルム・フリーデマンバッハのためのクラヴィーア小曲集。タイトルページ:Clavier-Büchlein/vor/Wilhelm Friedemann Bach/Cöthen den/22 Januar/Ao,1720 70枚(16.5×19㎝)
クラヴィーア小曲集は全て揃ってはいない。ファンタジア15(シンフォニア3番)13小節目、ファンタジア15(シンフォニア2番)が欠けている。(ニューヘブン、エール大学アービング ギルモアミュージックライブラリー 分類番号なし)
C.ベルンハルト・クリストフ・カイザーの写本、ケーテン1723年かライプツィヒ1723/1724? タイトルページ:ⅩⅤSinfoniés/pour le Clavecin/et/ⅩⅤ Inventionés/del Sigre/[nachträglich:Joh.Seb.Bach 32枚(15×21.5㎝)
(国立図書館 ベルリン―プロイセン―メンデルスゾーン Mus.m.s.Bach P219)
D.ハインリヒ・ニコラウス・ゲルバーの写本、1725年1月22日の日付とヨハン・セバスティアン・バッハによるいくつかの書き込み。16枚(19.5×31.5㎝)
(オランダ ハーグ音楽研究所 グラーフェンハーゲ Ⅲ/2/bachdoos/n.)
E.ヨハン・クリスティアン・キッテルの写本、1750年。インヴェンション8枚(34.5×21㎝)、シンフォニア(34×20.5㎝)
(国立図書館 ベルリン―プロイセン―メンデルスゾーン Mus.ms.Bach P1067(Inventionen)Bzw.P1068(Sinfonien))
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お疲れ様です。
なんだろう、演奏には関係ないと思いながらもお読みくださりありがとうございます。

ちょっとまとめてみますと、インヴェンションでよく使われている代表的な原典版(ヘンレ、ベーレンライター、ウィーン原典版)は次のものを資料として作成されたと言ってよいと思います。

1723年清書譜
1720年初稿
1725年ゲルバー写本
1723/24年カイザー写本

BärenreiterとG.Henle Verlagでは「別の弟子」「無名の弟子」とされている人物が、Wiener Uetext Editionでは「カイザー」と特定されています。

これらの原本がどこに所蔵されているかも書かれています。

私はPeters版のLandshoffが校訂した原典版を使っています。
Peters版はCzernyが校訂した実用版があり、これは冒頭のプラルトリラーがモルデントになっています。これは間違いです。

なのに、私が子供の頃使った全音はモルデントで、相当長い間この間違った装飾音が頭の中で鳴っていました。春秋社の井口さんの版もそうです。

最初に使う版はよく考えて選ばなければいけません。

次回は実用版を比べてみます。
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