「 九州 ・ 沖縄 ぐるっと探訪 」

九州・沖縄・山口を中心としたグスク(城)、灯台、石橋、文化財および近代土木遺産をめぐる。

宮古島・東平安名埼 「 マムヤの墓 」

2013-01-29 00:09:29 | 沖縄の王墓、按司墓、拝所



宮古島東平安名崎にある 「 マムヤの墓 」















美人だったマムヤ







道路側から見ると普通の大岩にしか見えない






マムヤの墓の近くにある東平安名崎灯台






マムヤの墓下にある海岸












昔、沖縄の島々を按司(あじ)と呼ばれる豪族達が支配していた頃の話である。

 その頃大和からはるばると遠い宮古島まで落ち延び、
東平安名崎(ひがし へんなざき)に近い保良(ぼら)の村に住む女がいました。
平家の落人で名前をマムヤといい、大変美しい女で機織りが上手でした。

このマムヤの輝くような美しさが噂になると、宮古の島々の按司や役人達
は、
ぜひ妻にしたいとマムヤの家を訪れ、争うようにして結婚を申し込んだが、
マムヤは、どんなに宝を積まれて申し込まれても、
「お志し、誠にありがとうございます。けれども私はこのまま一人でいたいのです」 と、
どの按司にもはっきりと断りました。

それでも按司達がマムヤの家に通ってくるのをやめなかったので、
マムヤは 突然姿を隠してしまいました。

 ある日、宮古島の按司でマムヤの住む保良や近くの村々を支配している
野底 按司(のそこあじ)が、東平安名崎の近くの海に行き、
家来達に網で魚を取らせていました。
海に細長く突き出た東平安名崎には、荒々しい大平洋と東シナ海の波が激しく打ち寄せ、
岬の断崖の上には、白い百合(ゆり)の花が咲き乱れていました。
その岬の下のグスフカーと呼ばれる泉に近い所まで来た時、
岬に打ち寄せ る波のとどろきに交じって、微かに機を織る音が聞こえてきました。

 野底按司は、「こんな人も住めない岬で、機を織る音がするとは・・・
お前達にもあの機の音が聞こえるだろう。すぐに手分けして捜せ!」 と命じた。

 早速家来達は捜してみましたが、機織りの音は、岬の下の方から聞くと
上から聞こえ、上から聞くと下から聞こえ、見つからない。
ようやく岬の崖を少し下りたところの洞窟からその音が聞こえて来るのが分かったので、
野底按司はその洞窟に入ってみると、
そこは光がようやく届く洞窟の岩の上に、美しい布を織りかけにした機が置いて
あったが、人の姿はどこにも見当たらなかった。
「 ここで、機を織っていたのは誰だ。姿を見せろ! 」 と言うと、
どこからともなく女の声が聞こえてきました。

「 私は人々から姿を隠すためにこの洞窟に隠れました。
どんなに偉いお方 にも姿を見せるわけにはゆきません。 」
「 おお、その声はマムヤの声ではないか。 」
「 はい! 」
「 こんなところに隠れても、わしが人に話せば、
すぐにあちこちの按司達が押し掛けてくるだろう。
いっそ、わしの妻になってくれんか。
すぐに承知できんのならわしと勝負をしよう。
わしは、これから狩俣村(かりまたむら)まで海の珊瑚の石を石垣に積むことにする。
お前も狩俣まで芭蕉(ばしょう)の糸をつないで行くのだ。
そして、私が勝ったらお前はわしの妻になるのだ 」 どうだ?と訊くと、
しばらくして微かに、 「 はい。 」 と返事をする声が聞こえた。

 野底按司は、家来に命じて領地の百姓をすべて集めると、
海から平たい珊瑚の石を運ばせて石垣を積みました。
マムヤも芭蕉の糸を細く裂いてつないでいきました。

 昼も夜も宮古島の東南の端の東平安名崎から20キロ以上も離れた
北西の端 の西平安名崎(いりへんなざき)にある狩俣村まで、
野底按司は百姓と家来に石垣を積ませ、マムヤは芭蕉の糸をつないで行った。

 野底按司は、とうとう狩俣まで石垣を積んだが、
マムヤのつないだ芭蕉の糸は、わずかに狩俣の村まで届かなかった。
勝負に負けたマムヤは約束通り野底按司の妻となって暮らすことになりました。

 ところが、野底按司には、二人の子供を産んだ妻がおり、
その妻がことごとにマムヤにつらくあたりました。
朝夕の妻の意地悪に我慢ができなくなったマムヤが按司に尋ねました。
「 私は勝負に負け、妻にするというからあなたの家に来ました。
けれども、あなたには奥様がいらっしゃいます。
なのになぜ、私を妻にすると言って連れてきたのですか。
私と奥様とどちらが大事なのですか? 」 と、問い詰めると、
按司は、 「 どちらが大事かと言われれば、
まあ、そうだな、子供のいる妻の方が大事だな。」 と言った。

 マムヤは、これを聞くと一人で野底按司の家を出て平安名崎に行きました。
「 神様、私がこんなに辛い苦しい思いをしたのは私が美しかったからです。
どうか、この保良の村の娘にこんな悲しい思いをさせないでください。
この保良に美しい娘が生まれないようにしてください。」
そう祈ると崖から身を投げて死んでしまいました。

 それから、平安名崎に近い保良の村には、
長い間美しい娘は生まれなくなったということです。
平安名崎の白い灯台の近くに、今もマムヤの籠もった洞窟とマムヤの墓がある。






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