大津日記 since 2004

雨ニモ負ケズ風ニモ負ケズ…
GSA大津克哉が送る愛と感動の現場日記

ヒマラヤ登山 最近の事情

2010-07-15 | GSA (スポーツと環境)
GSA理事長、三浦雄一郎さんの御子息、豪太さんのセミナーに参加してヒマラヤ登山の最近の事情を聞いてきました。豪太さんは、2008年に父、雄一郎さん(75歳で再登頂のニュースは記憶に新しい!)と共にチョモランマ(エベレスト、8848m)へいったメンバーの一人。2008年登頂の際には、すべての隊員やシェルパにゴミを持ち帰るように通達を出していたけれど、後日登頂途中のベースキャンプに三浦隊のゴミが落ちていたという連絡がきたそうで、豪太さんグループが今年の5月に調査と回収のために現地を訪れてきたという報告会でした。そこで聞いた現地の現状をまとめてみたいと思います。

5月に再度ヒマラヤを訪れた時には、様々な環境活動をされている方々と一緒になったそうです。

・ 一流ロッククライマー コンラッド・アンカー
豪太さんの環境問題への意識を変えた人らしい。極地の氷がもの凄い勢いで融けだしていることから記録のために、5500m付近に定点カメラを設置して5分ごとにシャッターが下りるものを取り付けに来ていたそうです。

・ 世界一高所のリサイクル屋 ダワ・スティーブン
ここでは、集められたゴミを1kg1ルピー(約140円)で買い取ってくれる。5月の時には三浦隊以外エコエベレストというゴミ拾い隊が3隊いたそうだ。標高の高いC2エリアからのゴミは危険も伴うために高く買っていたけれど、ポリタンクというような軽くてもかさばるゴミよりも重いゴミが集まりだしたのだとか。中にはC2ではない場所から集めてきたのにC2で拾ってきたとウソを言う輩もいたりするらしい。ちなみに昨年は3tを回収したそうだ。

・ コマーシャル遠征のプロ ラッセル・ブライス
商業登山という仕事をしている。身の回りの安全等を管理しながら登頂を目指すナビゲーターをする。この人にお世話になると一人800万円程度費用がかかるそうだ。半分ぐらいでも登頂はできるそうだけど「命」と「お金」どちらに重きを置くか・・・。

・ 自転車で世界平和を訴える男 プシュカーシャー
働きながら自転車で世界各国を訪れ国際交流。これまで150カ国。お世話になった各国の人たちへの敬意を込めて訪れた国のフラッグを持って登頂中。(後日成功したそうだ。さすがに自転車に乗っては無理だから自転車のパーツ(タイヤ)を持って上ったそう。)

こんなように、いろいろな考えをもった人が集まるので出会いが楽しみなんだと言っていた。

さて、三浦隊もゴミの収集にあたると、6400mにもなると近くに移動するも「高く遠いゴミ」。高度順化せずだとまず大変。2008年に来た時は雪だらけでスキーをしたそうだけれど(汗)、今は融けて滝の音も轟々として氷河湖ができていたそうです。そのような場所でゴミを持ち帰ることは確かにリスクを伴い危険ですね。

① 元々、エベレスト登山において携帯品は置いていかれるシステムだったそうです。なぜってシェルパという存在があるから。死と隣り合わせの登頂において、恐怖の緩和のためにゴミになるものを持っていく。心配だからこれもこれも持っていこうという具合に。それら持っていったモノは帰りにはリスクになるからクレパスとかに捨ててしまっていたのが実情だったそうです。エベレスト登頂されたのが今から約60年前。氷河が融けだし、過去60年間分のゴミが出てきているのだ!

また、今季は温暖化によって氷河が融けだして、特に遺体が出てくるとこも多いのだとか。遺体収集専門のクリーニング隊もあるそう。埋蔵ゴミは50t~100t、160人の未収容の遺体が残っているそうです。

② クリーンアップ活動は多くの企業からCSR活動の一環として賛同を得ているらしい。

③ シェルパの中には日雇いの人もいて統率されていないこともある。勝手にゴミを捨ててる輩もいる。「環境」が「商売」になるものだから、後日、「○○隊のゴミが落ちていたぞ」と登山を終えたグループに脅すようなまねをするのまでいるそうだ。

④ 捨てたゴミをあさる人

⑤ 必要最低限って一体何だろう・・・。

⑥ 命とゴミの重さ

①~⑥に見られる「環境問題の『問題』」という言葉が僕の心に残りました。
ビジネスになっているゴミの問題、そして融ける氷河、現代社会の縮図がヒマラヤにもあるんだなと実感しました。

氷河の末端は、南部で年に13mずつ後退、東部でも年30mのスピードで後退しているそうです。洪水の危険性はもちろん、ヒマラヤの雪が融けて海に流れたら20m水位が上がるとの事。

三浦さんの今回の発見は、テントにかぶせる軽量のソーラーパネルシートのおかげで手軽に通信ができたことと、エベレスト街道(片道35kg)をなんとサンダルで歩けてしまったということらしい。ガチガチの安全靴のような登山靴ではなくてサンダルで歩けてしまうなんて・・・。良くない発見は、ダルと呼ばれる豆料理やポーター代、シェルパ宿代、自身の宿泊費など物価が1.5倍くらいになってしまったことだそうだ。

最後に、結局ベースキャンプ付近に捨ててあったというゴミは出てこなかったらしい。少ない日程の中、30kgのゴミを回収した。このようなエベレストのクリーンアップは外国の隊から始まったけれど、現在ではネパールの国として国を挙げてのクリーニング活動もされているらしい。

なんと、三浦雄一郎理事長は80歳でもう一回登頂にチャレンジする予定。
もの凄い挑戦力だ!負けてられないな・・・。