郎女迷々日録 幕末東西

薩摩、長州、幕府、新撰組などなど。仏英を主に幕末の欧州にも話は及びます。たまには観劇、映画、読書、旅行の感想も。

宝塚キキ沼に落ちて vol4

2020年10月24日 | 宝塚
 
 花乃まりあさんは、明日海さんのお相手、トップ娘役さんになって、ほぼ2年で退団なさいました。
 予定通りではなかった、と言われているようです。
 ラブコメミュージカルは、よく似合っておられましたが、確かに、明日海さんとの並びがお似合いか、といわれると、この退団公演の「金色の砂漠」まで、しっくりきてはなかったような気がします。
 しかし、です。「人でない」オーラを放つ超絶美貌の男役さんに、よく似合う娘役さんなんて、果たしていたんでしょうか。
 
 
 「金色の砂漠」の脚本・演出は、上田久美子氏。宝塚専属の新進オリジナル作者です。
 デビューは、2013年月組バウホール公演『月雲の皇子 -衣通姫伝説より-』。バウホールといいますのは、宝塚大劇場付属の小劇場で、主には若手中心の公演を行っています。このときの主演は珠城りょうさん(現在の月組トップ)で、入団七年目、バウ公演初主演でした。
 これが大評判を呼び、めったにないことですが、東京の外部劇場で再演されました。
 題材の衣通姫伝説とは、古事記、日本書紀に載っています物語です。下のリンクは、別のサイトにまとめたものですが、道後温泉にかかわるともとれる伝説ですし、私にとっては、高校生の頃から慣れ親しんだ、悲劇でした。三島由紀夫が短編小説の題材にしてもいます。
 
 天翔る恋の歌
 
 木梨軽皇子(きなしのかるのみこ)と衣通姫(そとおりひめ)については、古事記と日本書紀を幾度も読み返し、私なりのイメージができあがってしまっていまして、見る気がしなかったのですが 結局、なぜそこまでの評判を呼んだのか、自分の目で確かめてみたくなって、つい先日、DVDを買いました。
 「従来の宝塚では考えられないほど、主人公がボロボロになって死んでいくお話」と聞いていたんですが、私に宝塚の常識がないせいか、そうは思いませんでした。
 文句を言えば、きりがありません。
 
 「天翔る恋の歌」に書いておりますが、古事記では、軽皇子は同母妹・衣通姫との禁断の恋ゆえに、弟の穴穂皇子との皇位継承争いに敗れて、伊予の湯に流されます。衣通姫は皇子を追って伊予まで行き、心中して果てます。
 一方、日本書紀では、軽皇子が同母妹・軽大郎皇女と通じたがために、天変地異が起こり、軽皇子は世継ぎであったので罪を問われず、軽大郎一人が伊予に流刑となります。十年余りのち、父帝が崩御し、軽皇子は大臣に裏切られて、弟・穴穂皇子との争いに敗れ、大臣の館で死にます。
 
 日本書紀の方では、悲恋の相手の同母妹は衣通姫とは呼ばれず、軽皇子の母方の叔母、つまり実母の妹で、父帝の寵愛を受ける女性が衣通姫です。
 
 三島由紀夫は、軽皇子の悲恋の相手を叔母の衣通姫とし、禁断の恋の結果、人心が軽皇子を離れ、弟・穴穂皇子が兵を挙げて皇位を奪い、軽皇子は伊予に流され、衣通姫は後を追います。軽皇子に仕えてきた石木は、伊予で反乱を計画し、皇子もそれに乗ろうとしていましたが、衣通姫が来たことによって、皇子は叛意を無くします。石木は衣通姫に自害を勧め、瀕死の姫を見た皇子は自害。石木は反乱を続行して畿内をめざし、穴穂皇子に鎮圧されます。
 
 で、宝塚です。
 近親相姦の話は避けて、軽皇子と穴穂皇子、二人の兄弟が子供のころ、父帝が焼き討ちにしたツチグモ(支配下にない人々)の村で赤子をひろい、二人の妹として育てられたその赤子が、衣通姫です。したがって血はつながっていないのですが、衣通姫は長じて巫女となり、男子禁断、言葉を交わすことさえ許されません。軽皇子も穴穂皇子も、衣通姫に恋心を抱きますが、穴穂皇子が兄に代わって皇位を望んだのは、結局、その出生の秘密ゆえです。
 軽皇子と衣通姫は通じたとされ、いったん、衣通姫が流罪と決められますが、軽皇子が姫をかばい、代わりに伊予へ流罪。軽皇子は自らツチグモの王となって兵を集め、畿内へ攻め上る準備をしています。
 衣通姫は巫女の任を解かれ、穴穂皇子の妻となっていますが、心は軽皇子にあり、脱出して、伊予へ向かいます。
 穴穂皇子は伊予まで討伐に向かい、軽皇子は「二人で逃げてひっそりと暮らしましょう」という衣通姫の提案を拒み、衣通姫一人を逃がし、穴穂皇子を迎え撃ちます。しかし、衣通姫は案内役のツチグモをかばって死に、軽皇子は穴穂皇子との一騎討ちで戦い敗れて死にます。
 
 文句から言いますと、まずツチグモの描き方がとても奇妙です。
 衣通姫伝説の時代は、倭の五王の時代であろうと、おおまかに推測されています。つまり、中国の南宋に使いを出した畿内の王の記録が残っている5世紀なんです。巨大前方後円墳が築かれた時代でもあります。現在、畿内の前方後円墳は治水に関係していたのではないか、という説が、有力になりつつあります。
 ツチグモとは、畿内政権に服従しない豪族の一党であって、百姓一揆の民とはちがいます。
 伊予にも一応、前方後円墳がありまして、畿内と関係の強い豪族がいたのではないかと推測できます。
 なにが腹が立ったって、「ここにいては飢え死にするばかり。早く豊かな畿内の土地をみなで奪ってください」というようなことを、ツチグモの一人が言って、伊予で飢え死にしていくところです!!!(笑)
 
 伊予は、豊かな土地なんです!!!
 時代は下りますが、聖徳太子が伊予の湯を訪れ、「神の恵みでわき出でる温泉は、庶民をも公平に癒やす。極楽浄土の蓮の池のようなものだ。椿が花咲き、実るこの温泉で、ゆっくりと憩いたい」というような碑文を残した、と言われているんです。
 日本書紀で軽皇子が弟に追い詰められて果てたのは、畿内でのことですし、伊予の湯に流されたのは妹一人です。
 一方、古事記では、「玉のように美しい妹、鏡のように輝く妻よ、生まれ育った飛鳥ももう恋しくはない。君がいる場所が、家であり故郷だよ」と歌って、二人は伊予の湯で心中して果てたというんです。
 
 伊予から畿内まで攻め上ろうとしたといいますのは、現代人である三島由紀夫と上田久美子氏だけでして、ありえないことです。伊予の一般庶民が、畿内に攻め上って、なんのいいことがあるでしょう? 
 もしも本当に、軽皇子と衣通姫が伊予の湯に流されていたとしましたら、地元の豪族にけっこう大事にされ、温泉三昧の日々だったと思います。
 そして、もしも本当に心中して果てたとしましたら、それは、自分たちは生まれながらに国のまほろば(文化の中心)に居るべき大王とその妃である、という誇りゆえだったでしょう。
 
 とはいうものの、衣通姫伝説ではなく、古事記も日本書紀も関係のないファンタジーだとして見れば、いいお話でした。
 軽皇子と衣通姫、穴穂皇子の関係性が上手く描かれていて、珠城りょう、咲妃みゆ、鳳月杏の三人も好演でした。
 そうです。咲妃みゆさん、この一年前の「春の雪」では、聡子のイメージじゃない、と思ったのですが、「月雲の皇子」の可憐な衣通姫はぴったりで、演技もすぐれていました。
 軽皇子はそのやさしい気質のままに、弟の手にかかって死ぬことを望みますし、出生の秘密故に心を鬼にしていた穴穂皇子も、最後に「この事件は史書ではなく、美しい歌物語として残せ」と命じ、兄への愛をにじませます。「なんのために?」と聞かれ「わからん」と答えるのですが、渡来人にはわからずとも、日本列島の住人には、わかるはずなのです。
 古来、我が国の美しい歌物語は、鎮魂のためにあります。
 
 唯一、しっくりこなかった人物造形は、兄弟の母、大中津姫(おおなかつひめ)です。日本書紀では、相当に気性の激しそうな女性として描かれているのですが、それよりこの物語では、穴穂皇子の出生の秘密にかかわって、悲劇の種をまいた当人です。知らん顔しすぎじゃないか、と思えます。またもしかして、それが渡来人の嘘であったとするならば、嘘にふりまわされた兄弟の行為が、虚しいだけのものになってしまいます。
 それをのぞけば、ほんとうによくできたお話でした。
 
 ただ、古事記と日本書紀をもとに、長らく私が思い描いてきた軽皇子は、「月雲の皇子」のように気の優しい人ではありません。
 並みはずれて美しく、異常なまでに誇り高く、氷の炎につつまれて‥‥、宝塚でだれかが演じるとすれば、そう、明日海さんしかいません!!!(笑)
 
 上田久美子氏は、翌2014年、宙組の別箱で『翼ある人びと -ブラームスとクララ・シューマン-』、2015年大劇場デビュー作雪組の『星逢一夜』と、どちらも大評判でした。
 
 そして、「金色の砂漠」です。
 「神話だと思ってもらえればいい」というようなお話で、ペルシャっぽくはあるのですが、ある砂漠の中の国、という以外、時代も場所もわかりません。「月雲の皇子」みたいに特定してしまいますと、私のように不満を抱く観客も出かねませので、これは、正解だったと思います。
 
 私、いったいなんで見たのか思い出せないんですが、「ポーの一族」製作の話が持ち上がったころには、テレビで一見していた記憶があります。現在は円盤を買って、幾度も見返しています。もちろん、キキちゃんにはまったがゆえに、です。
 
花組公演『雪華抄(せっかしょう)』『金色(こんじき)の砂漠』初日舞台映像(ロング)
 
上の初日舞台映像は、和物のショーが先にあって、その後です。
 
最初見たとき、妙に既視感があったんです。
 
 アムダリアって、ウズベキスタンの方だよね。ジャハンギールって、ムガール帝国? でもイスファンとか言ってるから、ペルシャ? イスファンディヤールにパードゥシャーって、ペルシャ語? ガリアって呼び名は、ローマ時代のものだよね。古代ペルシャっぽいけど、たしかに、いつとも、どことも特定できない! にしても、この既視感はなに?
 やがて、ふと、思い当たったんです。これ、「嵐が丘」だよねえ!
 
「嵐が丘」は、1847年、明治維新のおよそ20年前に出版された、イギリスの小説です。
 作者のエミリー・ブロンテは牧師の娘で独身。二十代にこの長編を書き、三十歳で世を去っています。
 舞台は、18世紀末から19世紀初頭。ナポレオン戦争の最中のはずですが、そんな世間とはまったく隔絶した、閉鎖的なヨークシャーの田舎が舞台です。これもまた、神話ともいえるような物語なんです。
 
 主人公の二人、キャサリンとヒースクリフは、荒野から生まれ出たように、激しく、強烈な個性の持ち主で、魂が呼び合うように、深く愛しあっていました。しかし、置かれた境遇ゆえに傷つけあい、それぞれに、互いを渇望しながら世を去ります。
 孤児だったヒースクリフは、下人のように扱われていたことで、キャサリンに裏切られ、復讐の鬼と化すのですが、イメージとしては、無骨で、荒々しく、粗野で、一見、明日海さんとは正反対です。
 
 まさか宝塚でやってないよね、と思ったら、やっていました! 1997年のバウ公演。ヒースクリフは和央ようかさんです。
 ネットで感想を見てみましたところ、和央さんは、汚れ役に徹して、ものすごい迫力で好演なさっていたみたいです。暗く、登場人物はいやな性格なのに、なぜかもう一度見たくなる作品、という声がありましたので、かなり原作に忠実だったのでしょう。
 
 「金色の砂漠」については、主演の明日海さんご本人が、「その人の個性にあわせて当て書きをしていただけて幸せ」と言っておられます。そして実際、主要登場人物の演技が、その人にぴたりと合って、実にすばらしいものでした。
 
 その昔、武人ジャハンギールは、砂漠の王国・イスファンに攻め入り、王を殺して国を奪い、王妃アムダリヤを自分の妃に望みます。アムダリヤには二人の幼い男の子がいて、その命とひき換えに、夫を殺した男の妻になることを承諾します。
 
 イスファンには奇妙な風習があり、王族の女の子には男の子を、男の子には女の子を、幼いころから寝起きをともにさせ、特別な奴隷として、一生、身の回りの世話をさせます。
 ジャハンギールには側室との間に作った三人の王女があり、アムダリヤの子供のうち兄のギィは第一王女タルハーミネの、弟のジャーは第二王女ビルマーヤの奴隷となります。しかし、ギィとジャーは自分の生まれを知りません。
 
 ギィとタルハーミネ、ジャーとビルマーヤは、年頃になり、それぞれに恋心を抱くのですが、それは、まったくちがった形をとりました。
 美しく育ってゆくタルハーミネへの思いが、いつしか狂おしいものとなり、ギィは苦悶します。身分のちがいで、絶対に手に入れることができない、幼なじみの少女の着替えをさせ、毎夜、同じ部屋で寝るしかないんです。
 「おかしい!」と理不尽な境涯を訴えるギィに、アムダリヤつきの奴隷・ピピは諭します。
 「ギイ、愛には2種類ある。相手を自分のものにしたいという愛と、相手の幸せにつくす愛。つくす愛を選びなさい」
 
 しかし、相手の性格というものもあります。我が強く、わがままなタルハーミネを愛したギイは、相手を自分のものにしたいという熱情に身を焼きます。一方、弟のジャーが相手の幸せにつくす愛を選べたのは、ビルマーヤもまた愛するジャーを思いやり、その幸せに尽くそうとしていたからです。
 
 そうです。ギィはヒースクリフで、タルハーミネはキャサリン。
 もちろん、明日海さんがギイで、花乃さんがタルハーミネ。
 
 ジャーがキキちゃんで、ビルマーヤは桜咲彩花さん、べーちゃんです。
 べーちゃんはキキちゃんと同期で、去年、卒業なさいました。花組「オーシャンズ11」の新人公演では、相手役を務めています。
 ありえないほどやさしすぎる二人の愛に説得力を持たせるのが、二人のデュエットです。
 ジャーとヴィルマーヤが、「あなたを守りたい、あなたをささえたい。親しいその命を、変わらぬ心で」と歌を重ねるその響きの美しさは、トップ二人のデュエットに勝るほどで、胸に迫ります。
 
 私は昔から、自己主張が強く、激しすぎて、悲恋に終わるような物語が好きで、だから、少女のころ、「嵐が丘」は愛読書でした。
 明日海さんのギイ、花乃さんのタルハーミネは、ともに誇り高く、激しく感情をぶつけ合い、気がついたときには押さえようもない情炎につつまれて、破局を迎えます。
 当然のことながら、最初見たときは、この二人に目を奪われていました。
 
 物語に厚みを持たせているのが、鳳月杏さんのジャハンギールと、仙名彩世さんのアムダリヤです。
 ちなつさん(鳳月さん)は、「月雲の皇子」に続く、上田作品での敵役ですが、実に重厚に、無言のうちにアムダリヤへの深い思いが伝わるように、見事に、ジャハンギールという武人を演じておいででした。
 仙名彩世さんは、花組育ちのベテランとして、次の娘役トップを務められ、多くの作品を残されました。
 しかし、この王妃アムダリヤは、感情を抑えた静かな演技で、息子たちへの愛と、夫を殺した男への愛に引き裂かれる悲哀をにじませて、私はもっとも似合っておられたように感じられ、忘れがたい名演です。
 
 ギィはタルハーミネと情を通じ、愛を確かめ合うのですが、事の成り行きから、タルハーミネ本人に死刑を宣告され、責め殺されかかっていました。その地下牢へ、ひそかにアムダリヤが訪れ、初めて、ギィとジャーにその身分を明かし、ギィを逃がし、ジャーには、「兄についていくか、ここに残るか、思いのままにしなさい」と告げます。
 
 ジャーは残り、ギィは砂漠で、先王の遺臣のなれの果ての盗賊たちの仲間に入り、七年の後、復讐のためにイスファンの王宮へ帰ってきます。
 ジャーは、ビルマーヤとその夫(天真みちるさん、好演でした!)を背にかばい、兄と戦います。
 最初これを見たときは、「なにしてるのキキちゃん!!! ありえないっ!!! 兄さんに協力しなさいよっ!」と思わず叫んだのですが、円盤を見返していても、最初のうちは、「兄さんに協力して、兄さんが王になったら、ビルマーヤさんとその旦那は、協力に免じて許してもらうのが筋よねえ」と思っていました。
 
 タルハーミネはガリアの末の王子テオドロスを婿に迎え、男の子を産んでいましたが、夫との間は冷え切っていました。
 そもそもテオドロスが、「奴隷に無理矢理犯された、あの奴隷は死刑だと宣言すれば、あなたの命は助かり、結婚の約束もそのままに履行する」と言ったことで、タルハーミネは王女の誇りに固執し、愛するギィを見捨てました。
 
 テオドロスは柚香光さんですが、これも好演でした。
 この方は美しいのですが、明日海さんとはまた、全然タイプがちがいます。
 とても現実的で、人間的なんです。唯一、『愛と革命の詩-アンドレア・シェニエ-』で演じた黒天使は、人間離れした美しさでしたが、このときは、歌わず、しゃべらず、踊るだけでした。
 
 テオドロスは、とても合理的な人物で、砂漠の特別な奴隷の風習を「奇妙だ。やめるべき」とはっきり言うなど、いわば、現代人である観客の代弁者でもあります。
 一人、強烈な異国感をただよわせ、短いながら独唱があるんですが、音程が揺れ、歌詞が聞き取り辛い、その下手さ加減がまた、異国感にプラスしていました。上田先生の演出の妙、ですよねえ。
 テオドロスは、妻も子も捨てて、城を出てゆきます。
 
 ギィはアムダリヤを背にかばって戦うジャハンギールを斬り殺し、新しい王となります。同時に、タルハーミネを妻にする、と宣言。
 このとき、ジャーが叫ぶんです。「兄さん、その人の父がぼくたちの母にしたことを、今度はその人にしようというのか! その人に母さんと同じ苦しみを与えようというのか!」
 私、何度目かにこの言葉を聞いたとき、はじめて覚りました。
 ジャーは、ビルマーヤのためだけではなく、母のために城に残り、ジャハンギールを愛してしまった母のために、戦ったんです!
 
 ジャーは、最初から語り手でもあります。
「なぜぼくが語り部なのかって? 仕方ありません。みんな、もういなくなってしまいました。ほら。砂まじりの熱い風が吹いてきました。砂漠からの風が吹くこんな夜には、なつかしい人たちの魂がもどってくるような気がするのです」
 
 このキキちゃんの声の響きが、遠く、なつかしい人たちの魂にまで届くようで、やさしく、物語に誘われます。
 そして、幾度もくりかえされる主題歌が、なんとも美しく、耳に残るんです。
 もちろん、明日海さんの独唱もすばらしいのですが、乙羽映美さん、朝月希和さん、音くり寿さんのカゲソロも、それぞれにいいんです。
 砂漠の表現も幻想的で、限りある命を人が生きることへの哀惜と鎮魂が、感じられる舞台だと思います。
 明日海さんのまぎれもない代表作であると同時に、キキちゃんにとっても、転機となった作品ではなかったのかと、今にして思います。生で見たかった!
 
 続きます。

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2 コメント

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深い深いキキ沼 (中村太郎)
2020-10-24 21:27:11
まだ鹿児島です。
ほんとにキキ沼は深~いですね。もう浮上できないのでは。(笑)
玉城さまのDVDまでお買いになったとは、とても驚きました。軽皇子のお話だったこともあるでしょうが。

本日、山下孫兵衛さまのご次男古川基格さまのご子孫に思いもかけずお会いしました。詳しいお話はご上京の折にでも。
郎女さまのキキさま愛に私の桐野愛が勝てるかどうか不安ですが。(笑)
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来年キキちゃんが (郎女)
2020-10-24 23:52:07
トップとなったら、私、宝塚ホテルに住み込んでしまいそうだと、今から心配です(笑)

上京時のお話、楽しみにしております。
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