風の向くまま薫るまま

その日その時、感じたままに。

怪獣災害

2016-04-23 14:35:47 | ゴジラ









SF作家、山本弘氏の小説『MM9』では、怪獣を自然災害として捉え、気象庁の中に怪獣災害専門の部局があって、怪獣を「観測」するんです。

MMとは「モンスター・マグニチュード」の意で、怪獣の大きさを表します。数字が大きくなるほど、その怪獣の大きさも増していく。MM9クラスともなると、そりゃあもう、とんでもないデカさです(笑)。



作中では、この小説世界だけに通用する特殊な理論があって、怪獣という存在を一応科学的に証明しているわけですが、山本氏がいかに楽しんで、この「屁理屈」を作り上げたかがよくわかります(笑)。


自然災害という捉え方は、非常に的を得ていると私は思う。怪獣とはまさしく、自然災害の一つのかたちです。










怪獣とは本来、存在し得るはずのないものです。



身長50メートルだとか、体重何万トンだとか。ミサイル攻撃を受けてもびくともしない身体とか。

そんなデカい身体を、カルシウムで支え切れるわけがないので、怪獣の骨はカルシウムではなく、鉄筋かなにかでできていることになります。その時点でもう、いわゆる「生物」の概念を超えています。


ミサイル攻撃を受けてもびくともしない皮膚って、いったいどうなってるんだ?もうその時点で、理屈も常識も通用しないのです。



有態に言えば、怪獣とは「生物」ではないのです。


では、怪獣とは一体なんなのか?



一言でいえば、怪獣とは、「精霊」なのです。


地球の、大地の、宇宙の


精霊です。



大自然の精霊が、怒りの塊となってこの世に表出したもの、それが怪獣。


大自然の怒りの表出ですから、まさしく「自然災害」と捉えるのが、もっとも相応しいのです。






1989年の『ゴジラVSビオランテ』以降、ゴジラは人類の敵でもなければ味方でもない、ただその存在自体が脅威となっていきます。


そうしてゴジラは「死なない」存在として描かれ、人類はゴジラの前に、大自然の怒りを知るのです。



人類の叡智をもってしても、その脅威を退けることのできない、大自然の「怒り」。


まさしく、自然災害。



怪獣とは自然災害であり、ゴジラはその代表なのです。







考えてみれば、日本の特撮は、自然災害を特に描き続けてきたように思う。


大地震、津波、火山噴火、山崩れ、地面の陥没、大竜巻etc……。


その一連の流れの中に、怪獣もまた、位置づけられるというわけなんですね。



人類の叡智をもってしても、抑えきることができないのが自然災害ならば、人類の武器を一切受け付けないゴジラもまた、自然災害。



身長が100メートル以上あろうが、体重が何万トンあろうが、ミサイルでも平気な肉体を持とうが、


理屈が通用しなかろうが、


それが、「怪獣」なのです。

それが、「怪獣災害」なのです。








新作ゴジラ、『シン・ゴジラ』がそこのところを正確に捉えているのかどうか。

私は案外、その点が心配だな、と思っております。



SF的な屁理屈をこねくり回すのは一向にかまいませんが、自然災害という「軸」は、絶対にブラしてはならない。


大自然の精霊であるという軸を、ずらしてはならないのです。



脚本を書いたのは庵野さんですね、ならばその辺の責任は庵野さんにある。


頼むよ、庵野さん。



……といっても、もう出来ちゃってるけど(笑)。


まあ、心配ばかりしていても仕方がない。あとは公開を待つのみ。



早く来い、公開日!




『シン・ゴジラ』平成28年(2016)7月29日公開。



乞う、ご期待!