沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

もしも中城村北中城村清掃事務組合が「溶融炉を再稼動した場合」のリスクを考える

2015-11-04 11:00:32 | 溶融炉

このブログの管理者は溶融炉は「時代遅れ」になっていると考えています。また、沖縄県に溶融炉は似合わないと考えています。

そこで、現在溶融炉を休止している中城村北中城村清掃事務組合が溶融炉を「再稼動」した場合にどうなるかを考えてみることにしました。

(1)メーカーは10年以上前から「焼却炉+溶融炉」に対する受注活動は行っていない。

(2)「流動床炉+燃料式溶融炉」としては、国内で唯一稼動している溶融炉になる。

(3)供用開始から13年目を迎えているので、再稼動した場合は長寿命化を行うことになる。

(4)国内において「流動床炉+燃料式溶融炉」の溶融炉に対して長寿命化が行われた事例はない。

(5)前例がないので、長寿命化を行うと事業費がメーカー側の「言い値」になる。

(6)長寿命化した溶融炉を継続して使用しない場合(断続的に使用を休止して焼却灰の委託処分を行う場合等)は補助目的を達成していないことになり国から補助金の返還を求められることになる。

(7)長寿命化を行った溶融炉が事故や故障等で使えなくなると国から補助金の返還を求められることになる。

(8)事故や故障等を防止することができた場合であっても溶融スラグの利用を行わない場合は国から補助金の返還を求められることになる。

(9)過去に利用した溶融スラグから有害物質が溶け出した場合は、その後の利用が困難になる。

(10)「焼却炉+溶融炉」を選定している市町村においてJIS規格の認証を取得しているところはない。

(11)溶融炉の長寿命化を行わない場合は国の補助金を利用することができなくなるので、焼却炉の長寿命化や更新を自主財源により行うことになる。

(12)焼却炉の長寿命化を行わない場合は老朽化が進んでダイオキシン類の発生量が増加する。

(13)焼却炉の長寿命化を行わない場合は国の補助金を利用することができなくなるので、自主財源により更新を行うことになる。

以上が、もしも中城村北中城村清掃事務事務組合が「溶融炉を再稼動した場合」に考えられるリスクになります。したがって、組合において溶融炉の再稼動に関する予算措置等を講じる場合は、事前に議会と一体になって適正なリスク評価を行っていただけることを期待します。

下記は同組合の溶融炉の特徴です。

(14)「焼却炉+溶融炉」において「流動床炉+燃料式溶融炉」の組み合わせは温室効果ガスの排出量が一番多い。

(15)「焼却灰+溶融炉」により製造される溶融スラグは品質が不安定なのでそのままではJIS規格をクリアできない可能性がある。

(16)流動床炉の焼却灰(塩分濃度の高いばいじん)を単独で処理する溶融炉は水蒸気爆発のリスクが高い。

(17)「焼却炉+溶融炉」において「流動床炉+燃料式溶融炉」の組み合わせは運転経費が一番高い。

※このブログの管理者は内地からの移住者ですが、国内でも県民所得の少ない沖縄県において「流動床炉+燃料式溶融炉」を稼動している市町村は、余ほどの「金持ち自治体」だと思っています。事実、中城村北中城村清掃事務組合は県内においても住民1人当りのごみ処理費が突出して高い自治体です。したがって、組合が溶融炉を再稼動して長寿命化を行った場合は、国も「財政的に余裕のある自治体」と判断するかも知れません。仮にそうなれば、組合を構成している中城村や北中城村における新たな公共事業においても、国は「財布の紐」を引き締めることになると考えます。両村においては火葬場(中城村)やアリーナ(北中城村)の建設計画があるようですが、溶融炉の再稼動については国から「誤解」を受けないように慎重に対処する必要があると考えます。


溶融炉を選定しなかった市町村一覧

2015-11-04 10:21:31 | 溶融炉
ごみ処理施設の整備に当って溶融炉を選定しなかった市町村に関する記事を整理しました。記事を読んで溶融炉が「時代遅れ」になっていることを確認していただければ幸いです。
 
<記事一覧>
 
 

千歳市(北海道)が溶融炉を選定せずに最終処分場を選定した理由

須賀川市(福島県)が溶融炉を選定せずに最終処分場を選定した理由

枚方市(大阪府)が溶融炉を選定しなかった理由

今治市(愛媛県)が溶融炉を選定しなかった理由

上越市(新潟県)が溶融炉を選定しなかった理由

寝屋川市(大阪府)が溶融炉を選定しなかった理由

厚木愛甲環境施設組合(神奈川県)が溶融炉を選定しなかった理由

<追加記事>

東京23区清掃一部事務組合が溶融炉を廃止する理由

溶融炉を廃止した市町村一覧


千歳市(北海道)が溶融炉を選定せずに最終処分場を選定した理由

2015-11-04 04:16:58 | ごみ処理計画

千歳市(北海道)が溶融炉を選定せずに最終処分場を選定した理由を整理してみます。なお、同市は当初、ガス化溶融炉の選定を検討していました。

千歳市ごみ処理施設整備計画

以下が千歳市の考え方の概要です。

(1)焼却処理方式の検討に当たり、ガス化溶融炉については、生成されるスラグの活用に伴うリサイクルの推進及び最終処分場の延命効果があると判断して、これまで次期焼却処理場の更新における導入を検討していました。

(2)しかし、運転コストが割高であるほか、溶融炉の爆発、炉周辺の作業区域への高濃度のダイオキシンの漏洩、スラグの利用先の確保が困難など、ガス化溶融炉には多くの問題点があるとともに、焼却灰がスラグ化されることによりリサイクルが推進されるという意識により、市民のごみ分別に対する意識の低下に伴うごみ量が増加するケースもあります。

(3)さらに、平成22年(2010年)3月に環境省より示された通知では、国としての溶融設備の整備に対する方針転換がなされ、従来ダイオキシン類削減対策の側面をもって進められてきた溶融設備の設置については、技術の進展により一定の効果が得られていると判断し、多大なエネルギー消費を伴う溶融処理を行うよりも、地球規模で問題となっている温室効果ガスの削減を重視する姿勢が示されています。

(4)処理技術の検討に当たっては、環境への配慮、ごみ処理の安定性、運転管理の信頼性及び安全性、維持管理の経済性及び容易性、作業環境の確保を評価しなければなれません。

(5)このことから、焼却処理方式については、環境汚染の危険性が低く、技術の安全性と施設の安定稼動による廃棄物の適正処理を優先し、また千歳市において運転実績のあるストーカ式焼却炉を検討対象とします。

(6)新たな焼却処理施設において、灰溶融固化設備は望ましくないため、焼却処理残さの処理技術の検討対象から灰溶融固化を除外することとし、直接埋立以外ではセメント原料化が有効な処理方法と考えます。

(7)用地の取得及び地域住民との合意形成が必要となりますが、総費用を考慮した場合、埋立処理場の整備が適当と考えます。

以上が千歳市の考え方の概要です。内地では「焼却炉+焼却灰のセメント原料化」を選定する市町村が増えていますが、千歳市は「総費用」を考慮して「焼却炉+最終処分場(埋立処理場)」を選定しています。

沖縄県は県が溶融炉の整備を推進していることもあり、県民の約70%(約100万人)が溶融炉に依存しています。県内においてこれから溶融炉を新たに整備する市町村は少なくなると思いますが、既存の溶融炉を長寿命化する市町村は多くなると思います。したがって、既に溶融炉を整備している市町村においては、長寿命化に当って十分な経済的評価及び溶融炉の安全性や溶融スラグの安定利用等に関するリスク評価を行っていただきたいと考えます。

※千歳市の計画書には総費用に関する詳細なデータ(15年分)が記載されていますが、計画書の作成にはかなりの時間と費用が使われていると思われます。しかし、市町村がごみ処理方式を選定又は改正する場合は、当然のこととしてこのくらいのデータは最低限必要になると考えます。なぜなら、総費用を負担するのは住民だからです。


須賀川市(福島県)が溶融炉を選定せずに最終処分場を選定した理由

2015-11-04 04:15:40 | ごみ処理計画

須賀川市(福島県)が溶融炉を選定せずに最終処分場を選定した理由を整理してみました。内地では「焼却炉(ストーカ炉)+焼却灰のセメント原料化」を選定する市町村が増えていますが、須賀川市は「焼却炉(ストーカ炉)+最終処分場」を選定しています。

須賀川市熱回収施設基本計画

以下が須賀川市の考え方の概要です。

(1)焼却方式には、ストーカ式と流動床式がある。

(2)ストーカ式については、40年以上の技術蓄積があり、実績年数及び実績数において最も豊富な機種となっている。

(3)流動床式については、流動床式ガス化溶融方式の登場により、その技術の多くは流動床式ガス化溶融方式に転用されてきており、平成15年度以降受注実績がほとんどない状況となっている。

4)平成12年以降は、ダイオキシン類特別措置法により国内のほぼ全てのごみ焼却炉がダイオキシン類対策に取り組むようになり、新設、改造を問わず、法規制値に十分対応している。

(5)最終処分場の残余容量の問題から、新設の焼却炉には灰溶融炉を付帯する事例も多いが、トラブル事例もあり、安定稼働に向けた対応が求められている。

(6)灰溶融方式は、一時期は、国の方針により焼却方式を採用する場合は必ず灰溶融炉を別途整備する必要があったが、生成物であるスラグのJIS化やランニングコストの高騰により廃止及び休止する施設も増えてきている。

(7)灰溶融についてはスラグ化による資源回収量の増加や最終処分量の減少が見込めるが、スラグのJIS化や全国的な廃止・休止の現状も考慮すると、本組合において望ましい処理方式とはいえない状況にある。また、全国的に見てもメーカーも積極的には営業してはいない。

(8)灰溶融方式は100件以上の実績があるが、近年は新規整備実績が減ってきているだけでなく、逆に運転休止に移行する件数が多い。

(9)灰溶融方式は高温管理が必要であり、耐火物等の寿命が短く交換頻度が上がりやすい。

(10)灰溶融方式は灰処理に電気又は燃料を大量に必要とする。

(11)灰溶融方式によって生成されるスラグは、JIS化されたスラグの性状に合致しない事例が多い。

(12)灰溶融方式はJIS化によりスラグの引取要件が厳しくなっており、資源化・最終処分量削減が完全に実施できていない例も多い。

(13)溶融飛灰の山元還元は他県処理になるため、処理や運搬で自区外の自治体に環境負荷を与える。

(14)焼却灰のセメント原料化は外部委託であることから、処理先都合による突発的な受入停止のリスクがある。

(15)廃棄物の自区内処理の考え方から、最終処分(埋立処分)を選択する。

以上が須賀川市の考え方の概要ですが、(13)の「処理や運搬で自区外の自治体に環境負荷を与える」という考え方は、東北人らしい考え方だと思います。また、(14)の「受入停止のリスクがある」という考え方は、セメント業界の実情を理解している適切なリスク評価だと思います。そして、溶融スラグについてもJIS化のリスクをよく理解している評価だと思います。

ちなみに、沖縄県における溶融スラグの利用率は毎年コンスタントに100%を達成しているようですが、県内に溶融飛灰の資源化(山元還元)を行う施設はありません。そのため、山元還元を行う場合は九州まで運搬しなければならない状況になっています。

※須賀川市は自区内に最終処分場を整備して焼却炉(ストーカ炉)からの熱回収を推進することにより、国の基本方針に即した環境負荷の低減を図ることができると考えています。