沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

ごみ処理計画を再改正して溶融炉を再稼動する場合の法的手続と注意事項

2015-09-30 05:36:46 | ごみ処理計画

溶融炉を休止するためにごみ処理計画を改正している市町村が溶融炉を再稼動する場合は、再稼動を行う前に改正したごみ処理計画の見直し(再改正)を行わなければなりません。なぜなら、市町村は廃棄物処理法の規定によりごみ処理計画に従ってごみ処理を行うことになっているからです。

また、休止していた溶融炉を再稼動する場合は補正予算を編成して議会の承認を受けなければなりません。

そこで、ごみ処理計画を改正して溶融炉を休止していた市町村が溶融炉を再稼動する場合の法的手続と注意事項を整理しました。

   

上の画像にあるように、ごみ処理計画を改正して溶融炉を休止していた市町村が溶融炉を再稼動する場合は、補正予算の編成に当って①長寿命化に関する予算の見通しを明示し、②翌年度以降の予算(支出)の最少化を図る措置を講じた上で、③議会の承認を受け、④ごみ処理計画の見直し(再改正)を行わなければ再稼動できないことになります。

なお、溶融炉を休止する場合は予算を削減できるので議会のチェックはそれほど重要ではありません。しかし、休止していた溶融炉を再稼動する場合は長寿命化も行うことになり中長期的に予算が増加することになるので議会のチェックが極めて重要になります。

下の画像は溶融炉を休止する場合と再稼動する場合の市町村の事務処理の違いを整理した一覧表です。

※地方自治法の規定(第2条第16項及び第17項)により地方公共団体が法令に違反して事務処理を行った場合はその行為(再稼動)が無効になるので十分な注意が必要です。


休止している溶融炉を再稼動する場合の地方財政法の規定に基づくチェックポイント

2015-09-29 18:30:21 | 溶融炉

溶融炉を休止していた市町村が再稼動する場合は翌年度以降の予算が増加するため、地方財政法第4条第1項及び第4条の2の規定により再稼動するための予算案を議会に提出する前に「翌年度以降の健全な運営の確保」に関する確認をしておく必要があります。

溶融炉については会計検査院が「溶融スラグを安定的に利用していない場合は補助目的を達成していないことになる」と判断しているため、再稼動すればそれでOKということにはなりません。

つまり、再稼動をしても溶融スラグの安定的な利用が困難な場合は、再稼動する意味がなくなってしまうということです。

もちろん、再稼動しても長寿命化ができない場合もアウトです。

そして、長寿命化ができても途中で事故や故障等で使えなくなった場合もアウトです。

そこで、溶融炉の再稼動を行う場合に市町村が事前にチェックしておくべきポイントを整理しました。

沖縄県が最終処分場の延命化を図るために整備を推進している溶融炉というごみ処理施設は、県内の市町村が運営するごみ処理施設としては極めてリスクの高い施設であることを再認識していただければ幸いです。

地方財政法


溶融炉を休止した理由と再稼動する理由

2015-09-29 17:53:34 | 溶融炉

溶融炉を休止した理由については、ネット検索によって実際に休止している「市町村の議会議事録等」を参考にしています。

溶融炉を再稼動する理由については、国や県の計画を前提にすると「これ以外は考えられない」という代表的な理由です。

悲しいのは、溶融炉を再稼動しても、休止することになった「市町村における根本的な問題」は解決しないところにあります。


休止(廃止)している溶融炉の再稼動と長寿命化を考える(2)

2015-09-29 17:49:23 | 溶融炉

中城村北中城村清掃事務組合(以下「組合」という)は平成26年度から溶融炉を休止(平成27年度からは事実上廃止)しています。そして、離島の溶融炉と同じ年(2003年)に川崎重工業というメジャーなメーカーの製品を整備しています。

川崎重工業は国内でこれまでに10基の溶融炉を整備しています。しかし、不思議なことに流動床炉の焼却灰(塩分濃度の高い飛灰)を単独で処理する溶融炉は組合の1基しかありません。他のメーカーのものも調べてみましたが、佐渡島と徳之島に1基ずつ整備されているだけでした。ただし、佐渡島の溶融炉は故障が原因で廃止、徳之島の溶融炉も故障が原因で休止しています。したがって、組合の溶融炉は離島の溶融炉と同様に、国内では稼動している事例のない溶融炉ということになります。

休止(廃止)している溶融炉の再稼動を考える場合、長寿命化が困難な場合は再稼動を考えてもまったく意味がありません。なぜなら、長寿命化を行わない場合は国の補助金が利用できないからです。補助金を利用して焼却炉だけ長寿命化するということはできません。

そこで、組合の溶融炉については再稼動は考えずに長寿命化だけを考えてみることにします。このような場合、組合側(消費者側)よりもメーカー側(生産者側)の視点に立って考えた方がより現実的な考察になります。

現在、川崎重工業は市町村向けの製品を「焼却炉+溶融炉」から「ガス化溶融炉」にモデルチェンジしています。このため、溶融炉の長寿命化よりも焼却炉と一緒に廃止して新たに「ガス化溶融炉」を整備することを提案してくるものと思われます。特に、組合の溶融炉は同社の製品としては1基しかない「オリジナルプラント」なので長寿命化を行った事例がありません。そういう場合、株式を上場している大企業はかなりナーバスになります。したがって、半分長寿命化を断る口実として「ガス化溶融炉」の整備を提案してくるものと思われます。しかし、組合はその提案を受けることはできません。なぜなら、長寿命化を行わない場合は国の補助金が利用できないからです。つまり、提案を受けると自主財源により「ガス化溶融炉」を整備することになるからです。

そうなると、どうなるか?

組合は、川崎重工業以外の業者に長寿命化を依頼することになります。ただし、ライバルとされるメジャーなメーカーは絶対に引き受けません。仮に長寿命化を依頼した場合は、間違いなく川崎重工業と同じように「ガス化溶融炉」を提案してきます。これは、いわゆる業界の常識でもあります。したがって、組合が長寿命化を依頼する相手は株式を上場していないマイナーな業者になります。

その場合、依頼を受けた業者はどう考えるか?

組合の溶融炉がどこにでもある普通の溶融炉であれば億単位の大きな仕事になるので喜んで引き受けるでしょう。しかし、川崎重工業製の製品としては国内に1基しかない溶融炉で、しかも、流動床炉から排出される塩分濃度の高い焼却灰(飛灰)を単独で処理する溶融炉の長寿命化を行うことになります。そうなると、多分、二の足を踏むはずです。金額が大きいだけに失敗は許されません。溶融炉の長寿命化を行うことができる業者であれば組合の溶融炉が水蒸気爆発のリスクが高い溶融炉であることはすぐに分かります。したがって、これも業界の常識になりますが、適当に数字を入れたあり得ない金額の見積書を提出して、実質的に受注を辞退することになると考えます。

組合にとって残された選択肢は1つしかありません。それは、川崎重工業に頭を下げてお願いするという選択肢です。国内に1基しかないとは言え、自社の溶融炉を整備している訳ですから、メーカー側もそこまでされれば逃げる訳には行きません(もしかしたら逃げるかも知れません)。しかし、このブログの読者であればその後でどうなるかは容易に想像ができるはずです。そうです、事業費がメーカー側の「言い値」になります。しかも、長寿命化を行った事例のない国内に1基しかない「オリジナルプラント」ですから、組合としては事業費を精査することもできません。

なお、国内に1基しかない溶融炉というのはメーカー側にとっては「汎用炉」ではなく「実験炉」という位置付けになると考えています。

以上により、このブログの管理者は組合の溶融炉は再稼動を行っても意味がない(再稼動すると休止する前よりも「運転経費が高くなる」)と考えます。

※組合の焼却炉がせめてストーカ炉であったら長寿命化の可能性はもっと高くなったはずですが、国内に9基ある川崎重工業製の溶融炉(汎用炉)のうち問題なく稼動しているのは3基しかありません。それを考えると、やはり、長寿命化はかなり厳しい状況になると思われます。今は「ガス化溶融炉」の時代になっているので、組合だけでなく「焼却炉+溶融炉」という一時代前のプラントを整備している市町村にとっては、頭の痛い問題が待ち構えていることになります。


休止(廃止)している溶融炉の再稼動と長寿命化を考える(1)

2015-09-29 17:47:50 | 溶融炉

現在、沖縄県内で休止(廃止)している溶融炉は3基ありますが(伊平屋村は長寿命化を前提に再稼動を行う予定)、離島の2基(座間味村と渡名喜村)の溶融炉については、どちらも同じ年(2003年)に還元溶融技術研究所というメーカーの製品を整備しています。

ただし、このメーカーの溶融炉は実験炉的な要素が強く、全国に6基(メーカー公表)あるとされているものの、ネット上で確認した限り現在稼動しているところはないようです。また、12年前に沖縄県に2基整備した後は受注実績がありません。このことは普通に考えれば安定した稼動が困難な溶融炉であるという評価になると考えます。

したがって、このブログの管理者としては、座間味村と渡名喜村の溶融炉については長寿命化を考える前に再稼動そのものが困難であると判断します。

なお、ガス化溶融炉の場合は基本的に焼却炉と溶融炉を分離することはできません。このため、座間味村と渡名喜村にとっては、再稼動できない「焼却施設」を整備したことでとてつもない「授業料」を支払うことになってしまいました。しかし、それはもう過去のこと。今度こそは村の身の丈に合った「焼却施設」を整備することを心から祈ります。県も両村に対しては県が推奨しているメニュー(溶融炉)とは違うメニュー(最終処分場の整備等)を前提にして適正な技術的援助を行っていただけるように期待します。

※溶融還元技術研究所は座間味村と伊平屋村との間で裁判沙汰を起こしているので、ほぼ100%再稼動は困難であると考えます。