沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

溶融炉の休止(廃止)と建物の目的外使用を考える(重要)

2015-09-10 20:33:23 | 建物の目的外使用

中城村北中城村清掃事務組合のように「焼却炉+溶融炉」という方式で市町村が溶融炉を整備している場合、その市町村が溶融炉を休止又は廃止すると、建物の目的外使用を行うことになります。

下記は補助金適正化法第22条の規定(要旨)です。

補助事業者は、補助事業により取得した財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金の交付の目的に反して使用してはならない。

この規定において「補助事業により取得した財産」とは「設備と建物」になります。したがって、溶融炉(設備)を休止又は廃止すると、その瞬間に溶融炉のために整備した建物を補助金の目的に反して使用することになります。ちなみに、溶融炉に対する補助金の交付の目的は「焼却灰の資源化」になります。

普通、溶融炉を休止する場合はそのまま建物の中に放置しておきます。しかし、溶融炉の放置は建物を倉庫として使用することになります。これは補助金の交付の目的に反する使用になります。

溶融炉を廃止した場合もそのまま放置しておく場合が多くなりますが、仮に溶融炉を解体撤去すると今度は焼却炉のために建物を使用することになります。これも補助金の交付の目的に反する使用になります。可燃ごみの焼却処理も焼却灰の溶融処理も同じ廃棄物処理と考えれば問題はない(目的外使用にならない)ように思われますが、そう思った人は上の画像の一番下をご覧になってください。

溶融炉を解体撤去すると、焼却炉に対する建物の面積(★の部分)が増加します。これは、いわゆる補助金の「過大交付」という状況になります。

下記は補助金適正化法第3条第1項の規定(要旨)です。

各省各庁の長は、補助金が法令及び予算で定めるところに従って公正かつ効率的に使用されるように努めなければならない。

この規定により補助金の「過大交付」は国の法令違反になります。つまり、溶融炉を廃止した場合であっても、溶融炉のために整備した建物部分を焼却炉のために使用することは、やはり建物の目的外使用に該当することになります。

ちなみに、下記は補助金適正化法第3条第2項の規定(要旨)です。

補助事業者は、補助金の交付の目的に従って誠実に補助事業を行うように努めなければならない。

以上により、溶融炉を休止又は廃止する補助事業者(市町村)が国(各省各庁の長)の承認を受けずに建物の目的外使用を行っている場合は補助金適正化法(第3条第2項及び第22項)に違反していることになります。そして、法令に違反する事務処理を行った市町村の職員は地方公務員法の規定(第32条)に違反していることになります。

なお、供用開始から10年を経過している場合に溶融炉を休止又は廃止する場合であって、①溶融炉がなくてもその市町村の地域内において適正なごみ処理ができる場合かつ②建物を地域の活性化を図るために使用する場合は、「包括承認事項」という特例が適用されるので、その場合は建物の目的外使用には該当しないことになります。ただし、①と②に該当しない場合アウトです。

※「包括承認事項」については、この①と②の要件を十分に理解していない公務員(国家公務員及び地方公務員)の皆様が沢山います。したがって、仮に市町村の職員が国や県の職員から「供用開始から10年を経過していれば建物の中に溶融炉を放置しておいてもセーフ」という技術的援助を受けて溶融炉を休止又は廃止した場合は、補助金適正化法に違反(自動的に地方公務員法に違反)することになるのでご注意下さい。

包括承認事項に関する正しい考え方(過去記事)

会計検査院が指摘している建物の目的外使用の事例(過去記事)


市町村による国の補助金の正しい使い方(ごみ処理施設編)

2015-09-04 08:22:56 | 建物の目的外使用

市町村がごみ処理施設(設備と建物)のうち設備を休止するときは設備のために整備した建物を補助金の交付の目的に反して使用することになります。なぜなら、ごみ処理施設の建物には設備を使用する前提で補助金が交付されているからです。

つまり、ごみ処理施設において設備を休止する場合であっても建物を補助金の交付の目的に反して使用することはできないことになっています。

一般的に、設備の使用を休止する場合は休止する設備を建物の中に放置している形になりますが、補助金適正化法の規定に基づけば、これは建物を「休止している設備の倉庫」として使用していることになります。

したがって、その建物を補助金適正化法の規定に基づいて正しく使用するためには、設備を休止するときに国(各省各庁の長)の承認を受ける必要があります。

しかし、昨年の9月に会計検査院が行った意見表示(是正改善処置要求)によると、国の承認を受けずに市町村が勝手に設備を休止しているケースが沢山あることが分かりました。沖縄県では座間味村と渡名喜村と伊平屋村が会計検査院から不適正であるという指摘を受けていますが、都道府県別では沖縄県が一番多いという不名誉な結果になっています。

県は市町村から毎年ごみ処理の状況について報告を受けているので、県もその事実を知っていたはずですが、この3村に対して適正な技術的援助を行っていなかったことになります。

ちなみに、会計検査院の意見表示によると市町村が1年以上設備を休止している場合又は休止する場合は、事前に国(各省各庁の長)の承認が必要になるとしています。

※少しややこしい話ですが、市町村のごみ処理施設に対する国の補助金が設備と建物に対して同じ目的で別々に交付されていると考えると分かりやすくなると思います。


会計検査院が指摘している建物の目的外使用(一部転用)の事例

2015-08-30 13:20:17 | 建物の目的外使用

国の補助金を利用してごみ処理施設を整備した場合、建物の処分制限期間(50年)を経過する前に設備の休止や廃止を行うと、設備を整備するために補助金を交付した建物部分の目的外使用(一部転用)を行うことになります。

補助事業者が補助施設を補助金の交付の目的に反して使用する場合(目的外使用を行う場合)は、補助金適正化法第22条の規定に基づいて事前に財産処分の承認手続を行うことになりますが、これらの事例は補助事業者が財産処分の承認手続を行わず建物の目的外使用を行っていたために会計検査院から指摘された事例(一部)です。


包括承認事項(財産処分の特例)に関する正しい考え方

2015-08-28 11:22:28 | 建物の目的外使用

包括承認事項というのは経過年数が10年を超えた場合に一定の要件を満たしていれば財産処分の承認手続が不要になる(報告のみで承認したものとみなす)という特例措置です。

その「一定の要件」については、さすがに会計検査院は理解していますが、国や都道府県の職員が十分に理解していない場合が多いので、市町村が財産処分(補助事業の休止や廃止等)を行う場合は十分な注意が必要です。

万が一、国や都道府県の職員が市町村に対して間違った技術的援助を行っていた場合でも、法令違反になるのは市町村です。

包括承認事項は、「10年経ったら何でもかんでもOKになる」というルールではありません。

環境省の財産処分に関する規定
防衛省の財産処分に関する規定


ごみ処理施設の設備と建物の財産処分に関する考え方(例え話)

2015-08-27 18:06:24 | 建物の目的外使用

こういう「例え話」をすると、民間人はすぐに理解しますが、公務員の皆さんは何故か理解に苦しむようです。

市町村がごみ処理施設(国庫補助施設)の中にある一部の設備(例えば溶融炉)を休止するという話は、この「例え話」と同じ話になります。

したがって、溶融炉を休止する場合に財産処分の承認手続を行っていない場合は補助金適正化法違反になります。