沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

新設するごみ処理施設の「補助金」に対する国の考え方

2015-11-23 15:27:14 | 補助金

現在、市町村がごみ処理施設を新設する場合は、従前の施設を更新する場合が多いですが、場所を変えて更新することもあります。

また、広域処理のように更新に当って他の市町村と共同で新設する場合もあります。

なお、広域処理の場合は、普通はそれぞれの市町村が更新に当って共同で行った方がスケールメリットがあるということで行われています。このため、更新の時期が合わないと実現が難しいところがあります。事実、広域処理が実現しなかったケースは、この更新時期の違いによるものが圧倒的に多くなっています。

国は広域処理においても、補助金を交付する場合は、広域処理に参加しているそれぞれの市町村の実情に添って交付の決定をします。したがって、広域処理のために新たに一部事務組合等を設立しても、各市町村の従前の施設の「履歴」を削除することはできません。

そこで、今日は市町村が新設(更新)するごみ処理施設の「補助金」に対する国の考え方を整理してみます。

下の画像をご覧下さい。

原寸大の資料(画像をクリック)

市町村がごみ処理施設を新設(更新)する場合は、まず、建物が老朽化していることが補助金を利用する条件になります。国はまだ使える建物があるのに新たに補助金を交付することはできません。交付すれば税金の無駄遣いになります。ただし、市町村が場所を変えて新しい建物を整備したいと考えている場合は、補助金適正化法の規定に基づいて所定の補助金を返還すれば、新設に当って国の補助金を利用することができます。なぜなら、こうすれば国としては税金の無駄遣いにならないからです。したがって、市町村が補助金を返還しない場合は自主財源により建物を新設することになります。しかし、一般的には市町村は国に一旦補助金を返還して、それから新たに補助金を利用して建物を新設することなります。

設備を新設する場合は、長寿命化を行っていることが絶対条件になります。なぜなら、廃棄物処理法の基本方針と廃棄物処理施設整備計画において、そういう決まりになっているからです。国は国が決めた決まりに違反して補助金を交付することはできません。仮にそのようなことがあったら、国民から損害賠償を求められることになります。したがって、市町村の設備の新設に関する計画が国の決まりに適合していない場合は、自主財源により新たな設備を整備することになります。

なお、広域処理のように複数の市町村が共同でごみ処理施設を新設(更新)する場合は、国の決まりに適合している市町村だけが補助金を利用できることになります。

現在、中城村北中城村清掃事務組合は他の市町村との広域処理を検討しているようですが、相手方の市町村がどこであれ、建物の新設に当っては従前の建物に対する補助金を返還してから、新たに国の補助金を利用して広域施設の建物を整備することになります。

また、設備については溶融炉を休止したまま焼却炉の長寿命化も行わないことになるので、自主財源により新しい設備を整備することになります。

ちなみに、組合がこれからごみ処理を行わない場合は設備の処分制限期間を経過しているので、建物部分の補助金を返還すればごみ処理施設を廃止することができます。ただし、市町村がごみ処理を放棄することはできません。

いずれにしても、組合が既存の設備の長寿命化を行わない場合は、国の決まりに適合しないごみ処理を行うことになるので、広域処理であれ単独処理であれ、自主財源により設備を新設することになります。

仮に、国が設備の長寿命化を行っていない市町村に対して補助金を交付した場合は、国のインフラ長寿命化基本計画は、一挙に流動化することになります。

現在、全国の市町村の多くがごみ処理施設の長寿命化計画を策定しています。平成28年度が策定期限になっているので、各市町村においておよその方向性は定まっているはずです。

そんな社会状況の中で、設備(処分制限期間は経過しているが老朽化していない設備)の長寿命化を行わない市町村に対して国が補助金を交付するようなことがあったら、全ての市町村が長寿命化計画を見直さなければなりません。なぜなら、国は全ての市町村に対して設備(老朽化している設備を除く)の長寿命化を求めているからです。

ちなみに、このブログの管理者は、中城村北中城村清掃事務組合は、まずは国の決まりに従って焼却炉の長寿命化を行い、更新する時期に合わせて広域処理に切り替えるというオーソドックスな方法を検討した方が無難だと考えています。なぜなら、焼却炉の長寿命化を行わない場合は老朽化対策に莫大な費用が必要になるからです。そして、万が一、広域計画が途中で白紙撤回になった場合は、自主財源により焼却炉を更新しなければならなくなるからです。

※民間人からみると国の考え方は極めて合理的な考え方だと思いますが、市町村の職員(公務員)の中には国の考え方を理解できない方が結構います。それだけでなく、都道府県や国の職員(公務員)の中にも少なからず存在しています。したがって、建物や設備が老朽化していない市町村の場合は、ごみ処理施設の新設(更新)に当って十分に注意する必要があると考えます。


沖縄に対する国の財政的援助の「特例措置」を考える

2015-11-16 06:51:05 | 補助金

ごみ処理は市町村の自治事務なので、地域の特性等を考慮しながら計画を策定することができます。そして、民間企業と異なり市町村がごみ処理施設を整備する場合は国から財政的援助を受けることができます。

実は、沖縄県内の市町村は内地の市町村よりも有利な条件で国の補助金を利用することができます。

下の画像は、国の補助金に関する資料(循環型社会形成推進交付金交付要綱)の沖縄県に関係する部分を抜粋したものです。 

 

原寸大の資料(画像をクリック)

上の画像にあるように、15のごみ処理施設の長寿命化に関する補助金は沖縄の市町村だけが利用できます。このため、県内の市町村は供用開始から11年目から13年目頃にこの補助金を利用して長寿命化を行っています。その理由は、12年目頃からごみ処理施設の初期機能が低下し始めるからです。

これは内地の市町村も同じです。しかし、沖縄の市町村だけは「基幹的設備改造」と言って、ごみ処理設備の機能を国の補助金を利用して初期の状態まで回復することができます。車で言えば、内地の車は国やメーカー等が作成した一般的なマニュアルに従って修理をして乗り続けることになりますが、沖縄の車だけは新車同様の状態に戻して乗り続けることができます。

もちろん、この補助金を利用するかどうかは県内の各市町村が任意に決めることになりますが、今のところ、中城村北中城村清掃事務組合以外はこの補助金を利用して既に長寿命化を行っているか長寿命化を行う予定でいます。

このブログの管理者は、沖縄県におけるごみ処理施設の長寿命化については、国によるこの「特例措置」を積極的に活用すべきだと考えます。なぜなら、この「特例措置」が県内の市町村が最少の経費で最大の効果を挙げるために用意されているからです。

なお、この「特例措置」については内地の市町村の多くが沖縄と同じようにすることを国に要請していますが、国は予算の確保が困難という理由で断っています。内地では老朽化が進んでいるごみ処理施設が多く、3.11以降も各地で自然災害が発生していることもあり、ごみ処理施設の長寿命化に対する国の予算確保は想像以上に厳しい状況になっています。

このため、地方版総合戦略がスタートするとこの「特例措置」が廃止される可能性もあります。今は、普天間基地の移設問題で国と県が対立している状況ですが、このブログの管理者はその影響が県内の市町村の自治事務にも波及する恐れがあると考えています。

※国の補助制度について改正や廃止等が行われる場合、その時点で市町村が国との協議を開始している場合は、原則として従前の制度を継承して補助金を利用することができます。したがって、中城村北中城村清掃事務組合は、これからどのような計画を策定するにしても、手遅れにならないように国との協議を開始しておく必要があると考えます。ちなみに、組合よりも1年遅れてごみ処理施設を整備した中部北環境施設組合(うるま市・恩納村)は今年度から長寿命化に着手しています。また、組合よりも3年遅れてごみ処理施設を整備した那覇市南風原町環境施設組合は既に長寿命化を行うための準備(実施計画の策定等)に着手しています。

沖縄県におけるごみ処理施設の長寿命化の時期を考える

循環型社会形成推進交付金交付要綱


市町村が国の補助金を利用できる4つのパターン

2015-10-22 20:23:14 | 補助金

今日は市町村が行うごみ処理施設の整備に当って国の補助金を利用できるパターンを整理してみようと思います。なお、ごみ処理施設の整備とは①新設、②長寿命化、③更新のことです。

(1)焼却炉+溶融炉

⇒このパターンは10年ほど前から(2)のガス化溶融炉に移行しているため、現在は新設や更新が行われることはほとんどありません。ただし、溶融炉を整備している市町村がガス化溶融炉を整備する場合は、国のインフラ長寿命化基本計画に基づいて先に溶融炉の長寿命化を行っていることが条件になります。

(2)ガス化溶融炉

⇒自力で焼却灰の資源化を推進しようとしている市町村は一般的にはこのパターンを選定しています。ただし、焼却炉と溶融炉が一体化している構造になっているため、事故や故障等で使えなくなると可燃ごみの焼却ができなくなります。

(3)焼却炉+最終処分場

⇒このパターンが一番オーソドックスなパターンになります。しかし、このブログの管理者は循環型社会におけるごみ処理施設としては「創意工夫」が足りないと考えています。

(4)焼却炉+焼却灰の資源化(溶融処理以外の方法)

⇒このパターンは(1)と(3)のパターンにおいて溶融炉の整備(長寿命化を含む)や最終処分場の整備を回避したい市町村のためにある選択肢であり、沖縄県においては最も県民の身の丈に合ったパターンになると考えています。ただし、県は県の廃棄物処理計画において(1)と(2)のパターンを推進しているため県からこのパターンに対する技術的援助を受けることはできません。したがって、県内の市町村がこのパターンを選定する場合は、国から直接技術的援助を受けるか民間のノウハウを活用するためにプロポーザル方式による公募等を行う必要があります。

※上記の(1)から(4)は国の基本方針に適合しているパターンになりますが、「焼却炉+焼却灰の民間委託処分」は国の基本方針に適合しないパターンになるので、焼却炉の整備(長寿命化を含む)に当って国の補助金を利用することはできません。


国の補助金に対する国の法令違反を考える

2015-10-20 09:30:18 | 補助金

今日は国の補助金に対する市町村の法令違反ではなく国の法令違反を考えてみます。もちろん、国の補助金とは市町村が整備するごみ処理施設に対する補助金のことです。また、国とは環境省を含む全ての省庁になります。

まず、法令の規定から整理します。なお、ごみ処理施設に対する国の補助金については補助金適正化法と廃棄物処理法の規定が適用されます。

◆補助金適正化法第3条第1項

各省各庁の長は、その所掌の補助金等に係る予算の執行に当つては、補助金等が国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに特に留意し、補助金等が法令及び予算で定めるところに従って公正かつ効率的に使用されるように努めなければならない。

この規定は国が交付する全ての補助金について適用されます。したがって、市町村が整備するごみ処理施設に対しても補助金が公正かつ効率的に使用されるように努めなければならないことになります。

次は廃棄物処理法の規定です。

◆廃棄物処理法第4条第3項(要約)

国は、廃棄物の処理に関する技術開発の推進を図り、市町村に対し必要な技術的及び財政的援助を与えることに努めなければならない。

この規定が、国が市町村に対して補助金を交付する根拠になります。

◆廃棄物処理法第5条の4

国は、廃棄物処理施設整備計画の達成を図るため、その実施につき必要な措置を講ずるものとする。

この規定が、国が市町村に対して補助金を交付する条件になります。つまり、この規定により国は廃棄物処理施設整備計画の達成を図ることができないごみ処理施設については補助金を交付することができないことになっています。では、廃棄物処理施設整備計画とはどのような計画なのか?

◆廃棄物処理法第5条の3

環境大臣は、廃棄物処理施設整備事業の計画的な実施に資するため、基本方針に即して、5年ごとに、廃棄物処理施設整備事業に関する計画(以下「廃棄物処理施設整備計画」という。)の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

廃棄物処理施設整備計画とは環境省の長が基本方針に即して作成した原案を閣議において決定した計画になります。したがって、全ての省庁の長が決定した計画になります。では基本方針とはどのような方針なのか?

◆廃棄物処理法第5条の2

環境大臣は、廃棄物の排出の抑制、再生利用等による廃棄物の減量その他その適正な処理に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。

基本方針とは環境省の長が定めた方針になります。したがって、ごみ処理施設に対する国の補助金はどの省庁であっても環境大臣が定めた基本方針に従って交付されることになります。

このように、国が市町村のごみ処理施設に対して補助金を交付する場合は、市町村のごみ処理計画が環境大臣が定めた基本方針に適合していなければならないことになります。では、市町村のごみ処理計画とはどのような計画なのか?

◆廃棄物処理法第6条

市町村は、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関する計画(以下「一般廃棄物処理計画」という。)を定めなければならない。

このブログは一般廃棄物処理計画をごみ処理計画と呼んでいますが、この規定には基本方針に関することは書かれていません。したがって、市町村は環境大臣が定めた基本方針に従わずにごみ処理計画を定めることができます。ただし、基本方針に従わない場合は国の補助金は利用できないことになります。

以上により、国が法令に違反する場合は、環境大臣が定めた基本方針に適合しないごみ処理計画を策定している市町村に補助金を交付した場合になります。

なお、沖縄県の場合は防衛省が補助金を交付するケースが多々ありますが、もちろん防衛省に対してもこの規定が適用されます。

 


改めてごみ処理施設の長寿命化と国の補助金を考える

2015-10-10 04:43:16 | 補助金

沖縄県は約100万人の県民が溶融炉に依存しています。そして、国のインフラ長寿命化基本計画に基づいて平成28年度までに全ての市町村が長寿命化計画を策定することになっています。

そこで、改めてごみ処理施設の長寿命化と国の補助金について考えてみることにします。

下の画像は、中城村北中城村清掃事務組合における長寿命化と国の補助金の関係を整理したものですが、この画像の一番下にある4つの方式が国の補助金を利用できるパターンになります。

その4つの方式をピックアップします。

1.焼却炉+溶融炉

2.ガス化溶融炉

3.焼却炉+最終処分場

4.焼却炉+溶融処理以外の方法による焼却灰の資源化

このうち、2のガス化溶融炉を整備している場合は焼却炉と溶融炉が一体構造になっているために残念ながら長寿命化に当って他の選択肢はありません。しかし、1の焼却炉+溶融炉を整備している場合は溶融炉を廃止することができるので長寿命化に当って3又は4を選択することができます。

ただし、実際は最終処分場のない市町村においては3は選択肢になりません。その理由は簡単で、最終処分場を新たに整備すると焼却炉の長寿命化に間に合わなくなるからです。

したがって、最終処分場のない市町村においては4だけが選択肢になります。

なお、焼却炉+焼却灰の委託処分は国の基本方針に適合しない方式になるので焼却炉の長寿命化に当って国の補助金を利用することはできません。

このブログの管理者は、焼却炉+溶融炉を整備している市町村は、プロポーザル方式によって内地を含めて広く民間から焼却灰の資源化に関する代替案を公募して、焼却炉のみを長寿命化する方法を検討すべきだと考えます。

※沖縄県は溶融炉の整備を推進する廃棄物処理計画を策定しているので、4の方式については県からは適正な技術的援助を受けられない可能性があります。ちなみに、内地では温暖化対策を考慮して4の方式を選択する市町村が増えています。